■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■              月刊 海外ミステリ通信           第29号 2004年1月号(毎月15日配信) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★今月号の内容★ 〈新春特別企画〉  2003年フーダニット・ベスト10発表! 〈座談会〉     フーダニット・ベスト10で2003年のミステリを振り返る 〈注目の邦訳新刊〉 『凍土の牙』『スペインの貴婦人』 (今月は特別編成でお届けします) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■新春特別企画 ―― 2003年フーダニット・ベスト10発表! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  2003年の年末、恒例の〈フーダニット翻訳倶楽部年間ベスト・ミステリ〉の投票が 行われました。特徴としては、会員のあいだで人気の高い作家の作品が根強い支持を 得ているいっぽう、5人の新人作家がランクインしている点が当倶楽部らしい結果と なっています。このあとの座談会の模様と併せてお楽しみください。 ※投票規定  2002年11月1日〜2003年10月31日に刊行された新刊ミステリ作品が対象(文庫化は  除く)。会員は10作品、メルマガ読者は3作品まで投票可能。会員は1位=10点〜  10位=1点、メルマガ読者は1位3点〜3位1点に換算して集計。 ※投票期間=2003年12月1日〜12月15日 ※投票者数=18人 1.『ボストン、沈黙の街』 79点   ウィリアム・ランデイ/東野さやか訳/ハヤカワ・ミステリ文庫   ◆田舎町の若き警察署長ベンは初めての殺人事件で都会の警官のすさんだ闇を見   た。正義とは何だ? デビュー作とは思えない重厚な1冊。 2.『天使と悪魔』 48点   ダン・ブラウン/越前敏弥訳/角川書店   ◆スイスの科学研究所から盗まれた反物質が、安全装置をはずした状態でヴァチ   カンに持ち込まれた! 科学と宗教の対立を描くタイムリミット・サスペンス。 3.『ビッグ・レッド・テキーラ』 40点   リック・リオーダン/伏見威蕃訳/SHOGAKUKAN MYSTERY   ◆トレスは12年ぶりに故郷に戻る。昔の恋人を救い出し、未解決の父の死の真相   を解き明かして青春時代にけりをつけたい。「トレス・ナヴァー」シリーズ誕生。 4.『文学刑事サーズデイ・ネクスト1 ジェイン・エアを探せ!』 30点   ジャスパー・フォード著/田村源二訳/ソニー・マガジンズ   ◆サーズデイ・ネクストは文学刑事。物語の中に入りこんでストーリーを改変し   ようとする凶悪犯を追う。英米でもベストセラーになっているシリーズ第1弾。 5.『テキサスの懲りない面々』 29点   ジョー・R・ランズデール/鎌田三平訳/角川文庫   ◆お金と休暇を手に入れてカリブ海クルーズに出かけたハップとレナードだが、   行く手にはやはりトラブルが待ち構えていた。今回はハップがかっこいい! 6.『昏き目の暗殺者』 28点   マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子訳/早川書房   ◆転落事故死した妹。彼女が遺したSF小説の謎。半世紀たった今、姉アイリス   が追想とともに語り始めた真実とは――。ブッカー賞、ハメット賞受賞作。 6.『チェイシング・リリー』 28点   マイクル・コナリー/古沢嘉通・三角和代訳/早川書房   ◆ナノテク研究者ピアスは間違い電話をきっかけに恐ろしい陰謀に巻き込まれた。   最先端の研究開発にかける男を描いたコナリー異色の作品。 8.『スモールボーン氏は不在』 26点   マイケル・ギルバート/浅羽莢子訳/SHOGAKUKAN MYSTERY   ◆ロンドンの老舗法律事務所の書類保管箱から死体が見つかった! 『捕虜収容   所の死』の著者による、英国流ユーモアあふれる黄金期本格ミステリ。 8.『半身』 26点   サラ・ウォーターズ/中村有希訳/創元推理文庫   ◆19世紀の倫敦。裕福な家庭で育った令嬢が監獄で出会ったその女囚は霊媒だっ   た。それぞれの「自由」を求めるふたりが心を通わせていく心理劇。 10.『サイレント・ゲーム』 21点   リチャード・ノース・パタースン/後藤由季子訳/新潮社   ◆高校時代の親友に殺人の容疑が……。助けを求められ、弁護士のトニーは28年   ぶりに故郷の地を踏む。法廷ミステリという枠を越えた人間ドラマの傑作。 10.『ストレンジ・シティ』 21点   ローラ・リップマン/吉澤康子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫   ◆毎年ポーの墓地に薔薇とコニャックを供える謎の人物。その人物の正体をつき   とめて欲しいという男がテスのもとに現れる。シリーズ6作目。 12.『シティ・オブ・ボーンズ』 20点   マイクル・コナリー/古沢嘉通訳/早川書房 12.『探偵術教えます』 20点   パーシヴァル・ワイルド/巴妙子訳/晶文社 14.『石の猿』 19点   ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳/文藝春秋 15.『No.1レディーズ探偵社、本日開業』 18点   アレグザンダー・マコール・スミス/小林浩子訳/ヴィレッジブックス 16.『魔女は夜ささやく』 17点   ロバート・R・マキャモン/二宮磬訳/文藝春秋 17.『地獄じゃどいつもタバコを喫う』 16点   ジョン・リドリー/山田蘭訳/角川文庫 18.『悪鬼(トロール)の檻』 14点   モー・ヘイダー/小林宏明訳/ハルキ文庫 18.『幻影』 14点   ビル・プロンジーニ/木村二郎訳/講談社文庫 18.『HOOT ホー』 14点   カール・ハイアセン/千葉茂樹訳/理論社 ※ 投票結果および選評はこちらで公開しています。↓ http://www.litrans.net/whodunit/best/best03/index.htm ============================================================================  メルマガ読者部門・プレゼント当選者発表! ============================================================================  厳正なる抽選の結果、蒼子さん、yuさん、やすじろうさんが当選されました。3名 のかたには、アマゾン・ジャパンのギフト券1000円分をお送りします。おめでとうご ざいました! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■座談会 ―― フーダニット・ベスト10で2003年のミステリを振り返る ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ベスト10の集計が終わった2003年12月某日、会員6名が集結し、その結果について 語り合った。2時間の予定が気がつけば3時間にも及び、勢い本音(?)も飛び出し た座談会のようすを、できるだけライブなかたちでお届けします。 ●まずはリップマンとパタースン 蘭)それでは10位のローラ・リップマン『ストレンジ・シティ』から行きましょう。 姫)ポーへの愛情を感じました。ボルチモアらしくてよかったです。ラストのしみじ みさも。 浅葱)ボルチモアへ行きたくなりましたね。 若菜)どんなお話なんですか? 姫)テスが毎年ポーの墓参りに来る人の捜査を頼まれます。 浅葱)そんなん無粋だから、テスとしてはいやだったんだけど……でもまあ、調べに かかってみたら、殺人があって。 朋)いま、あとがき読んでるんですが、おもしろそうですね。ポーにまつわる謎がか らんでくると書いてあるけど、蘊蓄系なんでしょうか? 姫)蘊蓄じゃないですね。 朋)裏表紙に「文学的興趣に満ちた」って書いてあるから。 蘭)ポー以外にも、例えばスコット・フィッツジェラルド行きつけのバーとかも出て くるんです。ボルチモア観光案内のような雰囲気がありましたね。 朋)過去の作品とくらべてどうですか? 蘭)これまではどちらかと言えば苦い結末の作品が多かったけど、これはしっとり心 が暖まる感じがしました。 姫)テスが落ち着いてきたような気がします。 蘭)それでは次へ行きます。同じく10位のリチャード・ノース・パタースンの『サイ レント・ゲーム』です。 鈴音)パタースン、好きッス。 朋)これはぜひ読んでいただきたいです。 鈴音)主人公の学生時代の友人に殺人容疑がかかる話。 朋)その主人公ってのが、成功した弁護士なんだけど、彼もハイスクール時代に殺人 の容疑をかけられたことがあって、そのとき信じてくれたのがその、学生時代の友人 だった。で、友人の弁護のために、28年ぶりに故郷に帰るんです。リーガルものでも あり、大河ドラマでもありって感じかな。 浅葱)シリーズものでしょうか。 朋)『サイレント・スクリーン』のスピンオフっていうのかな。 蘭)刊行順に読まなくても大丈夫ですか? 朋)『サイレント・ゲーム』に関しては単独で読んで大丈夫。 蘭)今年のフーダ・ベスト10のなかでリーガルものはこれだけですね。 鈴音)リーガルはやっぱパタースンでしょー。もと弁護士ッスからね。 朋)『サイレント・ゲーム』のほか、『罪の段階』『子供の眼』『最後の審判』はマ ストですね。 鈴音)そーそー、どれもよかったです。 ●あの話題作と再評価の機運高まるギルバートの作品が同点8位に 蘭)次は8位のサラ・ウォーターズ『半身』です。 朋)週刊文春でも1位なんだね。 蘭)このミス、文春ともに1位です。インポケットは3位。 若菜)父親を亡くして消沈している令嬢がいまして、家族から気晴らしに女性刑務所 の慰問に行ったらと言われて、行くのです。それが主人公。 浅葱)えらい気晴らしやなー。 姫)ヴィクトリア朝時代のお嬢様ですから。 若菜)で囚人のなかに殺人で服役している霊媒者がいるのです。その霊媒者に惹かれ ていって交流がはじまるわけです。その交流の話と同時に、霊媒者の過去と殺人を犯 した話が語られるのです。 鈴音)この作品がよそのベストテンで1位になる理由ってなんだと思います? 姫)最後のびっくり、かな。かなりびっくりしました。 鈴音)へえ〜、霊媒がからんで最後のびっくりってなんだろう。 蘭)うーん、雰囲気は独特ですよね。描写力もすごいと思います。でもあの最後は… …。 若菜)わたしはあの最後が納得できません。 朋)うんと誉める人と、あまり評価しない人と、けっこう好き嫌いが分かれる本みた いだね。 姫)あれはミステリとは違うと思いました。 若菜)ミステリじゃないですよ、文学作品としてなら許せるけど。 浅葱)では、オカルトでしょうか。 姫)オカルト……じゃないよ、一応。これ以上言うとネタバレに……。 鈴音)じゃあ、なんで1位なんだろう? 素朴な疑問。『朗読者』みたいなモン? 「ミステリじゃないけど文学作品なら許せるかも」 姫)じゃあ『半身』と一緒ですね。 鈴音)なっとく。 姫)あ、でもわたし『半身』の雰囲気は好きでした。ヴィクトリア朝だし……。 若菜)雰囲気はすごくいいですよねえ。 蘭)ただ最後がねぇ……。 若菜)また来年も翻訳が出るらしいですが、同じような手法を使ったら絶対に許せな い。 朋)いやー、やっぱり読んでみないといかんな。 蘭)なかなか盛り上がってますが、次に行きましょうか。同点でマイケル・ギルバー トの『スモールボーン氏は不在』。 若菜)英国の法律事務所が舞台。共同経営者の一人が亡くなって、仕事の引き継ぎが 行われる。で、どうしてもつかまらない関係者がいたんだけど、事務所の書類を入れ る引き出しのなかで死んでいた。 浅葱)でっかい引き出し! 若菜)おりたたまれて入っていたんですよ。 朋)表紙がすごいですよねえ、引き出しから顔出していて。 若菜)英国風のちょっとひねたドタバタ、ユーモア、本格、ミステリです。 朋)『捕虜収容所の死』はあんまり好みでなかったのだけど、こっちは楽しめそうな 予感。 若菜)全く雰囲気は違いますね。『スモールボーン氏』は登場人物多すぎてちょっと 筋がわかりにくいとか言われていますが。 鈴音)『捕虜』も登場人物が多いんでしょう? 若菜)多いですよお。 蘭)『スモールボーン氏』はよそのベスト10には入ってないですね。 若菜)たぶん筋のわかりにくさが原因だと思う。 蘭)ほかはみんな『捕虜』がランクインしているから、そのせいもある? 鈴音)1年に同じ作家を2作出しちゃいかんという例でしょうか。 若菜)雰囲気はぜんぜん違うのですが、『捕虜』のほうに人気が集中したみたいで。 ●6位は同点でベテランのふたり 蘭)次は6位、マーガレット・アトウッドの『昏き目の暗殺者』です。 若菜)お金持ちのおばあさんが過去を回想しているんです。 鈴音)『タイタニック』みたいだ! 若菜)有名作家である妹とその事故死、決して幸せとはいえなかった自らの結婚生活、 義母との確執。 鈴音)ぜんぜん『タイタニック』じゃなかった(笑)。 姫)昼メロみたい(笑)。 若菜)それと現在の自分の様子が交互に語られて、途中に妹が書いた小説「昏き目の 暗殺者」が挿入されるのです。 鈴音)クックみたいですね。 若菜)でこれがすべて繋がりがあるんですよ。全く別物だと思っていた話が、最後に つながって……。 姫)うーん、多重構造なのか? 鈴音)なるほど、そうであったのかー! という晴れ晴れとした気持ちに? 浅葱)語りの妙というか。そうであったのかー!なんだけど。 若菜)謎解きとかはないんです。主人公の老女がすべて語ってくれて、最後には真相 を明かしてくれる。 浅葱)ミステリ読みとしてはそのへんが少し物足りないかもしれないという評が。 鈴音)でも、広げた風呂敷が最後にうまく収束するという満足感は得られそう。 若菜)風呂敷を広げるというより、過去と現在と小説がむすびつくというか。 浅葱)そうそう、小説がむすびつくのがすごいの。 若菜)よみはじめるとけっこうあっという間でした。 蘭)ところでアトウッドってアメリカ人? 英国人? 浅葱)カナダ。 姫)ハメット賞を受賞してましたね。 蘭)では同じく6位のマイクル・コナリー『チェイシング・リリー』に行きましょう。 朋)コナリーは今年3作も翻訳が出てしまって、かなり損しましたね。 若菜)わたし、初コナリーだったんですけど、読みやすかったです。メリハリがあっ てうまいなあと。 姫)今年のコナリーものでは、これだけ読んでないです。 朋)わたしは実はあまり満足していない……。水準以上の出来ではあるけれど。 浅葱)シリーズのほうが重いんで、印象がぜんぜん違いましたね。 朋)うん、印象はぜんぜん違う。 鈴音)シリーズが好きでコナリーファンの読者にとっては、ちょっと物足りない? 蘭)コナリーだとまたこのあたりでどんでん返しがくるかなと構えちゃうところはあ りますよね。でもこの作品はちょっと拍子抜けしたというか……。 朋)コナリーだと思うと、過剰に期待しちゃうせいかも。 蘭)すんなり終わってしまって。それでもうまいんですけど。 朋)うまいです、うまいです、最高のストーリー・テラーだと思います。でも『シテ ィ・オブ・ボーンズ』にくらべると物足りない。贅沢なファンですよねえ。 若菜)一般受けしますよね、よくできているというか。 浅葱)映画向きっぽかったというか。 若菜)同感です。 鈴音)映画化というとまたイーストウッドか(笑)? 朋)あの主人公をイーストウッドがやったら怒るよ(笑)。 ●5位はおなじみお下劣コンビ、4位には文学刑事が 蘭)5位はジョー・ランズデールの『テキサスの懲りない面々』です。 鈴音)やっぱ年に1冊は読みたいな、ランズデール。 蘭)今年は『ダークライン』も出ましたが、うちでランクインしたのはこの作品だけ ですね。 若菜)ほか読まないで、これだけ読んでも大丈夫でしょうか。 浅葱)シリーズキャラがいいので、順に読んだほうがいいですね。ねたばれはしませ んが。 朋)うん、このシリーズは順に読んだほうがいいっす。 若菜)キャラがいいんですか? 鈴音)「いい」というか、ほかにはないぶっ飛んだキャラです。 朋)でも、ハップはまっとうなんだよね、考え方が。 蘭)レナードも言ってることは変じゃないけど、やや極端というか。 朋)なのに、その二人が組むとなんで話がああなってしまうのか(笑)。 鈴音)ふたりとも、踏む必要のない地雷を踏む傾向があるのでは? 朋)考え方はまっとうなんだけど、行動が極端というか。表現方法もお下劣だし。 鈴音)シモネタとかばんばん出てくるし。 若菜)『ブルース・ブラザーズ』みたいな? 朋)トイレでトイレットペーパーがなくなったら、あたらしいペーパーをつけかえて おけと言うために、放送禁止用語(?)がバシバシ出てくる。 浅葱)「におい」がすると言う人もいた。 姫)やっぱ、読んだほうがよさそうですね。これも来年の課題にしよう。こぶ平師匠 が好きなら、わたしもきっと好きになれるだろう……でも「におう」って……。 朋)あ、「におう」のはランズデールの特徴ですね。『ボトムズ』もにおった。 蘭)え、『ボトムズ』まで(笑)。 朋)それにしても、ハップとレナードのシリーズと、『ボトムズ』の作者が同一人物 とは思えん。 蘭)では4位のジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト1 ジェイン ・エアを探せ!』に行きましょう。 朋)楽しかったですー。よく、こんな話を思いつきますよね。文学刑事だなんて。 若菜)これもミステリじゃないですけどね。 鈴音)とんでもない設定が既成事実になってるところがすごい。『ジェイン・エア』 を読んだのってずいぶん昔で、あれを読んだ直後にこの作品を読んだらもっと楽しめ たと思う。 浅葱)ジェイン・エアの結末が変わってると言われても、どうだっけ、って思い出す のが大変だった。 姫)じゃあ、ジェイン・エアを知らないとおもしろくないとか? 浅葱)知ってるとよりおもしろいです。知らなくても大丈夫なところもすごいかも。 若菜)設定がいいですよねえ、時間警察とか、吸血鬼退治とか、クリミア戦争とか、 ウェールズ独立国とか。 鈴音)有名文学作品のなかへ観光旅行に行けるってのもすごい。わたしだったら、ど の本のなかに入りたいかなー、なんて子供の気持ちに……。 浅葱)シェイクスピアと、ミルトンと、ワーズワースもお忘れなくね〜。 朋)そうそう、ジェイン・エアよりもシェイクスピア系の話がおもしろかった。 姫)英国文学はあまり読んでないのだが……。大丈夫か不安になってきた。 朋)そんな気にしなくても単純に楽しめると思うよ。知っていればもっとおもしろい というだけのことだと思う。 蘭)英国文学オタクはめちゃめちゃ楽しめる。そうでなくても楽しめる作品です。 姫)楽屋落ちみたいなのがあるんですね、きっと。じゃあ、気にせずに読むことにし ようっと。 朋)逆に、これ読んで、出てくる作品を読みたくなるかもね。 鈴音)わたしもジェイン・エアを読み直したくなった。 ●さっそうと現れた期待の新風が2位と3位に 蘭)いよいよ第3位。じゃじゃーん。リック・リオーダンの『ビッグ・レッド・テキ ーラ』です。 鈴音)これは主人公がよかったねー。猫も出てくるし……。 朋)またもテキサスもの。ランズデールのテキサスとはかなり違うけど。 浅葱)イケメン、トレスがとっても素敵! 朋)そうそう、ハードボイルドなのに青春ものっぽくて。 蘭)これがベスト10に入っているのはうちだけですよね。なぜよそでは入らないのだ。 姫)フーダ的? 浅葱)ロバート・ジョンソンの魅力かも。 鈴音)表紙もオシャレなのに。 浅葱)会話もいいよね。 鈴音)シリーズの今後が楽しみ。主人公の成長を見守る母親のキモチ。 朋)母親と言えば、トレスのお母さんもなかなかのキャラですよね。ちょいボヘミア ンで。 蘭)お兄さんのギャレットもいいですよね。 朋)ジミー・バフェットの追っかけをしているお兄さん、いいなー。 蘭)2作目はソフトカバーじゃなくて文庫から出るようですね。文庫のほうが買いや すいかも……。もっと読まれて欲しい。 朋)このミスの隠し玉に2004年春って書いてあるね。 蘭)ではでは次に行っていいでしょうか。第2位はダン・ブラウンの『天使と悪魔』 です。 鈴音)まさに「徹夜本」でしたねー。ここまでエンタテインメントに徹してくれると、 むしろすがすがしくさえある。 若菜)『薔薇の名前』かと思っていたら、ぜんぜん違った。 朋)うーん、単純に楽しめるエンタテインメントだって、さんざん言ってたのに〜。 浅葱)今日から読む予定だったんです。明日の夕食後からにしよう。 姫)お正月に読もう。テレビも見ないし。 鈴音)いいなー、これから読む人がうらやましい。 浅葱)どして? 鈴音)読み終わっちゃったのが残念だから。またあの「ワクワク感」を味わいたいよ ぉ。 朋)読み終わるとすごく賢くなった気がする。そしてローマに行きたくなる。 鈴音)わたしは何年も前に行ったパンテオンの記憶を必死でたぐりました。 若菜)「この話は、どこまで本当なの〜」と思いました。 蘭)本当のこともあり、そうでないこともあり? 鈴音)コンクラーベとかヴァチカンのなかとか本当じゃないの? 蘭)あのへんは本当じゃないでしょうか。作者は実際にヴァチカンへ行ったそうです もんね。 若菜)あの飛行機は本当じゃないですよね、ね。 鈴音)飛行機ってなんだっけ? 朋)ラングドンのお迎えの飛行機。あれはホントだと聞いた気が……。 若菜)え〜、本物なんですかあ、知らなかった……。 鈴音)シリーズ外作品の "DECEPTION POINT" でもヒロインが戦闘機に乗るんだよ。 ちょっとそこまでと思ったら、戦闘機がお迎えにきてる、という。たしかトムキャッ トかなんかだったような。 蘭)そんなお気軽に(笑)。 若菜)わはは、同じパターンだ。 ●1位にはあの新人の作品が! 蘭)では1位に行きまーす。フーダベスト10、2003年度第1位は……ウィリアム・ラ ンデイの『ボストン、沈黙の街』です! 鈴音)これは冬に出して正解だったねー。寒さがことさら伝わってきてよかった。 姫)これも最後はびっくりでしたが……。 若菜)読み終わったら、おそろしくなりました。犯人の人間性が……。 浅葱)びっくりしたのなんの。 鈴音)一瞬、「えっ!?」って思考が止まった。 蘭)あの結末を予想していたかたはいます? 鈴音)してませーん。 姫)ぜんぜん……。 浅葱)いーえ。 若菜)帯にいろいろ書いてあったので、「これかな」「これかな」と思って読んでい たんですけど、わからなかった。 蘭)やっぱりそうですよね。 姫)だって、まさかねぇ……。 若菜)『ジャーロ』の最新号には「この結末は受け入れられない」ってあったなあ。 朋)あたしも受け入れられないです。でも、父子ものとしてはよくできているし、ひ とりの警官の成長記としてもいい。 鈴音)反則ぎりぎりだと思った。ライン踏んでるかも。 姫)難しいところですね。 浅葱)こんなんありかー、と少し怒りました。 蘭)わたしは『半身』のほうが受け入れられませんでしたよ。 鈴音)でもさ、ランデイは語り口や雰囲気がすごくよかったじゃん? だから今後に 期待してるの。 蘭)ではベスト10についてはこんなところで終わりましょうか。次は来年の抱負をお 願いします。 鈴音)今年は意識して日本人作家の本を読んだので、来年はまた翻訳ものをいっぱい 読みたいです。 朋)未訳のおもしろい作家を発掘したい。ユーモア系、ドタバタ系のおもしろい作家 を見つけたいなー。 若菜)来年は英国の現代物を意識的に読んでいきたいです。『世界ミステリ作家事典』 を参考にしながら。 姫)来年は積ん読を減らす予定。おもしろいコージーも探したい。 蘭)来年は今年よりたくさん読みたい。 浅葱)たぶん無理だと思うけど、手持ちの本を読んで片付けたい。でもきっとまた買 っちゃうんだけど。 蘭)それではそろそろおひらきに。来年もおもしろいミステリを読んでわいわい話し たいですね。お疲れさまでした!                              (構成 松本依子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■注目の邦訳新刊レビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『凍土の牙』 "SIBERIAN LIGHT"  ロビン・ホワイト/鎌田三平訳  文春文庫/2003.12.10発行 1038円(税別)  ISBN: 4167661535 《頑固で意地っぱりな男が、巨悪に立ち向かう》  シベリア、イルクーツクにある僻地の町で、外国企業の手配師をしていた若い男が 拷問を加えられたうえ、惨殺された。通報を受けて現場にかけつけた民警2人も殺さ れる。人手不足のため地元の市長ノーヴィクが捜査の指揮をとるが、すぐにイルクー ツクの検察官から捜査を中止するようにと圧力がかかった。共産主義が崩壊してから のロシアには秩序などなく、マフィアと外国企業が地域経済を支配し、行政では不正 や賄賂が横行していて、町はこれ以上悪くはならないという状態まで腐敗しきってい た。殺人事件の捜査がまともに行われるのかどうか大いに疑問だった。  音楽家の両親と同じ道を歩むことができず、自ら選んだ地質学者の職も追われ、共 産党員時代の友人に請われて小さな町の市長になったノーヴィク。妻は数年前に飛行 機事故で死亡し、一人娘はシベリアからも父親からも逃れたくて香港でのホステス職 の面接を受けようとしている。人生の負け組ともいえるノーヴィクだが、いっぱしの 正義感と意地だけは持ち合わせていた。市長の地位を追われるまえに何としても殺人 犯人を捕らえたい、そして法律で裁いて罪を贖わせたい。一途なその思いだけで強力 な圧力や妨害をはねつけて、単身捜査にのりだす。そして少しずつ事件の全容が明ら かになっていくと、そこにはノーヴィクが予想もしなかった巨悪が待ちかまえていた。 愛娘も捕らわれの身となり、娘のことも命をかけて救い出そうと奮闘する。  物語前半部分が事件の謎解きにあてられ、後半では飛行機を使った追跡劇と犯人と の対決が描かれている。犯罪捜査には素人である中年男ノーヴィクと、シベリアに収 容された経験を持ちノーヴィクの精神的支えになる、食えないお抱え運転手チューチ ンとのコンビがいい。淀んだロシア社会で陰惨な事件ばかり起きるが、どんな最悪の 状況でも皮肉なユーモアを忘れない2人のたくましさ、前向きな姿勢が物語の救いに なっている。  本書の帯には「冒険小説ファンの渇を癒す痛快作」とあるが、冒険小説ファンだけ に読ませておくなんてもったいない。ぜひ2004年の読み初めに手にとってほしいミス テリだ。シリーズ第2作も今年刊行予定で、ノーヴィク、チューチンとまた会えるの が楽しみだ。                                 (清野 泉) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167661535/bookswhodunit-22/ref=nosim ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02389855 ---------------------------------------------------------------------------- 『スペインの貴婦人』 "THE FIRST HORSEMAN"  ジョン・ケース/池田真紀子訳  ランダムハウス講談社/2003.11.25発行 500円(初版限定価格・税別)  ISBN: 427000004X  1918年冬、インフルエンザウィルス“スペインの貴婦人”は、世界中で3000万人の 命を奪った。それから80年後――ウィルスとともに永久凍土の下に眠っていた当時の 犠牲者の遺体が、何者かの手で掘り出された。いっぽう北朝鮮では、村人たちが次々 と不可解な病に冒された小村が焼きつくされる。国家機密の名のもとにあらゆる情報 が遮断されるなか、ジャーナリストのフランクとウィルス学者アニーが真相を追う。                                (片山奈緒美) ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02386101 =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=             ☆★「月刊児童文学翻訳」☆★  インタビュー、最新情報、レビューなど、児童文学翻訳に関する記事が満載の情報 誌。詳細&購読申し込みはこちらから(↓)。                   http://www.yamaneko.org/mgzn/index.htm 毎月15日配信(1月と8月は休刊)。申し込み手続きは前日までにおすませください。 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■編集後記■  年末年始をはさんだため、今月号は特別編成でお届けしました。来月からは通常に 戻り、特集には日本もしくは日本人が登場するミステリを取り上げる予定です。今年 も『海外ミステリ通信』をどうぞよろしくお願いします。         (ま) ********************************************************************  海外ミステリ通信 第29号 2004年1月号  発 行:フーダニット翻訳倶楽部  発行人:うさぎ堂 (フーダニット翻訳倶楽部 会長)  編集人:松本依子  企 画:板村英樹、かげやまみほ、片山奈緒美、唐澤涼子、清野 泉、      中西和美、花田美也子、山田亜樹子、山本さやか  協 力:出版翻訳ネットワーク 小野仙内  本メルマガへのご意見・ご感想:  whodmag@office-ono.com  http://www.litrans.jp/c-board/c-board.cgi?id=15  フーダニット翻訳倶楽部の連絡先: whodunit@mba.nifty.ne.jp  http://www.litrans.net/whodunit/  配信申し込み・解除/バックナンバー:  http://www.litrans.net/whodunit/mag/  ■無断複製・転載を固く禁じます。(C) 2004 Whodunit Honyaku Club ********************************************************************