最終回は、『月が昇るとき』(晶文社)の解説で、ミッチェル作品の傑作のひとつ
と評されていた "WHEN LAST I DIED" をご紹介する。
●"WHEN LAST I DIED"(1941)
夏のひとときを孫と一緒に過ごした田舎の家で、ミセス・ブラッドリーはたまたま
古い日記をみつける。日記の作者ベラは、かつてその家に住んでいた婦人の姪で、叔
母殺しの疑いをかけられ、それを苦にして自殺した女性だった。偶然にもベラは自殺
する前、ミセス・ブラッドリーが心理学者として仕事をしている少年たちの更正施設
で、食堂の下働きをしていた。
日記には、ベラが作った食べ物を喉につまらせて叔母が窒息死し、そのことで彼女
を殺人犯呼ばわりする匿名の手紙を受け取っていたこと、叔母の死後、従兄夫婦と一
緒に近所の幽霊屋敷に住んでいたこと、従兄が幽霊屋敷の窓から転落死してその殺害
容疑もかけられていたことが記されていた。一方でベラが更正施設に勤務していた当
時、少年ふたりが脱走して行方不明になり、その脱走にベラが関与していたらしいこ
ともわかった。ミセス・ブラッドリーが、死亡した叔母に仕えていた女中や、一時は
ベラと暮らしていた従兄の妻らから話を聞くと、叔母と従兄の事件が、日記とは違う
様相をみせはじめる。
『ソルトマーシュの殺人』(国書刊行会)や "THE MYSTERY OF A BUTCHER'S SHOP"
といったユーモラスな作品とは違い、本作の雰囲気は暗く、どちらかといえば『月が
昇るとき』に似ている。日記に書かれた事件が、別の語り手たちによってどんどん変
化して、全く違う事件が現れてくる様子は見事だ。しかし感心するのはこれだけでは
ない。最後に読者が目にする事件の真相は、物語途中で予想した筋書きとは異なり、
ラストには驚きが待っている。ミステリとしての完成度が高く、ブラックユーモアを
描くオフビートな作家と一般的に評されているミッチェルの新たな面が見えてくる作
品だ。
(清野 泉)
■速報 ―― MWA賞ノミネート作品発表
アメリカ探偵作家クラブは第59回MWA賞のノミネート作品を発表した。最優秀長
篇賞をはじめ、主要4部門のノミネートは以下のとおり。
受賞作の発表は現地時間の4月28日、ニューヨークの〈グランド・ハイアット・ホ
テル〉にておこなわれる。
●最優秀長篇賞
"EVAN'S GATE" Rhys Bowen
"BY A SPIDER'S THREAD" ローラ・リップマン
"REMEMBERING SARAH" Chris Mooney
"CALIFORNIA GIRL" T・ジェファーソン・パーカー
"OUT OF THE DEEP I CRY" Julia Spencer-Fleming
●最優秀処女長篇賞
"LITTLE GIRL LOST" Richard Aleas
"RELATIVE DANGER" Charles Benoit
"THE CLOUD ATLAS" Liam Callanan
"TONIGHT I SAID GOODBYE" Michael Koryta
"COUNTRY OF ORIGIN" Don Lee
"BAHAMARAMA" Bob Morris
●最優秀ペイパーバック賞
"THE LIBRARIAN" ラリー・バインハート
"INTO THE WEB" トマス・H・クック
"DEAD MEN RISE UP NEVER" Ron Faust
"TWELVE-STEP FANDANGO" Chris Haslam
"THE CONFESSION" ドメニック・スタンズベリー
●最優秀短篇賞
"Something About a Scar" Laurie Lynn Drummond
(ANYTHING YOU SAY CAN AND WILL BE USED AGAINST YOU)
"The Widow of Slane" テレンス・ファハティ (EQMM - March/April 2004)
"The Book Signing" ピート・ハミル (BROOKLYN NOIR)
"Adventure of the Missing Detective"
Gary Lovisi (SHERLOCK HOLMES: THE HIDDEN YEARS)
"Imitate the Sun" Luke Sholer (EQMM - November 2004)
上記4部門以外のノミネートについては、MWAの公式サイトでご覧いただきたい。
http://www.mysterywriters.org/pages/awards/nominees05.htm
(佐藤枝美子)
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■編集後記■
今月は1月に亡くなった、シャーロット・マクラウドの特集をお届けしました。こ
こ数年は療養生活をおくって、新作を発表することはなくなっていました。でももう
これで、二度とセーラやシャンディ教授の活躍が読めないのかと思うと、ファンとし
ては寂しいかぎりです。 (か)