■ 第34号 2004年6月号 ■
〈インタビュー〉
  kashiba@猟奇の鉄人さん
〈注目の邦訳新刊レビュー〉
  『ピアニストを撃て』   
  『哀しみの街の検事補』   
  『キューバ海峡』      
  『世界の涯の物語』
  『私が見たと蝿は言う』
  『マンハッタンの薔薇』
  『鷲の目』  
 
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 ■注目の邦訳新刊レビュー

『ピアニストを撃て』 "DOWN THERE"
 デイヴィッド・グーディス/真崎義博訳
 ハヤカワ・ミステリ/2004.05.15発行 1000円(税別)
 ISBN: 4150017514

《暗くて切ない、でももう一度読みたくなる》

 本邦初訳である。グーディスの名は知らなくてもこのタイトルはどこかで目にした
ことがあるだろう。オリジナルの発表は1956年だが、本国アメリカではほとんど話題
にならなかった。その後フランスの犯罪小説シリーズ〈セリ・ノワール叢書〉の1冊
として発表され数多くの読者を獲得。1960年にはシャルル・アズナブール主演、フラ
ンソワ・トリュフォー監督の長編第2作として発表されて以来、40年あまり世界中の
ヌーベルバーグ・ファンを魅了し続けてきた作品の邦訳が、今回初めてというのは意
外な気がする
 舞台は1950年代のフィラデルフィア。場末のバーでピアノを弾くエディはかつて世
界中の音楽ファンを熱狂させたコンサートピアニストだった。しかし、その成功の陰
では愛する妻が興行師のなぐさみ物にされ続けていたのだ。妻はやがてビルから身を
投げ、エディは輝きを失い転落を続ける。いまは酔っ払い相手に調子はずれのピアノ
を弾き、週末には晩飯を食べるための50セントにもこと欠く日々。そんなエディのも
とにある日、ギャングともめごとを起こした兄が助けを求めてくる。始めは無視して
いたエディだったが、結局は兄の逃走劇に巻き込まれるはめに。
 店にはエディに思いをよせるウェイトレスのレナがいた。そのレナに横恋慕する用
心棒プラインはエディをギャングに売るが、逆にエディの手で命を落とす。そしてク
ライマックス、ギャングとの銃撃戦ではレナまでもが……。
 登場人物はみな出自も暗く、ストーリーに救いはない。スリリングなプロットにド
キドキするというよりは、ちょっと不思議でシュールな雰囲気にひたることを楽しむ
小説だろう。生涯母国では認められず、フランスでのみ評価されたというグーディス。
〈セリ・ノワール叢書〉の書き手にはグーディスのようなアメリカ作家が数多くいた
という。
『ピアニストを撃て』というフレーズは原作のどこにもない。開拓時代、アメリカ西
部の酒場ではピアニストが貴重な存在で、壁によく「ピアニストを撃たないで下さい」
という張り紙がしてあったという逸話から、フランスで出版されたときに洒落でつけ
られたタイトルらしい。
                                (三浦真司)
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『哀しみの街の検事補』 "HOLLOWPOINT"
 ロブ・ルーランド/北澤和彦訳
 扶桑社ミステリー/2004.04.30 1048円(税別)
 ISBN: 459404641X
	
《哀しみの街の哀しい検事補》

 ニューヨークはブルックリンの地区検事補ジョベルティ、通称ジオは、途方もない
哀しみを抱えていた。1年前、5歳の愛娘を幼稚園へ迎えに行った帰りに自分の不注
意から事故で娘を死なせてしまったのだ。その後、妻にも家を出ていかれ、そのうえ
仕事では、復帰早々に大きなミスを犯していた。
 そんなある日、彼に回ってきたのは、14歳の黒人少女が自宅で射殺された事件だっ
た。当夜家には、コカイン中毒の母親と異父姉、そして少女の赤ん坊がいたが、みん
な眠っていたという。隣人の証言からLLと呼ばれる売人が逮捕され、簡単に一件落
着したかに思われたが……。
 殺人など日常茶飯事のブルックリン。そこで「またひとつ死体が見つかったところ
で、だれもなんとも思わない」という書き出しは、かなり過激でショッキングだが、
著者が現役の地区検事補であるだけに重みを感じてしまう。主人公ジオの目を通して、
この地区の哀しい現実が浮き彫りにされていく。人種のるつぼではなく、異種を決し
て受け入れようとしない、「ダマになったクリーム・オブ・ホイート」とジオが称す
る、まだ見ぬブルックリンに思いを馳せずにはいられなかった。
 物語は、日常の狭間に湧きあがる独り言、思い出、夢想、幻影、過去の記憶などが、
ジオの一人称でとりとめなくつづられていく。毎朝現れる娘の幻影は、空っぽになっ
てしまった自分の心を埋めようとするかのようであり、通りすがりの子供を危険から
救ってやるという白昼夢は、自分の娘を救えなかったという自責の念からくるものだ
ろう。だが、やるせない一辺倒というのでもない。ジオは、心の穴を埋めようと愚か
にもガールハントにいそしみ、現実から逃れようと軽率にも泥酔する。あまりにもだ
らしないジオの行状に、「男は“愚かで軽率”だけど、憎めない生き物だろう?」と
著者が訴えているようにさえ思われた。
 そんな、どうしようもないジオも最後にはやってくれた。1年前の失敗の償いをす
るかのように大陪審に臨むジオ。ラストは、そんなことしていいの? と思ってしま
うような決着のつけ方だったが、過去の失敗との絡みで皮肉が利いていておもしろか
った。独特の語り口のこの作品は、デビュー作ながら2002年のハメット賞候補にノミ
ネートされた。法廷シーンや謎解きがほとんどないので、リーガル・ミステリと呼ぶ
にはかなり異色であるが、読み込むほどに味のある作品だと思う。
                                (矢野真弓)
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『キューバ海峡』 "CUBA STRAIT"
 カーステン・ストラウド/布施由紀子訳
 文春文庫/2004.5.10発行 1038円(税別)
 ISBN: 4167661659

《戦争に自分の名前が付けられてしまったら》

 嵐が近づく中、1機の水上飛行機がキューバ、タナモ湾飛行場から飛び立っていっ
た。パイロットと同行者のインディオ、そして重量制限をオーバーするほど詰めこま
れた荷物を乗せて。
 そのころリック・ブローカはフロリダ海峡を借りもののカガンチョ号でクルージン
グ中、イタチザメの「メイベリン」に気を取られていたため、暴風雨前線の接近に気
づくのがおくれてしまった。嵐に追い付かれたそのとき、灰色の積雲から2機の飛行
機があらわれた。米国海兵隊の輸送機と正体不明の水上飛行機である。行方が気にな
るリックがレーダーで見まもるなか、水上飛行機が消えてしまった。その跡を追って
はみたものの、漂流物さえも見つからない。あきらめて寄港先に向かうことにしたリ
ックだが、途中でとんでもないものを拾い上げてしまう。そして、それがそれから起
こる災難の始まりだったのだ。
 リックは元ニューヨーク州警官。現在は映画会社の社長、ジェイク・シーゲルに雇
われて映画のテクニカル・アドバイザーをしている。カガンチョ号はそのジェイクか
ら借りたものだ。キーウエストでカガンチョ号をジェイクに返し、ロサンゼルスの自
宅へ戻ったリックだが、あることを思い出し洋上のジェイクに何度か連絡を取ろうと
するものの、ジェイクの携帯電話にはだれも出ない。やっとつながった時、電話は無
言のまま切られてしまった。
 リックが思いがけず拾い上げたものが原因で、アメリカ・キューバ間の緊張が一気
に高まる。ボランティアという形で捜査に協力する事になったリックは再びフロリダ
へ。そこから物語はさらに加速度を増す。600ページをこす大作だが、読み始めたら
最後まで一気に読まされてしまう。背表紙に書かれている通り、まさに「ノンストッ
プ・アクション」である。
                               (佐藤枝美子)
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『世界の涯の物語』 "THE OFF OF WONDER" & "TALES OF WONDER"
 ロード・ダンセイニ/中野善夫・中村融・安野玲・吉村満美子共訳
 河出文庫/2004.05.20発行 850円(税別)
 ISBN: 4309462421

《黄昏の光の中をケンタウロスが駆け、ドラゴンが飛び、牧神(パン)が躍る》

 1970年代、荒俣宏訳によってロード・ダンセイニの幻想的な世界にどっぷりとはま
っていた諸氏に朗報である。このたび河出書房新社からダンセイニの四大幻想短篇集
である "THE SWORD OF WELLERAN AND OTHER STORIES" "A DREAMER'S TALES" "THE
BOOK OF WONDER" "TALES OF WONDER" の4冊が本邦初、完全な形で2冊にまとめて出
版される。本書はその第1弾として後半2冊の短篇集を収録している。
 ダンセイニは、同じく近年になって再び注目を浴びているジェラルド・カーシュの
ように、幻想ミステリの作家として《ミステリマガジン》(早川書房)に紹介された
こともあった。だが本書ではむしろ、ファンタジイ作家としてのダンセイニの魅力を
充分に堪能してもらいたい。
「私は目で見たものについて書くことはない。夢見たことについてだけ書く」という
ダンセイニの言葉通り、本書の目次を見ても「ケンタウロスの花嫁」「なぜ牛乳屋
(ミルクマン)は夜明けに気づいたときに戦慄(おのの)き震えたのか」「強情な目
をした鳥」「流浪者クラブ」などと、ダンセイニが語る夢の世界へ思わず足を踏み入
れたくなるようなタイトルが並んでいる。
 例えば「流浪者クラブ」――“わたし”はふとしたことから東方三十島を統べるエ
リティヴァリアの前王と知り合い、ロンドンにあるクラブでの晩餐に招かれた。醜悪
な家々を見下ろすようにそそりたち、どことなくオリュンポス山めいたギリシャ風の
建物を訪ねていくと、テーブルには20人分の席がしつらえてあったが、客であるわた
しの席だけが普通の椅子で、他はすべて玉座である。実はクラブのメンバーはすべて
正統なる王だった。ただし、世が忘れ果てた王の末裔であったり、王国の名すら変わ
ったという王であったり、神話も同然とみなされている王国の王であったり……。取
るものもとりあえずロンドンへ流れつく折に祖国から持ち出してきたという家宝の数
々を披露されたわたしは、当時の彼らの豪奢な暮らしぶりを偲ぶめくるめくような物
語にうっとりと耳を傾けた。ところが、わたしが何気なく口にしたたったひとつの言
葉が一同のあいだに戦慄をもたらし、すべてを台無しにしてしまった――。
 1878年にアイルランド有数の貴族の家に生まれ、12歳で男爵の称号を継承し、風光
明媚な丘に建つダンセイニ城18代当主であったダンセイニ。彼にとって、アイルラン
ドに伝わる古代ケルト民族の神々や妖精の物語は、日々呼吸する空気と同様、まった
く自然な存在だったのだろう。彼の差し出す手に引かれ、ケルトの黄昏の光に包まれ
た幻想世界を旅するという、なんともぜいたくなひとときがすごせる1冊だ。
                                 (森まり)
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『私が見たと蝿は言う』 "I, SAID THE FLY"
 エリザベス・フェラーズ/長野きよみ訳
 ハヤカワ・ミステリ文庫/2004.04.30発行 720円(税別)
 ISBN: 415174651X

《殺人の始まりは、推理合戦の始まり》

 1942年、ケイ・ブライアントは久しぶりに訪れたリトル・カーベリー通りに立ち、
数年前のことを思い返していた。ロンドン大空襲のため、辺りは見る影もない。かつ
てケイが殺人事件に巻き込まれた安アパートも含めたすべてが。
 戦争が始まる前のことだ。ケイは夫との別居を決め、この通りの10番地のアパート
で一人暮らしをしていた。画家としての仕事はうまくいかず、それまでかかっていた
インフルエンザはどうにか治ったものの、体調は良くなかった。そんなときにガス工
事をしていた隣室からピストルが見つかった。作業員が警察に届け出たものの、部屋
の主である女性は最後まで反対していた。かつて共産党員だった彼女はしつこい取調
べを受けたことがあり、2度と関わり合いになりたくなかったのだ。
 その翌日、公園で女性の死体が発見された。被害者は以前の隣室の住人、フランス
へ行くと言ったまま姿を消した作家志望の女性だった。しかも凶器として使われたの
は、隣室から発見されたピストルだ。
 警察はアパートの住人すべてを容疑者として捜査を開始する。一方、ケイを含めた
住人たちは殺人事件について話し合い、様々な可能性を検討し、推理を巡らせる。そ
の矢先、地下室で第2の殺人事件が発生した。今度の被害者は嫌われ者の管理人だ。
やがて自分の推理を話したくてたまらない住人たちは、ケイと会うたびそれぞれ違う
犯人と動機を語り、閉口させる。中にはケイ自身を犯人としたものもいたが、一笑に
付した。確証はなかったものの、それまでの周囲の人間への観察から真相にたどりつ
きつつあったのだ。そんな彼女の命を奪おうと、犯人の手が迫る。
 作者の細かな観察眼がよくうかがえるミステリ。特に私が感心したのは「なぜ数日
中にガス工事があるとわかりきっていた部屋にピストルは隠されたのか」、そして
「ピストルが発見される以前、ケイがインフルエンザにかかっていたことがどのよう
に事件に絡んでくるか」である。住人同士の事件に対する会話が小説の大半をしめる
ため、いくらかあらすじがとりにくいのだが、彼らの応酬は陽気でテンポがよく、読
みやすい。第2次世界大戦直前という設定にも関わらず、全体の雰囲気がのどかで明
るいところも好ましい。
 この『私が見たと蝿は言う』は、かつて早川書房からポケミスの2冊として、橋本
福夫氏の訳で出版されたことがある。数十年ぶりの復刊である。
                                                           (柳田有里)
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『マンハッタンの薔薇』 "THE SISTERS"
 シンシア・ビクター/田村達子訳
 講談社文庫/2004.05.15発行 914円(税別)
 ISBN: 4062747650

《1発の銃声が「幸せな家族」の仮面をはぐ――反目する姉妹が見たものは?》

 ニューヨーク郊外に居を構えるロス一家。父ジャック・ロスはニューヨークにこの
人ありと知られる辣腕弁護士。母モリーは舞台衣装をデザインし制作するコスチュー
ムペインターとして世に出ようとしていた。長女エリザベスは弁護士となり、父の片
腕として事務所を支えている。次女ジョーイは一家の落ちこぼれを自認し、弁護士で
はなく、ジャーナリストを志す。夫よりも自分の仕事を優先する母を批判するエリザ
ベスと、家族に対して支配的な父に反発するジョーイ。2人が顔を合わせば、いさか
いに終わるのが常だった。
 ある夏の午後、モリーが自宅で射殺される。その朝、モリーと口論したエリザベス
が無実であるにもかかわらず容疑者とされる。自分を逮捕すれば警察は真犯人を捜す
努力などしないと考えたエリザベスは、弁護士として許されない行為と知りつつ、家
を出て変装し、偽名を使って、真相を究明しようとする。
 逃亡生活を送るエリザベスはジョーイとひそかに連絡を取り合い、姉妹は母を殺害
した犯人を突きとめるために手を携える。捜査を重ねる中で、姉妹は互いに認め合い、
許し合う。それぞれの出会いと別れ。あるときはエリザベス、あるときはジョーイに
自分を投影しながら、読者は姉妹とともに犯人を追ってニューヨークを縦横無尽に駆
けめぐり、スリリングな気分をたっぷりと味わうことができるだろう。
 姉妹のいる方ならエリザベスとジョーイの確執は身につまされるかもしれない。長
年苦しんだ広場恐怖症を克服し、自分らしく生きるために離婚を決意したモリーは、
姉妹に宛てた手紙の中で自らの過去を語る。その手紙からは、重い秘密を抱えながら
も飾り物ではない生き方を選んだ女性の苦悩と切なさが痛いほどに伝わってくる。そ
して、その死がいかに理不尽なものであるかを痛烈に感じさせ、衝撃のラストへと読
者を一気に導いていく。
 ジョーイの年長の友人が関係する60年代に起こった殺人事件からは、学生運動が盛
んだった当時の世相がうかがわれる。モリーの事件とあいまって、謎解きとしてのお
もしろさだけではなく、物語としての深みを作品に与え、読者を引き込んでいく。血
なまぐさい殺人と裏切りを描きながらも、その筆致はあくまでも優しく温かい。
 シンシア・ビクターはシンシア・カーツとビクトリア・スカーニック、2人のペン
ネーム。『遺言執行人』『ダブル・シークレット』に続き、翻訳は3作目。現代を生
きる等身大の女性を強さも弱さも含めて温かく描くシンシア・ビクターは、もっと注
目されてよい作家である。
                                (中島由美)
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『鷲の目』 "OVERFALL"
 デイヴィッド・ダン/田中昌太郎訳
 ハヤカワ文庫NV/2004.04.30発行 各700円(税別)
 ISBN: 4150410615(上)、4150410623(下)

《自己主張の強い美人に頭が上がらないのは、ヒーローの宿命?》

 人間の不安感をつかさどる脳神経細胞のいくつかに遺伝子操作を施しておけば、あ
とは不安反応に関わる活性細胞を刺激することで命知らずの戦士が誕生し、抑制細胞
を刺激すれば廃人同様になる──某ハイテク企業がブリティッシュ・コロンビア州の
小島に所有する施設では、こういった人体実験がひそかに行われていた。
 その企業の優秀な技術者であるジェーソンはこのところ妄想に苦しんでおり、妹の
アンナは島の施設にときおり兄を訪ねていたが、ある日切迫した様子のジェーソンか
ら、機密データのコピーだというCD−ROMを託される。アンナは専門家に解析を
依頼するべく急いで島を離れようとするが、コピーの紛失に気づいた企業が放った追
っ手をかわそうとして海に転落。その現場をヨットから偶然目撃して彼女を助け上げ
たのがサムで、実は物語はここから始まる。
 とにかく内容は盛りだくさんだ。冒頭は、刻一刻と様相が悪化する大海原との闘い。
次いで、獰猛な犬とロケットランチャーを携えた追っ手をかわしながら、人里離れた
荒涼たる自然を背景にくり広げられるサバイバル・アドベンチャー。先住民の母から
神秘の智慧を受け継ぎ、特殊部隊出身の父から徹底的にサバイバルの手ほどきを受け
たサムの能力が、全編を通じて遺憾なく発揮されている。また道連れとなるアンナは
今をときめくハリウッドの映画スターで、逆境に音をあげるかと思いきや、並みの男
には手に負えそうもない鼻っ柱の強さと行動力でサムに続く。この2人がときに衝突
し、ときに支え合いながら互いに惹かれていく過程も見逃せない。
 さらに舞台がロサンジェルスに移るとサムは調査会社のオーナーという別の顔を見
せ、情報工学の博士号を持つ頭脳と、政府機関などを相手に高額の委託料で調査業務
をこなしてきた実績に物を言わせ、あらゆる手立てを講じてCD−ROMの解析を進
めていく。それは某ハイテク企業の恐るべき陰謀を暴いて遺伝子操作の実験台となっ
ているアンナの兄を救うことであり、またはからずも、その昔サムの目の前で息子を
殺した相手を追いつめることにもつながっていく。惜しむらくは主要登場人物が多く、
話が少々広がりすぎたことだろうか。
                                (崎浜祐子)
◇アマゾン・ジャパンへ 上巻下巻
◇bk1へ 上巻下巻

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■編集後記■
 ミステリと古書店巡りが大好きなので、kashiba@猟奇の鉄人さんのインタビューは、
とても興味深いものでした。みなさまはいかがだったでしょうか? 雨の多いこの季
節、たまってしまった未読の本をできるだけ片付けられたらと思ってます。 (か)


********************************************************************  海外ミステリ通信 第34号 2004年6月号  発 行:フーダニット翻訳倶楽部  発行人:青縁眼鏡 (フーダニット翻訳倶楽部 会長)  編集人:かげやまみほ  企 画:板村英樹、片山奈緒美、唐澤涼子、清野 泉、中西和美、      花田美也子、松本依子、山田亜樹子、山本さやか  協 力:出版翻訳ネットワーク 小野仙内      西洋冒険譚翻訳倶楽部、みもざ翻訳館      崎浜祐子、佐藤枝美子、中島由美、三浦真司、森まり、      柳田有里、矢野真弓  本メルマガへのご意見・ご感想、及びフーダニット翻訳倶楽部の連絡先   e-mail: mwmag@litrans.net   掲示板: http://www.litrans.jp/c-board/c-board.cgi?id=15  配信申し込み・解除/バックナンバー:  http://www.litrans.net/whodunit/mag/index.htm  ■無断複製・転載を固く禁じます。(C) 2004 Whodunit Honyaku Club ********************************************************************
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