2007年12月、恒例の〈フーダニット翻訳倶楽部年間ベスト・ミステリ〉の投票が行
われた。
※投票規定
2006年11月1日〜2007年10月31日に刊行された新刊ミステリ作品が対象(文庫化や
再販、新訳などは除く)。会員は3作品まで投票可能。1位=10点、2位=9点、
3位=8点として集計。
※投票期間=2007年12月1日〜12月17日
※投票者数=8人
1.『デス・コレクターズ』 29点
ジャック・カーリイ/三角和代訳/文春文庫
◆死体を蝋燭と花で飾る異常殺人事件が発生し、30年前の殺人鬼が書いた絵が事
件の鍵だとわかる。驚愕のデビュー作『百番目の男』に続く2作目。
◇アマゾン・ジャパンへ
2.『終決者たち』 18点
マイクル・コナリー/古沢嘉通訳/講談社文庫
◆ロス市警に復職したボッシュはコールド・ケース(未解決事件)を担当するこ
とになり、17年前に起きた女子高校生殺人事件に挑む。
◇アマゾン・ジャパンへ(上巻)
◇アマゾン・ジャパンへ(下巻)
3.『霧に濡れた死者たち』 16点
ロビン・バーセル/東野さやか訳/ヴィレッジブックス
◆連続殺人事件を追う女性刑事ケイトだが、相棒の刑事が連続殺人の容疑をかけ
られて失踪してしまう。著者は元女性警察官。
◇アマゾン・ジャパンへ
次点(各10点)
『灯台』 10点
P・D・ジェイムズ/青木久惠訳/ハヤカワ・ミステリ
◆コーンウォール沖に浮かぶ高級保養地のカム島で、世界的に有名な作家が首吊
り死体で発見される。詩人探偵ダルグリッシュが孤島の謎に挑むが、思わぬ異変
が……。
◇アマゾン・ジャパンへ
『殺しはノンカロリー』 10点
コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希訳/創元推理文庫
◆ダイエットのためのスパで従業員が殺された。アンジェラとキャレドニアが
〈海の上のカムデン〉を飛びだして、探偵とエクササイズに励む。
◇アマゾン・ジャパンへ
『悪魔はすぐそこに』 10点
D・M・ディヴァイン/山田蘭訳/創元推理文庫
◆横領容疑にかけられた大学講師が変死する。講師は大学の過去のスキャンダル
に関して脅迫めいた言葉を吐いていた。クリスティが絶賛した技巧派。
◇アマゾン・ジャパンへ
『大鴉の啼く冬』 10点
アン・クリーヴス/玉木亨訳/創元推理文庫
◆シェトランド島で少女が殺害された。8年前にも少女失踪事件があり、その事
件と奇妙な共通点があった。CWA最優秀長篇賞受賞作。
◇アマゾン・ジャパンへ
『ウォッチメイカー』 10点
ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳/文藝春秋
◆残忍な手口で殺人を犯し、現場にアンティークの時計を残していくウォッチメ
イカーと名乗る殺人者があらわれる。ドンデン返しに次ぐドンデン返し。
◇アマゾン・ジャパンへ
※ 投票結果および選評はこちらで公開しています。↓
http://www.litrans.net/whodunit/best/best07/index.htm
| ■座談会 ―― フーダニット・ベスト3で2007年のミステリを振り返る |
12月のある夜、某所に集まったメンバーが今年のフーダニット・ベスト3と次点の
5作品について語り合った。その座談会の模様を、できるだけライブな形でお届けす
る。
[蜜柑] それでは次点の5作品からカウント・ダウンしていきますね。まずは〈リン
カーン・ライム〉シリーズ〉7作目『ウォッチメイカー』から。犯行現場に時
計を残してゆく殺人鬼ウォッチメイカー。ウォッチメイカーは時計を10個買っ
ていた。『このミステリがすごい!(以下「このミス」)』1位。『週刊文春
(以下「文春」)』のランキングでも1位。10月に発売されて、すぐに「この
ミス」1位ってすごいな。
[甘夏] 読みました。単行本で500ページちょっとあってしかも2段組ですが、一気
に読めちゃう。これも魅力かと……。
[清見] これから読みます。
[蜜柑] わたしは読書中です。甘夏さん、ネタばれなしで解説お願いします。
[甘夏] 何を言ってもネタバレになりそうなので、むずかしいですね。ただ毎度のこ
とながら、どんでん返しがあるぞって思いながら読んでたんですが、その時に
なるまで気がつかない。そこがこのシリーズのおもしろいところですね。
[清見] そうですよね。だからみんな新作を待ってる。
[甘夏] とくに今回はひねりがきいています。
[蜜柑] 読みどころとかありますか?
[甘夏] 今までとちょっとパターンが変わってるところかな。あと、新しい登場人物
と懐かしい登場人物が出てきます。
[蜜柑] では次『大鴉の啼く冬』。英国シェトランド島で、ある老人を訪ねた女子高
生が翌朝死体となって発見される。その老人は8年前に起きた少女失踪事件の
容疑者でもあった。「このミス」11位。「文春」で6位。探偵小説研究会の
『本格ミステリ・ベスト10(以下「本ミス」)』6位。早川書房の『ミステリ
が読みたい!(以下「早ミス」)』12位。講談社の「2007年文庫翻訳ミステリ
ー・ベスト10(以下「講談社」)」が4位でした。まんべんなくランクインし
ていますね。
[清見] おもしろかったですよ。容疑者とされる老人が、うまく使われていると思い
ました。
[蜜柑] シェトランド島って行ってみたいんですよねぇ。
[甘夏] この小説読めば、もっと行きたくなりますよね。島のお祭りをうまく取り入
れていましたし……。
[清見] わたしもあのお祭り見に行きたいです。すごいでしょうね。
[蜜柑] 舞台の村って、人間関係がどろどろしてるんですか?
[清見] 閉塞感がありました。小さな島だから、おたがいに知り合いなんですよね。
[甘夏] でも新しく島にきた人たちもいて、どろどろした印象は受けませんでした。
[清見] そうですね。どろどろ感はありませんでした。
[甘夏] お祭りとか島の情景なんかも目に見えるような描写でいいんですが、この小
説はあの老人なしではなりたたないです。
[清見] 使い方がすばらしいです。
[蜜柑] 次は『悪魔はすぐそこに』。横領の疑いをかけられていた大学講師が変死す
る。講師はなにやら過去の大学スキャンダルの秘密を握っていたらしい。そし
て学生もひとり殺害されて……。連続殺人事件と過去の事件の関係は……。
「このミス」5位。「本ミス」2位。「講談社」は10位です。
[清見] おもしろかったですよ。でも、何を言ってもネタバレしそうだなぁ。
[蜜柑] どんな風におもしろかったんですか?
[清見] そうですね、パズルを解いていくような感じって言うんでしょうか。そこに
人間関係が絡み合ってきて……。だいぶだまされました。でも、最後に犯人が
わかると、ぴったりおさまったって感じました。
[蜜柑] 原作は70年代に書かれたんでしたっけ?
[清見] えっと、書かれたのは1966年となってます。
[蜜柑] 今ごろ出版されたわけですが、海外にはまだまだ面白い作品が埋もれていそ
うですね。
[清見] 今年は、古いけれど面白い作品がたくさんでましたよね。新しい楽しみがま
だまだありそうなので、楽しみです。
[蜜柑] 次は『殺しはノンカロリー』です。超高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉
で暮らすでこぼこコンビ、アンジェラとキャレドニアが活躍するシリーズの第
5弾。今回はホームではなく、高級美容スパが舞台。
[甘夏] 舞台が〈海の上のカムデン〉じゃないので、老人ホームの他のメンバーがい
ないのがちょっと寂しいかな。
[清見] わたしはこのシリーズはじめてだったんです。大きな展開が起きるまでが長
いって思ったけど、その分スパでのやりとりや行動も楽しめました。
[蜜柑] このシリーズって、老人ホームが舞台っていうのもユニークだけど、訳者の
中村有希さんにも負ってるところが大きいって思う。キャラ作りがすごいもの。
[清見] スパの客でチェコ出身の女性のせりふ回しとかも、いい味出してましたね。
[甘夏] ですね。このシリーズは中村有希さんなしに、語れないです。
[清見] それってよくわかります。
[蜜柑] 次は『灯台』です。〈アダム・ダルグリッシュ〉シリーズ。VIPを受け入
れる高級保養地の孤島で小説家が死体となって発見される。「早ミス」4位。
P・D・ジェイムズって話が暗いんですが、これまでに比べると明るいんです
よ。他のミステリと比べると暗いかもしれませんが……。
[甘夏] ジェイムズ……苦手なので、読んでません。
[蜜柑] でも今回はダルグリッシュだけではなく、部下もいい味をだしていて、読後
感もよかったです。
[清見] わたしP・D・ジェイムズも読んだの、これが初めてなんです。
[蜜柑] 初ジェイムズの感想はいかがです?
[清見] 部下とのやりとりとか。夜、ダルグリッシュの部屋で部下と捜査の経緯を話
し合ったりとかしたあたり、いいなあと思いました。犯人については、そうか、
やられた! という感じです。
[蜜柑] なるほど。
[清見] 蜜柑さんは、ダルグリッシュのどこが一番おもしろいって思いますか?
[蜜柑] なんでしょうね。暗いし、長いし、ねちねち書いてあるけど、イギリス的な
ブラック・ユーモアがあって、伏線がきちんと張られているところが好きなの
かなぁ。ぱあ〜っと読むんじゃなくて、じっくり読んじゃうところとか。
[清見] ぱあ〜っとは読めませんよね。
[甘夏] わたしはそういうところが苦手なのかも。ディーヴァーみたいに一気読みで
きる作品が好きだから……。
[蜜柑] そういう感想って、わかる気もします。
[蜜柑] 次は3位の『霧に濡れた死者たち』。サンフランシスコ市警殺人課所属の唯
一の女性刑事ケイト・ギレスピーのシリーズ1作目。連続殺人事件を追いなが
ら、その容疑者にされ失踪した相棒のスコラーリの行方も追う。
[甘夏] 邦題や本のカバーがロマンチック・サスペンスっぽいけど、警察小説です。
[清見] そうなんですよね。
[蜜柑] ミステリの部分もしっかりしてますよね。
[甘夏] 作者のロビン・バーセルがこれを書いた時、現役の警察官だったんです。だ
から事件現場の様子とか、法執行機関や手続きなんかもきっちり書いてあって、
臨場感がありました。
[蜜柑] シリーズなので次回作も楽しみです。
[清見] 邦訳が続いてほしいですね。
[甘夏] はい、あと3作ありますからね。
[蜜柑] では2位の『終決者たち』。私立探偵をしていたハリー・ボッシュがロス市
警に復職し、過去の少女殺害事件が割り当てられる。ボッシュは犯人をみつけ
るためにマスコミを利用しようとする。「早ミス」12位。「講談社」1位。
「文春」8位。
[甘夏] 復職したボッシュは、未解決事件(コールドケース)班の所属になります。
そして最初に担当するのが、17年前に起こった少女殺人事件。ボッシュたちが
捜査してみると、当時見えていなかった手がかりが見つかります。で、容疑者
が浮かんくる……と。
[清見] そう、ずっと昔のことなんだけど……。で絡まっていた糸を少しずつ解いて
いったら……。
[蜜柑] シリーズの中では、どんな位置づけなんですか?
[甘夏] ボッシュが警察に復帰したことで、新たな1ページが始まったって感じです
ね。
[蜜柑] 今後の展開も楽しみになってきた、ってことでしょうか。
[甘夏] 小説の中にも出てきますが、『コールドケース』ってドラマがあります。や
はり過去の未解決事件を扱うドラマで、結構おもしろいんです。過去の埋もれ
事件であっても、描き方しだいでおもしろくなるのはこのドラマでも証明され
てるので、これからもボッシュの活躍に期待してます。
[蜜柑] それではじゃーっん、1位『デスコレクターズ』。驚愕のデビュー作『百番
目の男』に続く2作目。キャンドルに飾られた死体が見つかる。事件の捜査を
すすめていくと30年前の連続殺人事件と繋がりがあることがわかる。「このミ
ス」7位。「講談社」が9位。「月刊『プレイボーイ』誌のベスト10で2位
でした。カーリイ、うまくなっていますよねえ。
[甘夏] 1作目より数段うまくなってますね。好き嫌いの別れる作家かもしれません
が……でも今回は意外とオーソドックスでしたね。
[清見] わたしはどちらも読んでないんです。
[蜜柑] わたしは『百番目の男』に続いてお馬鹿な設定を期待していたのですが、う
まくなっていたので、違う意味で驚きました。オーソドックスになった分、ち
ょっと寂しかった、という部分もありました。ところで、甘夏さんはあのお兄
ちゃんが好き派ですよね。わたしはいらない派なんです。
[甘夏] そうなんですか? お兄ちゃんあってのシリーズだと思ってたのに……どう
してですか?
[蜜柑] だいたい都合がよすぎますよ。あんな身近にあの人がいるなんて……。男な
らお兄ちゃんなしでやってみろ、と言いたい。
[甘夏] なるほど、そういう見方もできますね。ありえない存在ですものね。わたし
は純粋に、あのお兄ちゃんのキャラが好きなんです。ああいう人たちが好きっ
て意味じゃないですよ。
[清見] お兄ちゃん、気になりますね……。読みたくなりました。
[蜜柑] ぜひどうぞ。
[蜜柑] では、来年の抱負などをどうぞ。
[清見] ミステリをたくさん読みたいです。原書もおもしろい作品を発掘したいです
ね。
[甘夏] ここ数年ずっとコージーを中心に読んでますが、来年もコージーで行きます。
[蜜柑] 今年は悲しいくらい本が読めなかったので、来年はいろいろ読みたいです。
[蜜柑] それではこれでお開きにします。長時間、ありがとうございました。
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■編集後記■
2008年初のミステリは『ウォッチメイカー』、評判どおりの傑作でした。今年もた
くさんのミステリとの出会いが楽しみです。 (清)