■ 第47号 2005年7月号 ■
〈特集〉
 元気な女性主人公たちを応援しよう!

〈インタビュー〉
   二見書房編集部

〈お気に入り見つけた!〉
  〜6月のミステリから〜
 
 ■特集 ―― 元気な女性主人公たちを応援しよう!

 今、さまざまな職業に女性が進出して男性と肩をならべて働いているが、ミステリ
のなかでもそれは顕著で、警察官や弁護士、検事などとして数多くの女性が登場する。
そして最近特徴的なのは、彼女たちが仕事だけをこなしているのではなく、趣味を楽
しんだり、結婚してこどもを産んで仕事と家庭の両立に悩んだりしながらも、生き生
きと働いている点だ。
 今月は、仕事、趣味、家庭や育児といったマルチタスクをこなしつつ、奮闘してい
る女性主人公たちをご紹介する。みなさんも彼女たちのパワーを感じていただきたい。
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《スタイリッシュでパワフルな大人の女〜検事補アレックス・クーパー・シリーズ》

 マンハッタン地方検察庁性犯罪訴追課長、アレックスことアレグザンドラ・クーパ
ー。金髪、白い肌、均整のとれたプロポーション。30代半ばで独身。アッパー・イー
ストサイドのドアマンが常駐する高層アパートに住み、景勝の地マーサズ・ヴィニャ
ードに別荘を所有。週末にはバレエのレッスン。料理はできないけど、おいしいもの
は大好き。好きなお酒はデュワーズ。
 職場でのアレックスはパワフルだ。強姦犯を追い、どんな場所へも危険を顧みず飛
び込んでいく。強姦犯に法の裁きが課せられ、法への信頼が取り戻されるようにとの
熱い思いを胸に、アレックスはマンハッタンを駆けめぐる。
 心身に深い傷を負った被害者は捜査の場でつらい経験を追体験することを強いられ
る。被害者に向けられる世間の目も温かいばかりではない。その苦しみを乗り越えら
れるよう、アレックスは被害者に寄り添い、手を差し伸べる。
 著者のリンダ・フェアスタインはアレックスと同じく地方検察庁で性犯罪訴追課を
30年近く指揮してきた。卑劣な性犯罪と戦い、被害者を支援してきた経験が本シリー
ズに生かされ、ずっしりとした現実感を与えている。
 重い任務をともに担うのはニューヨーク市警刑事マーサーとマイク。二人は、アレ
ックスを支え、危機が迫ったとき身体を張って守る心強いナイトでもある。口の悪い
歴史オタク、マイクとの軽妙洒脱なやりとりが捜査場面の重苦しさを和らげてくれる。
友情以上恋愛未満の微妙な関係がもどかしくもあり、心地よくもある。
 やりがいのある仕事に打ち込みつつ恋に趣味のバレエにと充実した日々を送るアレ
ックスだが、事件の過酷さにやりきれなさや無力さを感じることもある。強い女であ
る彼女の心の揺らぎ、不意によぎる寂寥感――そんなアレックスの姿は読者の心にあ
こがれと共感をかき立ててやまない。
 本シリーズは本国では既に7作目まで出版されており、翻訳はこの6月、5作目の
"THE BONE VAULT" が『隠匿』という邦題で出版されたばかりである。検事補アレッ
クス・クーパーの活躍にこれからも注目したい。

 1."FINAL JEOPARDY" (1996) 『誤殺』リンダ・フェアスタイン/平井イサク訳/ハ
ヤカワ・ミステリ文庫 ISBN: 4151733515
 アレックスの別荘で見つかった死体は友人でもある女優だった。
 2."LIKELY TO DIE" (1997) 『絶叫』リンダ・フェアスタイン/平井イサク訳/ハ
ヤカワ・ミステリ文庫 ISBN: 4151733523
 高名な女医が惨殺された。ホームレスの犯行かと思われたが、実は?
 3."COLD HIT" (1999) 『冷笑』リンダ・フェアスタイン/平井イサク訳/ハヤカワ
・ミステリ文庫 ISBN: 4151733531
 画廊を経営していた女性が殺された。失われたレンブラントの絵はどこに?
 4."THE DEADHOUSE" (2001)『妄執』リンダ・フェアスタイン/平井イサク訳/ハヤ
カワ・ミステリ文庫 ISBN: 415173354X
 大学教授が絞殺された。荒廃した小島をめぐる研究計画の裏にあるのは?
 5."THE BONE VAULT" (2003)『隠匿』リンダ・フェアスタイン/平井イサク訳/ハヤ
カワ・ミステリ文庫 ISBN: 4151733558
 メトロポリタン美術館所蔵の古代エジプトの石棺から女性の死体が発見された!
 6."THE KILLS" (2004) Linda Fairstein/Scribner ISBN: 0743223551 
 老いたダンサーが殺された。彼女が第2次世界大戦中に担っていた役割とは?
 7."ENTOMBED" (2005) Linda Fairstein/Scribner ISBN: 0743254880  
 ポーゆかりの建物で女性の骨が見つかった。魔の手は次の標的に迫る!
                                (中島由美)
▽著者の公式サイト
http://www.lindafairstein.com/
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《知的で冷静な検事補〜マーティ・ニッカーソン・シリーズ》

 マーティ・ニッカーソンはマサチューセッツ州バーンスタブル郡の地方検事補だ。
ボストンで高名な犯罪精神医学者ラルフ・エリスと結婚していたが、10年ほど前に相
手の不貞により離婚し、現在は生まれ故郷の町チャタムで一人息子の高校生のルーク
と暮らしている。
 マーティは知的で正義感が強く、そして職務に真摯な女性である。邦訳第1作の
『霧のとばり』にもあるように、真実を求めるためならば上役の反対をものともせず
突き進む。かと言って青臭い正義漢ではなく、周囲の人間への思いやりを絶やさない。
 彼女を取り巻く人間もまた個性豊かだ。野心家の上司ジェラルディーン、優秀な弁
護士ハリー、男手一つで孫息子ジェイク・ジュニアを育てている温和な裁判所廷吏の
チャーリー、マーティを捨て再婚した妻と離婚することとなり必死に息子との絆を取
り戻そうとしているラルフ、そして愛情深く心優しい息子ルーク。彼らの存在が小説
を素晴らしいものにしている。
 著者のローズ・コナーズは法曹界出身である。法廷場面にリアリティがあるのはそ
のためだろう。検察官と弁護士をともに経験しており、現在は小説の舞台ともなった
ケープ・コッドで暮らしている。法律家にしてすぐれたミステリ作家というのは珍し
くはないが、コナーズ特有の魅力はリーガル・スリラーとサイコ・サスペンスの魅力
を両方とも持ち合わせていることだ。全篇に漂う緊迫感と意外な結末は読者を楽しま
せる。
『霧のとばり』は2003年度メアリ・ヒギンズ・クラーク賞受賞作品だ。コナーズは
すでにマーティ・ニッカーソンを主人公としたリーガル・サスペンスを4作発表して
おり、2作目以降のマーティ身の上には公私ともに変化が訪れているという。翻訳さ
れるのが楽しみである

 1."ABSOLUTE CERTAINTY" (2002)『霧のとばり』ローズ・コナーズ/東野さやか訳/
二見文庫 ISBN: 4576042408
 メモリアル・デーに若い男性が殺された。昨年の同じ日に起きた事件との関わりは
あるのか。
 2."TEMPORARY SANITY" (2003) Rose Connors/Scribner ISBN: 074322907X
 幼い息子を殺された父親が復讐を我が手で成し遂げ、殺人罪で逮捕された。だが彼
は精神錯乱を弁護の理由とすることを拒む。
 3."MAXIMUM SECURITY" (2004) Rose Connors/Scribner ISBN: 0743492692
 裕福な家庭で夫殺しの疑いをかけられた妻が逮捕された。彼女は弁護士ハリーの元
恋人だ。マーティの心は揺れる。
 4."FALSE TESTIMONY" (2005) Rose Connors/Scribner ISBN: 0743261976
 長年の部下であるスポークスマンの失踪により窮地に立たされる上院議員。彼は事
件にどう関わっているのか。
                                (柳田有里)
▽著者の作品データ
http://www.fantasticfiction.co.uk/authors/Rose_Connors.htm
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《殺人課の紅一点。仕事はタフに、恋は……? 〜ケイト・ギレスピー・シリーズ》

 主人公のケイトは、サンフランシスコ市警察殺人課でただひとりの女性刑事。だか
らといって、男に負けないようにと肩肘張ることも気負うこともなく、女の武器であ
る色気や涙を駆使して媚びを売ることもない。捜査に熱中するあまりに時として突っ
走ってしまうこともあるが、与えられた仕事を着実にこなし、上司や同僚たちから信
頼を寄せられている。また地方検事局の捜査官で元夫のリードとは、離婚後も仕事仲
間として関係は良好だ。だが内務課(のちにFBIに行く)のマイク・トーランスと
の関係はいつも微妙だ。ふたりの気持ちがすれ違うことも多く、読んでいる方はやき
もきさせられっぱなしだ。4作目の "COLD CASE" である程度方向が決まったように
も思えるが、次の展開がどうなるのか次作までの楽しみになっている。
 シリーズは現在4作目までが発表されている。1作目の "EVERY MOVE SHE MAKES" 
は、最初のパートナーであるスコウラーリが関係する事件だったが、残り3作品はケ
イトや家族が直接的に、あるいは間接的にかかわる事件を描いている。アンソニー賞
の最優秀ペイパーバック賞を受賞した2作目 "FATAL TRUTH" は、彼女自身や亡き兄
のショーン、そして兄の忘れ形見である甥のケヴィンなどが関係する、麻薬密売に絡
む事件で、家族の絆についても考えさせられる作品だ。
 このシリーズ最大の特徴といえば、著者のロビン・バーセルが現役の警察官として
書いた警察小説である、ということだろう。事件現場の様子や家宅捜索に入る場面は、
ぴんとはりつめたような緊張感があるし、丹念に捜査して証拠と証言を積み重ね、犯
人をつきとめていく過程は、現場をよく知る人間だからこそ描ける説得力がある。
 最もボリュームのある1作目は、最初という気負いもあったのか、やや冗漫に感じ
られた。だがシリーズを追うごとに、ストーリーがスリムになり、テンポもよくなっ
て読みやすく、よりおもしろくなっている。残念ながらと言うべきなのか、喜ぶべき
ことにと言うべきなのかは迷うところだが、公式サイトを見ると、バーセルはつい最
近警察を辞めて作家活動に専念しはじめたようだ。警察官としてすごした20年のキャ
リアをいかした作品を、これからも書き続けてほしい。

 1."EVERY MOVE SHE MAKES" (1999) Robin Burcell/HarperTorch ISBN:006101432X
 冷凍庫で見つかった死体。それを検死した検死官が今度は殺される。
 2."FATAL TRUTH" (2002) Robin Burcell/Avon ISBN:0061061239
 ケイトと家族と過去を巻き込む、麻薬密売にからむ連続殺人事件。
 3."DEADLY LEGACY" (2003) Robin Burcell/Avon ISBN:0061057878
 殺されたのは大学時代の親友だった。彼女はなぜ殺されたのか?
 4."COLD CASE" (2004) Robin Burcell/Avon ISBN:0061053775
 自らが重傷を負った3年前の未解決事件。再捜査を始めたケイトだったが……。
                              (かげやまみほ)
▽著者の公式サイト
http://www.robinburcell.com/
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《信念を貫く正義の人〜地方検事補サマンサ・キンケイド・シリーズ》

 米国北西部第2の規模を誇る都市オレゴン州ポートランドは、大都会でありながら
豊かな自然にめぐまれた美しい街として知られている。そして、“ポートランド市と
周辺地域で発生した犯罪を起訴する組織に属しており、その任務のほんの一部を担っ
ている”のがマルトノマ郡地方検察局検事補で、シリーズのヒロイン、サマンサ・キ
ンケイドだ。
 ハーヴァード大学を卒業後、ロースクールに進み、連邦検察局ニューヨーク南支部
で検事補として活躍したサマンサは、夫がナイキの企業内弁護士に転職したのをきっ
かけに故郷のポートランドに戻った。そこでも検察官の仕事をつづけたいという希望
から、地元の地方検察局に職を得た。夫とはほどなく、“彼のペニスの適切な使用に
ついて、お互いの意見が一致しなかったから”という理由で離婚し、いまはフレンチ
・ブルドッグのヴィニーと暮らしている。
 サマンサの最大の魅力は、あふれんばかりの正義感と前向きな姿勢だ。彼女ほどの
キャリアと実力ならば、高額が約束されている有名弁護士事務所で働くこともできた
はずだ。なのに悪人に裁きを受けさせる側をあえて選んだというだけあって、一人称
の語りのそこかしこから検察官という職務に対するプライドと情熱が感じられる。彼
女にとって大切なのは被害者の代弁者であることだ。被害者が売春婦であっても、遺
族が地元の有力者であっても、捜査の姿勢は変わらない。どんな事件にも真摯な姿勢
であたり、ささいな点にも徹底的にこだわる。そのためにときには、関係者の不興を
買うこともあるし、上司が苦言を呈すこともある。それでも保身に走ったりはせず、
信念を貫きとおす。
 だからといって、サマンサは一匹狼のはみだし検察官ではない。彼女のことを“あ
の娘(こ)”なんて少々差別的な呼び方をする刑事にも、“言い返したい気持ちと自
尊心を抑え込む”だけの分別はあるし、いかなる場合であっても法に反する行動は取
らない。あからさまではないにしろ女ゆえの差別的な扱いを受けたときでも、心のな
かで悪態をつきながらも、前向きな姿勢をくずさない。タフでパワフルなサマンサ・
キンケイドは、まさに働く女性の理想といっていいだろう。

 1."JUDGMENT CALLS" (2003) 『女検事補サム・キンケイド』アラフェア・バーク/
七搦理美子訳/文春文庫 ISBN: 4167661640
 単純な少女レイプ事件のはずだった。しかし裁判で検察側の証拠が次々に崩されて
いき、サマンサは窮地に立たされる。
 2."MISSING JUSTICE" (2004) 『消えた境界線』アラフェア・バーク/七搦理美子
訳/文春文庫 ISBN: 416770501X
 市の行政法審判官を務める女性が殺害された。彼女の裁定に不満を持つ黒人男性が
捜査線上に浮かんだが、そこから事件は複雑になっていく。
 3."CLOSE CASE" (2005) Alafair Burke/Henry Holt and Co. ISBN: 0805077847
 警官による発砲事件を糾弾していたジャーナリストが殺された。逮捕された容疑者
はいったんは自白したものの、警察に強要されたと訴える。
                               (山本さやか)
▽著者の公式サイト
http://www.alafairburke.com/
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《シングルマザーの火災捜査官〜ジョージア・スキーアン・シリーズ》

 ニューヨーク市消防局(FDNY)のジョージア・スキーアンは、消防士として7
年勤めたあと火災捜査官に昇格した。火災捜査官は火事の原因を特定し、拳銃を携帯
して火災に絡む犯罪を捜査して放火犯を逮捕する法執行官だ。難しい昇格試験を通っ
ても、男尊女卑の風潮が根強くアイルランド系の荒くれ男が多い消防局で、新人女性
捜査官は半人前扱い。ジョージアは女だというだけで上司に疎まれ、思うように仕事
をさせてもらえない悔しさと、同僚たちの輪にとけこめない疎外感に悩まされている。
 しかし、ジョージアはめげない。どんなにお荷物扱いされようとも、言うべきこと
は言い、やるべきことはやる。ひょっとしたら、幼いころに殉職した消防士の父が、
天国から彼女を後押ししているのかもしれない。相手が消防局幹部だろうと、ニュー
ヨークの有力者だろうと、火災捜査官としての誇りを胸に体当たりでぶつかっていく。
権力ヒエラルキーの見えない壁に抵抗する彼女の決断力と行動力に溜飲が下がる。
 一方、私生活のジョージアはシングルマザーの辛苦を味わっている。かつての恋人
リックとのあいだにできた息子リッチーは9歳になった。父親役と母親役の両方をこ
なそうとあくせくするが、息子はだんだん扱いが難しくなってきた。そんな彼女にと
って唯一の光明は、同僚マックとのはじまったばかりの恋愛関係。シリーズ1作目で
接近したふたりの関係がこのあとどんな展開を見せるかも読みどころのひとつだ。
 火災現場のわずかな手がかりから事件を解決するスーパーウーマンであると同時に、
職場や私生活でさまざまな悩みを抱え、強さともろさを併せ持つ等身大の女性として
描かれているジョージア。少なくとも女性読者は彼女の活躍に羨望を抱き、苦しむ姿
に声援を送らずにはいられないだろう。
 ところで、このシリーズは消防局や火災現場、火災捜査に奔走する捜査官が実にリ
アルに描かれている。それもそのはず、著者スザンヌ・チェイズンの夫はFDNYの
幹部である。おそらくは真に迫った描写の裏に、夫のアドバイスが生きているのだろ
う。著者の言葉を借りると「FDNYにはヒーローがあふれている」。たしかな知識
に裏付けされた迫力のヒロイン、ジョージア・スキーアン・シリーズ。読み逃せない。

 1."THE FOURTH ANGEL" (2003) 『火災捜査官』スザンヌ・チェイズン/中井京子訳
/二見文庫 ISBN: 4576032097
 マンハッタンで数十人の死者を出したビル火災。超高熱火災〈HTA〉の痕跡と
“第四の天使”を名のる連続放火予告が、思いがけない真実の糸口となる。
2."FLASHOVER" (2004) 『欺く炎』スザンヌ・チェイズン/中井京子訳/二見文庫
ISBN: 4576041452
 2人の医師の謎の焼死とパイプラインの爆破予告。出動した消防士がなぜか次々と
病死した過去の火災。行き詰まる捜査のなか、ジョージアの親友コニーが失踪する。
 3."FIREPLAY" (2004) Suzanne Chazin/Jove Books ISBN: 0515137138
 レストラン火災の放火犯“フリーザー”はFBIの情報提供者だった。目の前の犯
人を逮捕できないいらだち。やがてテロリスト集団の影がちらつきはじめ……。
                               (片山奈緒美)
 ■インタビュー ―― 二見書房編集部 →こちらへ

 ■お気に入り見つけた! 〜6月のミステリから〜

 今月紹介するのは、順調に翻訳が続き、一定の評価を得ているミステリ・シリーズ
の最新作2つ。どちらも素人探偵が活躍する、気軽に読めるコージー・ミステリだ。

 高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉で暮らす元気なおばあちゃま、アンジェラと
キャレドニア。『ピーナッツバター殺人事件』は、そんな2人が奮闘する〈海の上の
カムデン〉シリーズの4作目だ。
 列車に轢かれた男性の死体が線路脇で見つかる。いつもは首をつっこむなと言うマ
ーティネス警部補から、男性の婚約者が〈海の上のカムデン〉で暮らしているので、
捜査に協力してほしいと頼まれ、いつも以上に張り切る2人。はたして今回の騒動の
顛末はいかに?
 大好きなシリーズの最新作を読む時、いつもの登場人物がいつものように元気よく
動き回ってくれると、友人と久しぶりに会った時のようにうれしくなる。とりわけ、
この〈海の上のカムデン〉シリーズはそうだ。メンバーのほとんどが高齢のため、誰
かいなくなっているのではないかと、毎回気が気ではない。だがわたしの心配をよそ
に、皆はますます元気になっているようだ。とくに今回、2人と一緒に危ない橋を渡
ったあの人は、今後さらにパワーアップしていきそうな気配。次回作が待ち遠しい。

 先月のチョコレートに引き続き、今月もおいしいミステリがヴィレッジブックスか
ら発売された。『ファッジ・カップケーキは怒っている』は、クッキー・ショップを
経営する、ハンナ・スウェンセンが活躍するシリーズの5作目だ。
 保安官選挙期間中のある夜、現職の保安官ジム・グラントが殺される。容疑者とし
て挙がったのは、対立候補でハンナの義弟ビル。ビルが人を殺すはずがない。義弟の
容疑をはらすため、ハンナは一肌脱ぐことにする。
 今回殺人事件の捜査と同時進行で、ハンナはもうひとつの謎解きに挑戦している。
それはある女性自慢のファッジ・カップケーキに入っていた、秘密の材料を見つけ出
すことだ。女性は秘密を明かすことなく亡くなり、材料は謎として残った。ハンナは
ケーキを食べたことのある人に話を聞き、試作を重ねて謎の材料をつきとめていく。
食感や味や香りなど感覚的な言葉だけから材料を探していく過程は、食いしん坊のわ
たしにとって、予想以上にドキドキとする展開になった。
                              (かげやまみほ)
『ピーナッツバター殺人事件』 "THE PEANUT BUTTER MURDERS"
 コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希訳
 創元推理文庫/2005.06.17発行 940円(税別)
 ISBN: 4488203051
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『ファッジ・カップケーキは怒っている』 "FUDGE CUPCAKE MURDER"
 ジョアン・フルーク/上條ひろみ訳
 ヴィレッジブックス/2005.06.20発行 860円(税別)
 ISBN: 4789725731
◇bk1へ

=- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=             ☆★「月刊児童文学翻訳」☆★  インタビュー、最新情報、レビューなど、児童文学翻訳に関する記事が満載の情報 誌。詳細&購読申し込みはこちらから(↓)。                   http://www.yamaneko.org/mgzn/index.htm 毎月15日配信(1月と8月は休刊)。申し込み手続きは前日までにおすませください。 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■編集後記■  今月ご紹介したローズ・コナーズの『霧のとばり』を読んだとき、思わず涙がこぼ れました。ミステリを読んで泣いたのは、北村薫の『リセット』以来です。 (清)


********************************************************************  海外ミステリ通信 第47号 2005年7月号  発 行:フーダニット翻訳倶楽部  発行人:うさぎ堂(フーダニット翻訳倶楽部 会長)  編集人:清野 泉  企 画:板村英樹、かげやまみほ、片山奈緒美、唐澤涼子、崎浜祐子、      佐藤枝美子、中島由美、中西和美、花田美也子、松本依子、      三浦真司、森まり、柳田有里、矢野真弓、山田亜樹子、      山本さやか  協 力:出版翻訳ネットワーク 小野仙内      西洋冒険譚翻訳倶楽部  本メルマガへのご意見・ご感想、及びフーダニット翻訳倶楽部の連絡先   e-mail: mwmag@litrans.net   掲示板: http://www.litrans.jp/c-board/c-board.cgi?id=15  配信申し込み・解除/バックナンバー:  http://www.litrans.net/whodunit/mag/index.htm  ■無断複製・転載を固く禁じます。(C) 2005 Whodunit Honyaku Club ********************************************************************
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