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の罪』では、オーエンの神学校時代へとさかのぼる。研究生が突然姿を消したので調 べてほしい、と指導教官である司祭から頼まれ、退学寸前だったオーエンはやむなく 引き受けるが、元来のミステリ好きが高じて調査にはまりこむ。本シリーズは、人間 の深い心理を描いている。シリーズ短篇にも各種ミステリ賞の候補作や受賞作がある。  もう1つのシリーズの主人公、スコッティ(スコット・エリオット)は、第二次大 戦前にはハリウッドで若手俳優として活躍し始めていたが、戦争で徴兵され、帰還は したものの、俳優として復帰できず、現在は知り合いの経営する〈ハリウッド警備保 障〉の警備員をしている。依頼人は映画業界の関係者だ。1947年、マッカーシー上院 議員による“赤狩り”旋風吹き荒れる中で戦時中に作った映画の続編を作ろうとした 矢先に、「なぜ、共産主義者のシナリオライターを使うのか?」という手紙が届いた ので調べてほしいとの依頼を受ける『キル・ミー・アゲイン』。戦前に作った映画は 会社の上層部の意向で結末が変わってしまったから、1950年代の今、ネガを買い取っ て結末を撮り直すことにしたのだが、その途端に妨害工作が始まったので調べてほし いとの依頼を受ける『輝ける日々へ』。スコッティ・シリーズには、犯人解明までの 過程に多くのひねりが加わっており、実在の映画や俳優に関するうんちくも豊富に盛 り込まれている。『輝ける日々へ』は、1998年のシェイマス賞最優秀長篇賞を受賞。  本国ではオーエンものが8作、スコッティものが4作出ているが、どちらも邦訳は 2冊のみで、残念ながら、それも今では新刊書店では入手しにくい状況にある。 (石田浩子) ◇著者のサイト http://www.terencefaherty.com/ ☆オーエン・キーン・シリーズ 1."DEADSTICK"(1991) 『折られた翼』安倍昭至訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 2."LIVE TO REGRET"(1992) 3."THE LOST KEATS"(1993) 『若き聖者の罪』安倍昭至訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 4."DIE DREAMING"(1994) 5."PROVE THE NAMELESS"(1996) 6."THE ORDAINED"(1997) 7."ORION RISING"(1999) 8."THE CONFESSIONS OF OWEN KEANE"(2005)(短編集) ☆スコッティ・シリーズ 1."KILL ME AGAIN"(1996) 『キル・ミー・アゲイン』三川基好訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 2."COME BACK DEAD"(1997) 『輝ける日々へ』三川基好訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 3."RAISE THE DEVIL"(2000) 4."IN A TEAPOT"(2005)(短篇)                   ● "IN A TEAPOT" by Terence Faherty Crum Creek Press/2005.09/ISBN: 9781932325041 《調査と結婚準備に大忙しのスコッティ》   「じゃあ、殺人は全く起こらないのか? そりゃあ、残念」こんなパディのことばで 始まる "IN A TEAPOT"。パディは、主人公スコッティが警備員を務める〈ハリウッド 警備保障〉の社長である。パディのこのことばは、スコッティからシェークスピアが 書いた『テンペスト』のあらすじを聞いて出てきたものだ。今回の依頼人は、その 『テンペスト』を映画化しようとしているジョエル・ジェフリーズだ。ジェフリーズ は映画に英国人の俳優陣を起用しようとしており、これはと思う俳優たちから色よい 返事をもらえそうというところまできていた。だが、そのときになって、既に契約を 結んでしまったフォレスト・コムズがバーレスク(お色気ありのボードビル・ショー) の人気者のベイカーという女性とつきあっているという話を親しいコラムニストから 聞いた。そんなことが一度でも記事になってしまったら、自分の評判を気にする大物 俳優たちとの契約が結べなくなってしまう。しかし、コムズとは既に契約書を取り交 わしてしまっている。だから、ふたりを別れさせるか、せめて撮影が始まるまでは噂 をもみ消しておいてほしい、というのがジェフリーズの依頼の内容だった。けれども、 コムズもベイカーも別れることは拒否したうえ、殺人まで起きてしまい……。  1作目の『キル・ミー・アゲイン』で出会い、2作目の『輝ける日々へ』(邦訳の 出版順は逆になっている)では既に結婚して子供までいるスコッティとエラ夫妻。本 作は、その2作のあいだの話で、結婚式を2日後に控えていたときに依頼が持ち込ま れたため、スコッティは調査を進めながら結婚式の準備もしなければならず大忙しだ。  社長のパディ夫妻は元ボードビリアンで、スコッティも元は映画に出ていたし、エ ラはスコッティと出会ったとき、映画会社の広報担当だった。そんな4人は映画業界 の内実に詳しいため、その知識も調査に大いに役立っている。  本作はハードカバーで120ページ弱と、前2作の邦訳に比べて分量も少なく、ハー ドボイルド色もちょっぴり薄れている感じが否めないが、『テンペスト』、英国人、 関係する人々の過去といったものが複雑に絡み合っているので、その謎解きは大いに 楽しめるだろう。 (石田浩子) ---------------------------------------------------------------------------- ●ウォルター・モズリイ〜イージー・ローリンズ・シリーズ 年を重ねる探偵  冷戦という言葉が聞かれはじめる1948年のロサンゼルスを舞台にした『ブルー・ド レスの女』で、イージー・ローリンズは失業したばかりの28歳の黒人青年として登場 した。それから作品ごとに時代が移ってイージーは年を重ね、彼を取り巻く環境も変 化していく。  日本での紹介はシリーズ5作目の『イエロー・ドッグ・ブルース』でとまったが、 アメリカでは2005年に9作目の "CINNNAMON KISS" が発表されている。時は1967年。 サマー・オブ・ラブと呼ばれヒッピー・ムーブメントが最高潮に達した年で、イージ ーは47歳、少しばかりの不動産を持ち、公立高校の用務担当の管理職に納まっている。  その年に起きた出来事と絡み合いながら物語が進むわけではないし、声高に人権問 題を問うシリーズでもない。しかしその時々の時代の雰囲気、人種差別への怒りは読 む側にしっかりと伝わってくる。シリーズは、1960年代に入ると年月の流れが緩やか になる。この頃から公民権運動が盛んになり、黒人を取り巻く環境が変化していくこ とと無縁ではないだろう。1997年に発表された番外編ともいえる6作目 "GONE FISHIN'" のあと、5年後の2002年にようやく発表された7作目、1964年が舞台となる "BAD BOY BRAWLY BROWN" では、より過激な方法で黒人の地位を向上させようとするマ ルコムに近い考えのグループが、物語の中心に登場する。  身寄りのない子どもを引き取ってごく普通の家庭を営む努力をしたり、安定した生 活のために堅実な仕事に就いたりと、孤高に生きるイメージの強い、典型的なハード ボイルド探偵とは少し違うかもしれない。しかし現実的で人間くさいところが、イー ジー・ローリンズの魅力でもある。それに彼の相棒で、暴力も殺人もいとわないマウ スも捨てがたいキャラクターだ。5作目の最後で生死もわからずに行方不明となった マウス。彼のその後を知りたいと思う人も多いだろう。作者のウォルター・モズリイ も悩んだのかもしれない。8作目の "Little Scarlet" でようやくその消息が分かる。 ではマウスはどうなったのか?  それはいつかの日にか翻訳が再開されるまで、楽しみに待つのもいいかもしれない。                                (かげやまみほ) イージー・ローリング・シリーズ ☆長篇 1."DEVIL IN A BLUE DRESS" (1990) 『ブルー・ドレスの女』坂本憲一訳/ハヤカワ・ミステリ/ハヤカワ・ミステリ文庫 2."A RED DEATH" (1991) 『赤い罠』坂本憲一訳/ハヤカワ・ノヴェルズ/ハヤカワ・ミステリ文庫 3."WHITE BUTTERFLY" (1992) 『ホワイト・バタフライ』坂本憲一訳/ハヤカワ・ノヴェルズ 4."BLACK BETTY" (1994) 『ブラック・ベティ』坂本憲一訳/ハヤカワ・ノヴェルズ 5."A LITTLE YELLOW DOG" (1996) 『イエロードッグ・ブルース』 坂本憲一訳 ハヤカワ・ノヴェルズ 6."GONE FISHIN'" (1997) 7."BAD BOY BRAWLY DROWN" (2002) 8."LITTLE SCARLET" (2004) 9."CINNAMON KISS" (2005) ☆短篇集 Six Easy Pieces : Easy Rawlins Stories (2003) (短篇集) ○ ---------------------------------------------------------------------------- ●ジェイムズ・サリス〜ルー・グリフィン・シリーズ『コオロギの眼』  ジェイムズ・サリスは、詩人、批評家、音楽家、翻訳家、脚本家など多くの顔をも つ多才な作家である。そんなサリスの人気シリーズ、ルー・グリフィン・シリーズ全 6巻中の第4作が、1998年のアンソニー賞にノミネートされた『コオロギの眼』だ。  前作で探偵だった黒人のルーは、大学で文学を教えるようになっており、自分でも 小説を書いていた。ある日、ルーのサイン入りの本を所持していた身元のわからない 若い男が病院に担ぎ込まれたと知らせが入る。それは行方不明になっている息子にあ げた本だった。ルーは病院に駆けつけたが、幸か不幸か、路上生活者らしいその若者 は息子ではなかった。だが、驚いたことに若者は、ルー・グリフィンと名乗った。  また同じころ、大学の学生に依頼され、その弟の行方を追っていた。そして私生活 では、今は亡き元恋人ラ・ヴァーンを恋しく思い出しながらも、新しくできた恋人デ ボラの存在にささやかな希望を見出しつつあった。そんなとき、親友の刑事ドン・ウ ォルシュとその息子のあいだに起きた不幸を目の当たりにして、ついに、自分の息子 を探し出す決意を固める。教師を辞め、路上生活者に身をやつし、病院から姿を消し てしまった、ルーの名を名乗った若者の行方を追うが……。  一種独特の雰囲気をもつハードボイルドだ。ルーはきっちりと探偵としての役目は 果たしているのに、自分は探偵だとかヒーローだとかいう意識はほとんどなく、ひょ うひょうとしてつかみどころがない。だが、何といっても特徴的なのは、場面が脈絡 もなくころころ変わる点だ。現在の描写をしていたかと思えば、いつのまにか、主人 公の書く小説の内容になっていたり、過去の回想をしていたかと思えば、なぜか、過 去から現在を振り返っていたりと、最初は読んでいてかなり混乱した。だが、慣れて くると、それがだんだん心地よくなってくるから不思議だ。  ミステリーというよりは文学作品に近い雰囲気を漂わせながら、登場人物たちの人 生の悲哀を主人公の目を通して描いていく。この作品が前作より好きなのは、家族愛 や友情が芯のところにあったからかも知れない。前作から続けて読めば、最後の場面 でグッとくること請け合いである。                                 (矢野真弓) ルー・グリフィン・シリーズ 1."THE LONG-LEGGED FLY" (1992) 2."MOTH" (1993) 3."BLACK HORNET" (1994) 『黒いスズメバチ』鈴木恵訳/ミステリアス・プレス文庫 4."EYE OF THE CRICKET" (1997) 『コオロギの眼』鈴木恵訳/ミステリアス・プレス文庫 5."BLUEBOTTLE" (1998) 6."GHOST OF A FLEE'" (2001) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■未訳原書レビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "HEAVENLY DETOUR" by Joanne Meyer Kensington Publishing Corp./2003.01/ISBN: 9780758202604 《殺人犯を見つけ出すのは、なんと殺された本人!》  すばらしい夏の夜、アニー・ダウドはプールに突き落とされて死亡した。アニーが 勤める不動産会社の経営者が所有する、ニューヨーク州郊外の大邸宅で開かれたパー ティでの出来事だった。殺されたことでいちばん驚いたのは、他でもないアニー本人。 そこで自ら、こんな仕打ちをした犯人探しに乗り出した。なぜならアニーは、ゴース トとしてまだこの世に留まっていたから。  こんなとっぴな設定で展開する話だが、読んでいるときには探偵役がゴーストだと いう非現実的な感じはまったくない。アニーと会話できるのは、実際に事件を担当し ている刑事のシャーリーンだけ。一時に別々の場所には存在できないし、自由にあち こち移動できないので、誰かと一緒にタクシーに乗り込むしかない。ゴーストとはい え、万能ではないのだ。  事件の鍵は「動機にある」ということで、アニーを殺したいほどの動機を持ってい た人物を突き止めようと、シャーリーンやアニーの元夫は殺人現場に居合わせた人た ちに話を聞いていく。身近な人に殺されたとは思いたくないアニーだったが、よき仕 事仲間でありよき友人だと思っていた人たちには、じつはアニーの知らなかった秘密 があり……。  殺人事件は起きるが、物語を通して雰囲気はどこかほんわかしていて、これぞコー ジー・ミステリという話になっている。娘を失って嘆くアニーの母親だが、最後には 彼女にもハッピーエンドがやってくる。それを見届けてからようやく「あの世」に旅 立っていくアニーは、とても心優しい女性だ。                               (吉野山 早苗) ◇アマゾン・ジャパンで本をお買い求めの場合は「BOOKS WHODUNIT」へ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0758202601/whodunithonny-22/ref=nosim ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■スタンダードな1冊 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『ブルー・ベル』"BLUE BELLE" アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫/1995.05発行 966円(税込) ISBN: 9784150796037 《友人のため殺人鬼と対決したバークに、哀しい結末が待っていた》  ハードボイルドの代名詞ともいえる『長いお別れ』が、村上春樹による訳で『ロン グ・グッドバイ』としてあらためて注目を浴び、「いまさら、ハードボイルドでもな いだろう」といった雰囲気に風穴をあけた今、ほかの作家の作品も読んでみるのに、 いい機会ではないだろうか。  主人公はニューヨークのアンダーグラウンドで活動する、前科27犯のアウトロー探 偵のバーク。今回は、ストリッパーのベルを通じて仕事の依頼を受ける。年の若い売 春婦だけを狙って連れ去り、ひどいやり方で殺してしまう〈幽霊ヴァン〉を始末して ほしいというのだ。捜索を始めたバークは犯人のアジトに乗り込むが、その結果、友 人に危害が及んでしまった。そこで自らの手で犯人を殺し、決着をつける決心をした。 しかしその結末は、悲劇となってしまう。  捜索の過程でバークはベルと心を通わせていくが、ベルには恐ろしい過去があるこ とがわかる。このエピソードで著者のアンドリュー・ヴァクスは、〈バーク・シリー ズ〉の1作目から一貫して作品のテーマとしている「幼児虐待」の悲惨さを訴えてい る。ヴァクスは青少年の問題と幼児虐待を専門に扱う、現役の弁護士でもある。  エピソードも濃密なものが多いが、脇を固めるキャラクターたちも個性豊かだ。同 居している犬のパンジィ、バークが頭を上げられない中華レストランのオーナーのマ マ、刑務所で知り合った、どこか哲学者然としているプロフ、〈007シリーズ〉で いえばQの役割を担うモグラ、アウトローの世界の事情に通じている男娼のミシェル など、それぞれがそれぞれの道を生きているが、バークのために一肌脱ぐことをいと わない心優しき面々。さらにNY市警の刑事マゴーワンは、バークがことあるごとに 窮状から助け出す少年・少女たちをきちん保護してくれる。こういうシーンにもまた、 ヴァクスの「子供たちを救いたい」という意思が見て取れる。 『ブルー・ベル』は1991年度の『このミステリーがすごい!』で、『ブラック・ダリ ア』や『ミザリー』を抑えて、2位に選ばれている(1位は『薔薇の名前』)。その 後もシリーズは長く続いていて、本国アメリカでは現在16作目まで出版され、日本で は12作目の『グッド・パンジィ』"DEAD AND GONE" まで翻訳されている。                               (吉野山 早苗) ◇著者のサイトはこちら http://www.vachss.com/ ◇アマゾン・ジャパンで本をお買い求めの場合は「BOOKS WHODUNIT」へ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150796033/whodunithonny-22/ref=nosim ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■注目の邦訳新刊レビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『カルーソーという悲劇』 "CARUSO SINGT NICHT MEHR"  アンネ・シャプレ/平井吉夫訳  創元推理文庫/2007.05.31発行 960円(税別)  ISBN: 9784488234027 《寒村で起こった事件に潜む闇――ドイツ・ミステリ界の女王、登場!》  ドイツ、山あいの小村、クライン・ローダ。ジャーナリストだったパウル・ブレー マーは、大都会フランクフルトを離れ、5年前、この村に移り住んだ。一見のどかな この村では、残忍な手口の馬殺しと放火が頻発していた。ある日、アンネ・ブーラウ の農場で、アンネの夫の遺体が食肉用冷蔵室につり下げられているのが発見され、夫 との不仲がうわさされていたアンネに容疑がかけられる。捜査に当たるのは、妻との 仲が冷え切っていることに悩むグレゴール・コジンスキー警部。自分と同じく都会か らの移住者であるアンネにひそかに思いを寄せていたパウルは、親友である女性検事 カレン・シュタルクに協力を求める。〈神に見はなされた寒村〉クライン・ローダで 起こった事件を通して、人の心の闇と同時に、ドイツの暗い過去が浮き彫りにされて いく。  パウル・ブレーマー、カレン・シュタルク、グレゴール・コジンスキーを交互に主 人公とするシリーズの第1作。本シリーズの第3作、第5作はドイツ・ミステリ大賞 を受賞しており、精緻で重厚な作風はいかにもドイツらしさを感じさせる。ミステリ としては弱いところもあるが、これまで注目されることのなかったドイツ・ミステリ の底力を見せてくれる。デビュー作である本作を含めて著者の作品は既に8作上梓さ れており、そのなかで本シリーズは5作出されている。引き続いての翻訳出版を心待 ちにしている。                                                                (中島由美) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/448823402X/whodunithonny-22/ref=nosim ______________________________________                                   ΛΛ οοΟ○οο。。。黒猫フーダの散歩道。。。οοΟ○οο。。。   ミ・.・ミ                                   (m m)/γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 《村上春樹の『ロング・グッドバイ』を読んで辞書をひく》  わたしは村上春樹のファンでも、フィリップ・マーロウのファンでもない。『ロン グ・グッドバイ』を読もうと思ったのは、世界的に知られる小説家が、ハードボイル ドの古典をどう調理したのかに興味をひかれたからだ。 "THE LONG GOODBYE" の世界を忠実に日本語に置きかえようと試みた、という印象を うけた。村上春樹とチャンドラーのコラボに何かを期待した人は、あてがはずれたか もしれない。ちょっと生硬いと感じるところもあったが、わざとなのだろうし、それ が味になっている。言葉が平易なので読みやすい。スペイン語のせりふが、普通の翻 訳小説みたいに日本語訳にカタカナ読みのルビをふってくれているほうが、もっと読 みやすかったのだけれど。  ただし平易な言葉の中に、なぜそれを選んだのかと気になる(たぶんこだわりの) 言葉も時々でてきて、話の流れがさえぎられると感じることもあった。たとえば132 ページの「男性看護人」。男でも女でも使えるはずの「看護師」ではだめだったのだ ろうか? 328ページの「嬰児」。本文中ではなくセリフの中で使うには、堅すぎる ことはないのだろうか?  そして読み終わった後までもひっかかったのが、「はんちく」と「さんぴん」だっ た。どちらもはじめて目にする言葉で、意味も分からないので広辞苑をひいた。「は んちく」はテリー・レノックスの軍隊時代の仲間でギャングのメンディー・メネンデ スが、フィリップ・マーロウに対して何度もくり返して使った言葉。『広辞苑』によ ると「中途はんぱ」。人間に対して使うときは「半人前」という意味になるのだろう か? NHK衛星放送の番組『週間ブックレビュー』で、レビュアーの1人の逢坂剛 が言葉の選び方を話題にし、今の若い人は知らないだろうと、「はんちく」をあげて いた。「さんぴん」は 333ページに出てくる。メネンデスのことを指して刑事が使っ た言葉。時代劇などにはたまに出てくる言葉らしい。『広辞苑』によると、三一侍 (さんぴんざむらい)、さんぴん奴の略で、「身分の軽い侍・若党を卑しめていう語」 とある。「若党」の意味が分からなくて、調べてみる。「若い武士」「武士の従者。 近世には武家奉公人の最上位で、先頭に参加したが馬に乗る資格のない軽輩を指す」。 今度は「軽輩」が分からない。調べてみると「身分の低い者」。なので、ここでは 「ギャング風情」といった意味合いで使われているのかもしれない。  いろいろな言葉の中から「はんちく」や「さんぴん」をあえて選んだのには、わけ があるはず。なぜ選んだのか、チャンスがあればぜひ質問してみたい。                               (かげやまみほ) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152088001/whodunithonny-22/ref=nosim ______________________________________                                   ΛΛ οοΟ○οο。。。黒猫フーダの映画館。。。οοΟ○οο。。。   ミ・.・ミ                                   (m m)/γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 《友と己を救うため、探偵は戦う》  異形のハードボイルド映画である。1947年のハリウッド、かつては腕利きで知られ た、現在は酔いどれで流行らない私立探偵ヴァリアントはある映画スターの妻ジェシ カの浮気調査を依頼された。彼は証拠写真を手に入れ、調査は成功に終わった。  だがその後、事態は思わぬ方向へと動いた。ジェシカの浮気相手であるアニメ会社 の社長が殺され、その嫌疑がジェシカの夫へと向けられたのだ。無罪を主張するジェ シカの夫に無理やり巻き込まれ、ヴァリアントは再び調査へと乗り出す。一見平凡な 痴情のもつれによる殺人と見えたこの事件には、実はある土地の利権問題が絡んでい た。  平々凡々な私立探偵物の映画のあらすじである。それにも関わらず、冒頭で異形の ハードボイルドと書いたのは、殺人事件の容疑者とされる映画スターも、そして美貌 の妻ジェシカも人間ではないからである。ジェシカはアニメーションの美女だ。ジェ シカの夫である映画スターにいたっては、アニメーションの兎であるロジャー・ラビ ットである。私立探偵ヴァリアントの世界は、実在の人間とアニメーションのキャラ クターとが共存する世界だったのだ。利権問題が絡むある土地とは、アニメーション のキャラクターばかりが住むトゥーン・タウンである。  ロバート・ゼメキス監督『ロジャー・ラビット』は、このようなパラレルワール風 の舞台で、この設定でなければ活きない犯人を使っていることが素晴らしい。また弟 をアニメのキャラクターに殺されたことから、アニメの人物達全般に憎しみを抱き、 なおかつ呑んだくれとなっていた彼が、底抜けに人がいいロジャー・ラビットとの友 情を育むことによって、アニメの人物達への信頼とともに、本来の名探偵ぶりを取り 戻していく過程も正統派のハードボイルド小説を思わせる。また西澤保彦や山口雅也 などの特殊な世界で起こった事件をフェアな論理で解決する一連の本格ミステリがお 好きな方にもお奨めしたい。  登場人物の大半がアニメのキャラクターで、特にディズニーのキャラクターが多い ので、そちらのファンも楽しめるはずである。                                 (柳田有里) ◇アマゾン・ジャパンでDVDをお買い求めの場合は「BOOKS WHODUNIT」へ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0009QX4QW/whodunithonny-22/ref=nosim ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■速報 ―― CWA賞受賞作発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  英国推理作家協会(Crime Writers' Association=CWA)が主催する、CWA賞の受 賞作が発表された。 ▼ダンカン・ローリー・ダガー  受賞作  "THE BROKEN SHORE"       Peter Temple  ノミネート作品  "FIELDS OF GRIEF"       ジャイルズ・ブラント  "PEGASUS DESCENDING"      ジェイムズ・リー・バーク  "SHARP OBJECTS"        Gillian Flynn  "BROTHER GRIMM"        クレイグ・ラッセル  "SOVEREIGN"          C. J. Sansom ▼ダンカン・ローリー・インターナショナル・ダガー  受賞作  "WASH THIS BLOOD CLEAN FROM MY HAND"   フレッド・ヴァルガス  ノミネート作品  "SHAME"                  カーリン・アルヴテーゲン  "THE EXCEPTION"              Christian Jungersen  『テロル』                ヤスミナ・カドラ  "THE SAVAGE ALTAR"            Asa Larsson  "THE REDBREAST"              Jo Nesbo ▼ニュー・ブラッド・ダガー  受賞作  "SHARP OBJECTS"           Gillian Flynn  ノミネート作品  "OBJECT OF DESIRE"          C. J. Emerson  "THE WRONG KIND OF BLOOD"      Declan Hughes  "BORDERLANDS"            Brian Mcgilloway  "LAST DAYS OF NEWGATE"        Andrew Pepper  "DEAD OF SUMMER"           Camilla Way ▼イアン・フレミング・スチール・ダガー  受賞作  "SHARP OBJECTS"           Gillian Flynn  ノミネート作品  "THE FAITHFUL SPY"          Alex Berenson  "THE WOODS"             ハーラン・コーベン  "CITY OF LIES"            R. J. Ellory  "THE INTRUDERS"           マイケル・マーシャル  "THE NIGHT FERRY"          マイケル・ロボサム  "TRIPTYCH"              Kari Slaughter  詳しくは、英国推理作家協会の公式サイトをごらんいただきたい。  http://www.thecwa.co.uk/                               (かげやまみほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■速報 ―― マカヴィティ賞ノミネート作品発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 〈ミステリー・リーダーズ・インターナショナル〉が選ぶマカヴィティ賞のノミネー ト作品が発表になった。 ▼最優秀長篇賞  "CHRISTINE FALLS"             Benjamin Black  "THE JANISSARY TREE"           Jason Goodwin  "THE DEAD HOUR"              デニーズ・ミーナ  "THE VIRGIN OF SMALL PLAINS"       ナンシー・ピカード  "PIECE OF MY HEART"            ピーター・ロビンスン  "ALL MORTAL FLESH"            Julia Spencer-Fleming ▼最優秀処女長篇賞  "CONSIGNED TO DEATHL"              Jane K. Cleland  "47 RULES OF HIGHLY EFFECTIVE BANK ROBBERS"   Troy Cook  『キングの死』                  ジョン・ハート  "A FIELD OF DARKNESS"              Cornelia Read  "Mr. CLARINET"                  Nick Stone ▼最優秀短篇賞  "Provenance"          ロバート・バーナード ("EQMM, Jul 2006")  "Disturbance in the Field"   Roberta Isleib             (in "SEASMOKE: CRIME STORIES BY NEW ENGLAND WRITERS")  "Til Death Do Us Part"     Tim Maleeny            (in "MWA PRESENTS DEATH DO US PART:                 NEW STORIES ABOUT LOVE, LUST, AND MURDER") ▼スー・フェイダー歴史ミステリ賞  "THE LIGHTNING RULE"          Brett Ellen Block  "OH DANNY BOY"             リース・ボウエン  "THE BEE'S KISS"            Barbara Cleverly  "DARK ASSASSIN"            アン・ペリー  "MESSENGER OF TRUTH"          ジャクリーン・ウィンスピア  詳しくは、ミステリー・リーダーズ・インターナショナルの公式サイトをごらんい ただきたい。  http://www.mysteryreaders.org/macavity.html                               (かげやまみほ) =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=             ☆★「月刊児童文学翻訳」☆★  インタビュー、最新情報、レビューなど、児童文学翻訳に関する記事が満載の情報 誌。詳細&購読申し込みはこちらから(↓)。                   http://www.yamaneko.org/mgzn/index.htm 毎月15日配信(1月と8月は休刊)。申し込み手続きは前日までにおすませください。 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ---------------------------------------------------------------------------- ■編集後記■  エアコンを使わないわが家は夏はうだるような暑さです。寝るときは氷枕、朝4時 に起きて涼しい時間に仕事、昼間は「熱さまやわらかアイス枕おでこ用」をあてて、 夏を乗り切ろうと思っています。                    (清) ****************************************************************************  海外ミステリ通信 第63号 2007年7月号  発 行:フーダニット翻訳倶楽部  発行人:うさぎ堂(フーダニット翻訳倶楽部 会長)  編集人:清野 泉  企 画:石田浩子、板村英樹、かげやまみほ、佐藤枝美子、中島由美、森まり、      柳田有里、矢野真弓、山田亜樹子、吉野山早苗  協 力:出版翻訳ネットワーク 小野仙内      西洋冒険譚翻訳倶楽部  本メルマガへのご意見・ご感想、及びフーダニット翻訳倶楽部の連絡先   e-mail:mwmag@litrans.net   掲示板:http://www.litrans21.net/bbs/75/wforum.cgi  配信申し込み・解除/バックナンバー:   http://www.litrans.net/whodunit/mag/  ■無断複製・転載を固く禁じます。(C) 2007 Whodunit Honyaku Club ****************************************************************************