■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■              月刊 海外ミステリ通信           第21号 2003年5月号(毎月15日配信) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★今月号の内容★ 〈特集〉        現代フランス・ミステリを味わう 〈インタビュー〉    平岡敦さん 〈注目の邦訳新刊〉   『雷鳴の夜』『フクロウは夜ふかしをする』 〈ミステリ雑学〉    フランスのミステリ賞 〈スタンダードな1冊〉 『モンマルトルのメグレ』 〈速報〉        MWA賞、アガサ賞受賞作品発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■特集 ―― 現代フランス・ミステリを味わう ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  このところ、フランス・ミステリが書店の棚をにぎわせている。名のみ高かった未 訳の実力派や、本国で人気の新進作家などが紹介され、多彩な魅力の一端が見えてき たといえるだろう。今月は編集部きってのフランス・ミステリ好きたちが腕によりを かけて、ひいきの作家と作品をご紹介する。エスプリや推理の妙、ユニークな登場人 物にサプライズ――フランスならではの味わいを、まずはご賞味あれ。   (陽) ---------------------------------------------------------------------------- ●ポール・アルテは異端なのか?〜フランス・ミステリの源流から現在まで  日本の本格ミステリ・ファンの間でひそかに話題になっていた、フランスの作家ポ ール・アルテの作品が、昨年ようやく日本語でも読めるようになった。ジョン・ディ クスン・カーを敬愛し〈フランスのカー〉と呼ばれるアルテは、1987年度のコニャッ ク・ミステリ大賞を受賞した『第四の扉』で実質的なデビューを果たした。以来現在 に至るまで、一貫して不可能犯罪と怪奇趣味をテーマにした、英米風本格ミステリを 書き続けている。サスペンス、フランス風ハードボイルドのロマン・ノワール、ある いは文学的要素の強いミステリ、というイメージが強かったフランス・ミステリ。そ んな中で『第四の扉』は異端に見える。果たしてそうなのだろうか。  舞台は1950年代のイギリス。しかも本格ミステリにふさわしい、オックスフォード 近郊にある村だ。第1部と第2部で怪奇趣味と密室、そして不可解な謎が出揃う。実 は『第四の扉』はユニークな構造を持った作品で、次の第3部、第4部が解決編にな っている。本格ミステリならここで終ってもいいのだが、『第四の扉』には第5部と いうオマケがついている。ここで物語全体に仕掛けられていたあっと驚くようなトリ ックが、読者に明らかにされる。第5部は、トリックや名探偵ツイスト博士が行う事 件の解決方法を含め、伝統的なフランス・ミステリのエッセンスが詰まっている。こ れが『第四の扉』の特徴であり、面白さである。またアルテ作品の特徴となっている 密室トリックも、英米風本格ミステリの専売特許ではなく、かつてフランスでも盛ん に使われていた時期があった。  英米ミステリの影響を断続的に受けながら、フランス・ミステリは独自の歴史をた どってきた。その原点は、ヴィドックとフィユトン(新聞連載大衆小説)だ。ヴィド ックは18世紀から19世紀にかけて実在した人物で、暗黒街の顔役から一転して警官と なり、退職後は私立探偵として独立する。彼の波乱万丈な人生を描いた『回想録』は 評判をよび、同時代のフランスの作家だけではなく、エドガー・アラン・ポーなど英 米の作家にも大きな影響を与えた。一方フィユトンは、19世紀半ばから20世紀初頭に かけて、フランスの庶民にもっとも人気のある娯楽だった。初期の頃は『回想録』風 の冒険小説が多かったが、「モルグ街の殺人事件」などポーの作品がフランス語に翻 訳された後は、その影響を受けた作家たちがトリックを使った探偵小説風の物語を書 き始める。そのトリックには密室も含まれ、様々な形の密室が編み出される。そこか ら、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』という密室ミステリの傑作も生まれた。  だがフランスでは密室などのトリックは小道具として使われるにとどまり、論理的 に解決されるような本格ミステリは発達しなかった。英訳されたフィユトンを読んだ 創生期の英米のミステリ作家たちが、密室を自分たちの作品中に取り入れて盛んに使 うようになり、カーへと繋がっていった。フランスで再び密室ミステリが書かれるよ うになったのは、第一次世界大戦後のことだ。その頃、英米から黄金時代の本格ミス テリが輸入され、フランスでも書かれるようになる。だが本格ミステリを書き続けた 作家はアンドレ・ステーマンぐらいで、密室ミステリを書いていたピエール・ボアロ ーも、トマ・ナルスジャックとコンビを組んだ後はサスペンスの方へ進んだ。  第二次世界大戦後にウィリアム・アイリッシュなどのサスペンスと、ハードボイル ドが輸入されるようになると、本格ミステリは廃れていった。サスペンスは、フラン ス伝統の心理小説と結びついたフランス風心理サスペンスに発展し、カトリーヌ・ア ルレーなどの作家が生まれる。一方ハードボイルドも、フランス風にアレンジされて ロマン・ノワールとなる。初期の頃は、アルベール・シモナンの『現金(げんなま) に手を出すな』のように、暗黒街を舞台に裏社会で生きる人間たちを描く作家が多か った。だが1970年代に入ると、既存のロマン・ノワールに飽き足らなくなった作家た ちが、社会性や文学性を加えた作品を書き始めた。1970年代から盛んになったこのタ イプのノワールは、現在ネオ・ポラールと呼ばれている。  現在も英米からのミステリの輸入は続いている。そんな中で新しい英米風ミステリ を書く作家たちが増えてきた。そんな中で現在もっとも人気のある作家は、『クリム ゾン・リバー』のジャン=クリストフ・グランジェと『死者を起こせ』のフレッド・ ヴァルガスだ。現在の英米ミステリはジャンルが多岐にわたっているが、その影響を 受けているフランスでも、従来のフランス・ミステリのイメージから抜け出す作家が 増えていくことだろう。作品によって様々なジャンルを書き分ける、ブリジット・オ ベールがその代表といえる。近い将来、「フランス風コージー・ミステリ」というコ ピーがついた作品を、読めるようになる可能性もある。  現在のフランス・ミステリの中では、密室とトリックにこだわるポール・アルテの 作品は主流とはいえない。だが創生期の英米ミステリ作家はフィユトンの影響を受け て、英米風の本格ミステリを完成させた。そして1世紀後の今、アルテはそんな本格 ミステリの影響を受けた作品を発表し続けている。『第四の扉』を読んだとき、フラ ンス風にアレンジされた本格ミステリだという印象を受けたが、実際には歴史にもま れ、現代風に洗練されアレンジされたフィユトンなのかもしれない。                               (かげやまみほ) 『第四の扉』ポール・アルテ/平岡敦訳/ハヤカワ・ミステリ ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150017166/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02174427 ---------------------------------------------------------------------------- ●フレッド・ヴァルガス〜詩的でユーモラスな謎の魅惑 「ピエール、庭になにかおかしなものがあるわ」  元オペラ歌手のソフィアは、窓の外を見て背筋が寒くなった。ある朝、突然、一本 のブナの木が庭に生えていたのだ。いったい誰が何のために植えたのだろう――?  新しい才能が台頭する現代フランス・ミステリ界でロングヒットを飛ばし続けてい る人気作家がいる。フレッド・ヴァルガスだ。個性的な登場人物とあたたかなユーモ ア、描写のやさしさがあふれた彼女の作品、なかでもミステリ批評家賞を受賞した 『死者を起こせ』は歴史学者探偵トリオが活躍する、なんとも愉しい本格ミステリだ。  ソフィアの隣家のボロ館に3人の貧乏歴史学者が引っ越してきた。先史時代専攻の マティアス、中世史専門のマルク、第一次大戦史のジュリアン。いずれも失業中、独 身、「クソ溜めにはまりこんだ」男たち。専門分野も性格もまるで違うのに、なぜか 奇妙な友情で結ばれている。家賃節約のためボロ館に住み着いた彼らのもとに、ある 日、ソフィアがやってきて、庭のブナの木を掘り返してほしいという。依頼を引き受 けた3人だが、木の根元からは何も出てこない。しかし、数日後、突然ソフィアは姿 を消した。彼女に何があったのか? マルクの元刑事のおじさんを巻き込んで、3人 は捜査に乗りだすのだが――。  ある朝、突然現れたブナの若木――なんて詩的でユーモラスな謎だろう、とわくわ くしながら読み進むと、すこぶる魅力的な登場人物に出逢って、すっかり作品世界に 引き込まれてしまう。そう、ヴァルガスの魅力は、個性的な謎と登場人物だ。貧乏学 者探偵トリオ+ダンディな元刑事。個性的でどこか子供のような男たち。この4人の 造型がいい、会話がいい。それぞれの心理描写が抜群に愉しくて、そして可笑しい。  たとえば、先史、中世、第一次大戦とそれぞれ専門分野にこだわりをもつ彼ら、ボ ロ館を各階ごとに年代順に住み分けて「時のはしご」と称したりしている。マティア スは服を着るのが苦手でいつも裸だし、マルクは黒い服と銀の指輪を愛用している。 「警戒警報、発令。退避せよ」みたいな口調で喋り続けるジュリアンは、ネクタイを 手放さず、西隣に住むソフィアを「西部戦線の女性」と呼んだりする。そして、マル クのおじさんの元刑事は彼らを聖書の3聖人にちなみ「マルコ、マタイ、ルカ」と勝 手に名づけて愉しんでいる。この4人のエキセントリックな行動やオタクすぎる会話 に読者は大笑いし、やがてすっかりその魅力にとりつかれてしまう。ヴァルガスの作 品の登場人物は、一度読んだら忘れられない魅力にあふれている。きっと虜になって しまうはずだ。  実はヴァルガスの本業は歴史学者(中世の動物の骨のスペシャリストらしい)。そ のためか、謎の設定もとても魅力的だ。庭に突然現れたブナの若木だとか、掘り起こ された土の地層から真相を探り当てるなんていう部分、うまいなあ、と感心してしま う。なんでもない木や石、土など小道具の使い方にも、詩的でユーモラスで奇妙で印 象的な味わいがある。ちょっとチェスタトンや坂口安吾の作品を思わせる。  ところで、フランス・ミステリは謎解きが物足りなくて、という方もご安心を。謎 解きの面白さがたっぷり味わえるのも、ヴァルガスの魅力だ。オーソドックスながら 意表をつくプロットの妙味、二転三転する犯人像に意外な真相。とりわけ、ダイイン グメッセージの見事なひねりには、目の肥えた英米ミステリファンも必ずや満足する はず。しっかりした英米風本格のプロットに、ユーモアのあたたかみと人間観察の理 解、描写のやさしさが光るヴァルガスの作品、フランス・ミステリが苦手という方に こそ、ぜひ手にとってその魅力をじっくり味わって頂きたい。  嬉しいことに、『死者を起こせ』には続編がある。犬の排泄物から見つかった人骨 や、フランス北西端の村で崖から転落した老婦人の死の謎の解決に奔走したり、連続 殺人事件の容疑をかけられたアコーディオン弾きのために尽力したり、と続編でも歴 史学者探偵トリオ、相変わらずの活躍、迷探偵ぶりを見せてくれるようだ。第2作、 3作ともにロングヒットを続け、各書評の評価も上々。結末の解決がクリスティのよ うだ、と評しているサイトもあって期待が高まる。一刻も早く彼らとの再会を果たし たいものだ。                                (山田亜樹子) 『死者を起こせ』フレッド・ヴァルガス/藤田真利子訳/創元推理文庫 ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488236022/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02184439 ---------------------------------------------------------------------------- ●ダニエル・ペナック〜〈職業的スケープゴート〉って、どんなもの? +--------スケープゴート【 scapegoat 】-------------------------------------+ :(聖書に見える「贖罪の山羊」の意) 民衆の不平や憎悪を他にそらすための身代: :り。社会統合や責任転嫁の政治技術で、多くは社会的弱者や政治的小集団が排除や: :抑圧の対象に選ばれる。――広辞苑より : +--------------------------------------------------------------------------+ 『散文売りの少女』という変わった題名に惹かれ、本を手に取った。440ページをい っきに読み終え、この本がシリーズ本の最新刊だったことを知り、慌てて第1作の 『人喰い鬼のお愉しみ』と続く『カービン銃の妖精』を読む。すっかりマロセーヌ家 の魅力のとりことなり4作目の『ムッシュー・マロセーヌ』が出るのを今や遅しと待 ち焦がれている身としては、このシリーズをご紹介できるのが嬉しくてしようがない。  マロセーヌ・シリーズの魅力とは? とにかく読むことの楽しさを味わわせてくれ る本なのだ。まず絶妙のユーモアがある。言葉遊び、登場人物の台詞のかけあい、一 人称で語られる主人公の内なる声が愉快だし、話の筋もとんでもないところへ転がっ ていってしまう。だいたい人物設定からして、荒唐無稽だ。主人公バンジャマン・マ ロセーヌの仕事は〈職業的スケープゴート〉。最初はデパートで、そこを解雇されて からは出版社で、苦情係として稀有の才能を発揮する。激怒して苦情を言い立てにく る客も、上司から責任を追及され涙を滴らせるバンジャマンを見ると、つい気の毒に なって態度を軟化させる。本人はこんな詐欺まがいの茶番劇の片棒をかつぐのは嫌な のだが、家庭の事情が辞職を許さない。バンジャマンは双肩に5人の(2作目以降で また増える)妹、弟を担っているからだ。そしてこの妹、弟が変わり者ぞろいで、問 題を起こしてばかり。くわえて雑誌の凄腕記者である恋人のジュリーは、好んで危険 の渦中に飛び込む。ペットの犬まで、災難をかぎとると発作を起こし昏倒してしまう 始末。家庭でもバンジャマンに安らぎは訪れない。一家が住むベルヴィルは、国際色 豊かな下町で、マロセーヌ家に出入りする連中も、さまざまな国籍をもつ個性的な面 々が揃っている。わたしのお気に入りは2作目から登場するチアン刑事。ホー・チ・ ミンの顔とジャン・ギャバンの声を持つヴェトナム系のフランス人で、老婆に変装し ての囮捜査を得意とするが、実は射撃の名手。後半、マロセーヌ家の末娘を託されて からは、捜査に向かうのも赤ん坊を抱えたまま、大立ち回りだって演じてくれる。こ んな個性的な脇役が次から次へと出てくるのだ。  もちろん事件はたっぷり用意されている。1作目ではバンジャマンの勤めるデパー トで連続爆弾事件が発生する。2作目では、老女ばかりを狙う連続殺人事件にくわえ、 麻薬密売を追うジュリーが瀕死の重傷を負い、そして警官が殺される。3作目では、 妹の結婚式当日、花婿の刑務所所長が惨殺され、さらに覆面ベストセラー作家の身代 わりに仕立てあげられたバンジャマンが、サイン会の会場で狙撃され、植物状態に陥 る。絶望したジュリーが姿を隠したあと、この身代わりを企んだ人間が次々と撃たれ ていく。どの作品も「こんなのあり?」という展開が続いたあげく、大団円を迎える のだが、最初は無関係に見えた事件に隠れたつながりが明かされ、謎には合理的な解 決がきちんと示され、上質のミステリとなっている。  スケープゴートには、一番弱い者が選ばれる。だが、えてして一番弱そうに見えた 者が実は一番頼りになったりするものだ。バンジャマンの強さはそのどうしようもな い弱さ、思いやりにあり、このシリーズがかなり強烈なブラックユーモアを含みなが らも気持ちのいい読後感を残すのも、ペナックの視線のやさしさゆえだろう。  最後に作者のダニエル・ペナックについて。1944年、モロッコ生まれ。軍人だった 父親の任地だったアフリカ、東南アジアで子供時代を過ごす。帰国後南フランスに住 み教職につくが、やがてパリのベルヴィルに移る。高校の国語教師をしながら、児童 向けの読物やコミック小説を書く。1985年に『人喰い鬼のお愉しみ』をガリマール書 店のセリ・ノワールから刊行、評判になりマロセーヌ・シリーズが誕生する。                                (小佐田愛子) 既刊のマロセーヌ・シリーズ 『人喰い鬼のお愉しみ』ダニエル・ペナック/中条省平訳/白水Uブックス ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560071365/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=01916787 『カービン銃の妖精』ダニエル・ペナック/平岡敦訳/白水社 ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4560046492/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=01548832 『散文売りの少女』ダニエル・ペナック/平岡敦訳/白水社 ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456004743X/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02137533 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■翻訳家インタビュー ―― 平岡敦さん ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今回はフランス・ミステリの翻訳を精力的に手がけている平岡敦さんに、現在のフ ランス・ミステリの傾向、今後紹介していきたい作家などについて幅広くうかがった。 +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ |《平岡敦さん》1955年生まれ。中央大学大学院修了。現在、中央大学講師を務め| |る。訳書は『殺人交叉点』(フレッド・カサック/創元推理文庫)、『クリムゾ| |ン・リバー』(ジャン=クリストフ・グランジェ/創元推理文庫)、『殺しの挽| |歌』(ジャン=パトリック・マンシェット/学習研究社)、『砕かれた四月』 | |(イスマイル・カダレ/白水社)ほか多数。                | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ ――昨年話題になったポール・アルテ『第四の扉』のような本格ミステリは、現在フ ランスでどれくらい読まれているのでしょうか。 「もともとフランスでは、ミステリも文学性の強いものが好まれ、ストーリーの構成 やトリックよりも、雰囲気作りや文体、テーマの社会性に重点が置かれる傾向があり ました。それは今でも変わらず、例えばフレッド・ヴァルガスなど、一般的な人気と いう点ではアルテよりもずっと上なんですが、これも文学的な雰囲気が漂っていると ころが好まれているのでしょう。ですから、アルテのように密室トリック一本でやっ ているがちがちの本格ミステリ作家というのはやはり変わり種で、マニアックなミス テリ・ファンから根強い支持を受けているという感じではないでしょうか」 ――アルテにしてもジャン=クリストフ・グランジェにしても、英米作家からの影響 が濃厚だと感じますが、フランスではそうした作家が台頭してきていますか。 「フランスでも英米の翻訳ミステリはとても読まれています。日本で人気のある英米 作家は、フランスでも人気があり、その点で状況はまったく同じです。ですから英米 の影響を受けた作家というのも出始めてはいるのですが、やはり評価が高いのは、ロ マン・ノワールの伝統を受け継ぐ、フランスらしいフランス作家のようです。その意 味では、グランジェの成功はむしろ異例のことだと言っていいでしょう。フランスで のグランジェ人気はすさまじく、今年の1月に出た新作『狼の帝国』は売れまくって います。ただこの作品も、フランスが現在置かれている社会状況をうまく生かした物 語作りをしています。ですからグランジェ人気の秘密は、英米風のストーリー・テリ ングとフランス・ミステリの伝統をうまくかみ合わせたところにあるのだと思います」 ――フランス・ミステリの情報を得るために、どのあたりにアンテナを張っていらっ しゃるのでしょうか。これまでに訳された本はご自分で見つけられたのですか。 「今はやはりインターネットですね。フランスのミステリ・ファン・サイトや、アマ ゾン・フランスが送ってくれる新刊ミステリ、人気ミステリの記事とか。訳した本は、 自分で見つけたものと編集者に教えてもらったものと半々くらいです。担当の編集者 さんは、みんなけっこうフランスものには詳しいので、注目していた作家が一致して 自然と話がまとまる場合もあります」 ――日本のミステリ・ファンにも受け入れられそうな未紹介のフランス人作家は、ま だまだいると思われますか。 「ぼくに言わせれば、フランス・ミステリは『宝の山』です。日本での紹介がしばら く途絶えていたせいで、すぐれた作家、作品がたくさん埋もれたままになっています。 ちょっと古いところでも、フレデリック・ダールなどもっと翻訳されていい作家だと 思います。ジャン・ヴォートラン、ディディエ・デナンクスなんかも、どんどん出し て欲しいです。ぼく自身も、新旧問わずいい作品を見つけて訳していきたいですね。 今予定しているのは、ティエリー・ジョンケという作家です。ネオ・ポラールの流れ を受けて80年代にデビューし、現在まで活躍中です。それから、数年前に急逝したジ ャン=クロード・イッゾという作家がいて、マルセイユを舞台にして暗い過去を背負 った主人公を切々と描いた作品を書いています。日本の読者にどれくらい受け入れら れるかはわかりませんが、訳したい作家のひとりです」 ――今後のご訳書の刊行予定を教えてください。 「6月にアルテの『死が招く』がポケミスから、7月にグランジェのデビュー作『コ ウノトリの飛翔』(仮題)が創元推理文庫から出ます。ミステリ以外では、中国出身 で、天安門事件を機にフランスに渡り、フランス語で小説を書き始めたシャン・サと いう女性作家の作品『碁を打つ少女』(仮題)を秋口に早川書房から出す予定です」                           (取材・構成/影谷 陽) ★このインタビューのロングバージョンが、Web版でご覧になれます★ http://www.litrans.net/whodunit/int/hira.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■注目の邦訳新刊レビュー ――『雷鳴の夜』『フクロウは夜ふかしをする』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『雷鳴の夜』 "THE HAUNTED MONASTERY"  ロバート・ファン・ヒューリック/和爾桃子訳  ハヤカワ・ミステリ/2003.04.15発行 900円(税別)  ISBN: 4150017298 《悪い輩は、わたしが成敗いたす。唐代の水戸黄門、狄仁傑参上》  米国人作家が唐代中国を描いたファンタジイ『鳥姫伝』が昨年話題になったが、ミ ステリでも、西洋人によって描かれ中国を舞台にした有名な作品がある。東洋学者で あり、外交官でもあったオランダ人ファン・ヒューリックが20世紀半ばに発表した、 狄(ディー)判事シリーズだ。  唐の時代、則天武后に宰相として仕えた実在の人物、狄仁傑(ディーレンチエ)の 若かりし日をモデルにしたこのシリーズは、政治的な陰謀のために策士が暗躍し、権 力そして金や女への欲望にとりつかれた悪人たちがはびこる混沌とした唐代で、弱き を助け、悪をくじく、清廉潔白な正義の味方、狄判事が活躍する痛快活劇ミステリだ。 これまで7作が翻訳されていて、県役人の働く政庁、皇室の離宮、娼婦宿などを舞台 にしてきたが、今回狄判事の活躍するのは、道教の山寺である。  旅の途中で嵐に遭った狄判事一行は、山中にあった道教の寺院静雲観に一夜の宿を 求める。案内された部屋から、向かいの建物の一室に、片腕の裸の女を抱いた兵士の 姿が見えた。何やら胸騒ぎがした判事は、助手とともにその部屋へ行ってみる。しか し部屋は物置で人気はなく、そして窓さえもなかった。判事が見たものは幻か、それ とも幽霊なのか。静雲観では、3人の若い娘が変死する事件が起きていた。宗教的な 奇蹟のなかで息を引きとったとされる前観主の謎めいた死、片腕の女役者が舞台に登 場する怪しい旅芸人一座、誰もいないはずの暗闇から聞こえる判事の名を囁く声。  いつもは何人もの助手を使って事件を調べる判事だが、今回はほとんど一人で捜査 を行う。地図もなく複雑で迷路のような構造になっている寺院での深夜の探索は困難 をきわめ、判事の捜査を妨害しようとする何者かに暗闇で襲われたりもして、捜査は はかどらない。寺院に到着後から深夜そして翌朝にかけての判事の捜査と推理で、奇 怪な事件の謎をとく、嵐の一夜の物語。  こんな不可思議な事件をたった一晩で解決してしまうなんて早すぎる、もっとじっ くり謎に取りくんで奇奇怪怪な世界を堪能させて欲しかったと、狄判事フリークには 少し物足りないかもしれない。でも、まだこのシリーズを読んだことがないという方 には、あっさりめの本書が入門編としておすすめである。                                 (清野 泉) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150017298/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02312280 ---------------------------------------------------------------------------- 『フクロウは夜ふかしをする』 "MURDER BY OWL LIGHT"  コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希訳  創元推理文庫/2003.03.28発行 920円(税別)  ISBN: 4488203043 《老後の一番の楽しみは、警察のお手伝い》 「……死ぬってことは人生におけるひとつの過程でしかない――しなければならない、 することのひとつってだけでね、食べることや、眠ることと同じ。あたしたちはそれ をする。好きなことじゃないけど、とにかくする。全員がする」(p.175)  いさぎよいこのセリフを口にしたのは、キャレドニア・ウィンゲイト、住まいは高 級老人ホーム〈海の上のカムデン〉(略して〈カムデン〉)、年齢は70歳とちょっと、 身につけた衣類も宝石もゴージャスで体も大きなおばあさん。その横にいるのは、人 形みたいにかわいらしい小さなおばあさん、アンジェラ・ベンボウ。住まいと年齢は 同上。このふたりの前には、迫力負けした様子のベンソン部長刑事が立っていた。  ふたりが住む〈カムデン〉で殺人事件が相次いでいた。事件に共通点はみつからず、 それぞれの事件が関連するものなのか、別々のものなのかわからない。犯人の目的も 〈カムデン〉がどう事件に関係しているのかも不明だ。進展しない捜査に業を煮やし たふたりのおばあさんは、お手伝いをしたくて、被害者のひとり〈カムデン〉の庭師 だったロロの自宅を家捜ししていたところを事件担当のベンソン部長刑事にみつかっ てしまったのだ。警察にしてみればふたりがしていることは、邪魔になるだけでなく、 犯人に目をつけてくれと言わんばかりの行為である。結局、ふたりは叱られ、諭され、 頼まれて〈カムデン〉へ戻った。しかし納得してはいない。とくにアンジェラは邪魔 者あつかいされて怒っていたし、後に、自分のお気に入りの人物が容疑者だと聞かさ れてさらに不満を募らせた。「あの人が殺人犯のわけがないじゃないの。やっぱり警 察になんか任せておけないんだわ」といっそう犯人捜しに精をだす。  キャレドニアとアンジェラを中心に、お年寄りたちが元気に活躍する「老人たちの 生活と推理」シリーズの3作目。ふたりは長い人生経験と、おしゃべりという形の情 報収集と、つきない好奇心を武器に事件解決に挑み、周囲に心配をかけながらも、意 外と的を射た推理できちんと犯人をみつけだす。ただ、あまりにも無防備に犯人を問 いつめたりするから見ていてハラハラしてしまう。――だって、ほら。故障したエレ ベータの中で犯人とふたりっきりなのにそんなこと言って、……大丈夫?                                 (唐澤涼子) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488203043/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=02302534 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■ミステリ雑学 ―― フランスのミステリ賞 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  フランスには日本や英米と同じく多くのミステリ賞があるが、一体どんな賞がある のかご存知だろうか? 今月の雑学では、フランスならではの歴史をもつ賞、新しい 賞、ユニークな賞などの中から、代表的な賞をとりあげてご紹介してみよう。 ●冒険小説大賞(Prix du Roman d'Aventures)  1930年、シャンゼリゼ社のマスク叢書(探偵小説専門のシリーズ)が創設した賞。 編集者が企画した作品の中で、審査員全員の支持を集めた作品に授与され、受賞作に は5万部の発行が保証される。フランスでもっとも歴史あるミステリ賞だ。 ●フランス推理小説大賞(Grand Prix de Litterature Policiere)  1948年、翻訳家で作家のモーリス=ベルナール・アンドレーブが創設。フランス国 内ミステリと海外作家の翻訳ミステリの2部門に贈られる賞で、1961年から海外の受 賞作は春に、国内の受賞作は秋に授与されている。過去の受賞作には、ミシェル・ル ブラン『殺人四重奏』('56)やフレッド・カサック『日曜日は埋葬しない』('58) など日本でも話題になった有名作品が多い。ちなみに今年3月に死去が伝えられたセ バスチアン・ジャプリゾの『シンデレラの罠』は63年に受賞している。56年から76年 まではほぼ全作品が邦訳されていたが、最近では97年のブリジット・オベール『森の 死神』、2001年のミシェル・クレスピ『首切り』ぐらいと淋しい状況だ。過去の受賞 作品の邦訳がすすんで、埋もれた傑作が読めることを期待したい。  さて、面白いのは外国人作家部門の受賞作。トマス・ハリス『羊たちの沈黙』、マ イクル・コナリー『わが心臓の痛み』など世界的なベストセラー作品が受賞している かと思えば、名前を聞いたこともないような作家の作品も並んでいたりする。フラン ス人のミステリ観や嗜好がうかがえてなかなか興味深い。 ●ミステリ批評家賞(Prix Mystere de la Critique)  1972年、リュック・ゲスランとロジェ・リーバンによって創設。年間の国内最優秀 長編には批評家賞、海外の最優秀長編には海外最優秀長編賞が授与される。著名な評 論家や作家が年間の国内外ベスト10を選び、最高点を獲得した作品が受賞する。推理 小説大賞と性格が似ているが、A・D・G、ジャン・ヴォートラン、ダニエル・ぺナ ック、トニーノ・ベナキスタと、こちらはセリ・ノワール系の作品の受賞が目立つよ うだ。特集でご紹介したダニエル・ペナックは『カービン銃の妖精』('88)で、フ レッド・ヴァルガスは『死者を起こせ』('96)等で2度受賞している。 ●コニャック・ミステリ大賞(Le prix du roman policier du festival du film policier du Cognac)-----------------〈http://www.festival.cognac.fr/〉  1983年、コニャック・ミステリ映画祭の一環としてマスク叢書の協賛のもと、新人 作家の発掘を目的に創設された。新人の優れた探偵小説に与えられ、受賞作はマスク 叢書から出版される。毎年4月に開催の映画祭(今年は4/10から4/13)で授与される など華やかな印象があり、歴史は浅いものの、最近はこの賞でデビューした有名作家 が増えてきた。フレッド・ヴァルガスや邦訳が待たれるアンドレア・H・ジャップ、 またポール・アルテも『第四の扉』で受賞している。ベルトラン・ピュアールは『夜 の音楽』(2001)で22歳の若さで受賞、次世代の期待の作家だ。  なお、この映画祭ではロマン・ノワール作品に与えられる賞もある。今年は海外作 家部門でイアン・ランキンが栄誉に輝いた。  最後に、フランスならではのユニークな賞を紹介しよう。1946年に創設されたパリ 警視庁賞は、ミステリとしての評価はもちろん、警察の活動を正確に描写している作 品に与えられる。なんと審査員は警察官と司法関係者というから面白い。さすが探偵 小説(ロマン・ポリシェ=警察小説)の起源を警察にもつお国柄ならではの賞だ。 ※各賞の原文表記において、アクサンは省略しています。 参考文献 『海外ミステリー事典』権田萬治監修/新潮選書                                (山田亜樹子) ★フランス推理小説大賞、ミステリ批評家賞、コニャック・ミステリ大賞の受賞作リ スト(1990年以降)を、Webサイトに掲載しています。 http://www.litrans.net/whodunit/awards/index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■スタンダードな1冊 ―― 運命の修繕人、メグレ警視 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今年はジョルジュ・シムノンの生誕100周年にあたる。1903年ベルギーに生まれ、 1989年に没したシムノンは、生涯にわたって長編や短編など1400を越える作品を書き、 世界各国に紹介された。作品のジャンルはミステリにとどまらないが、それでもフラ ンス・ミステリといえば、シムノンのメグレ警視を思いおこす人が多いのではなかろ うか。ここでは、『モンマルトルのメグレ』をご紹介しよう。この作品は、1946年か ら1954年、シムノンがアメリカに住んでいた期間に書かれた。充実した作品が多く書 かれた時期であり、この間にMWAの会長も務め、1966年にはMWA巨匠賞を受賞し た。パリ警視庁の内部や実際の捜査方法を正確に描写し、捜査に当たる刑事たちのか もし出す雰囲気を巧みに伝える手法は、後の欧米のミステリにも引きつがれている。  作品の舞台となるのは芸術家の街モンマルトル界隈で、ベルギーのリエージュで生 まれ育ち、20歳を目前にパリへ出てきたシムノンが最初にめざしたところである。作 中の季節は冬、窓に花はなく、カフェのテラスにも椅子は出ていない。シムノンが初 めてパリの北駅に降りたったのも、寒い12月のことだった。  モンマルトルのピガル街あたりは、キャバレーなどのたち並ぶ歓楽街になっている。 そのなかの〈ピクラッツ〉という店の踊り子アルレットは、早朝4時すぎに帰宅する その足で、店に伯爵夫人の殺害計画を相談する客がいた、と街警察に届けでた。司法 警察にまわされた彼女は9時過ぎに家へ帰されたが、2時間後、自宅で絞殺死体とな って発見された。店でストリップショーに出ていたアルレットの部屋は、思いのほか 几帳面に整えられ、育ちのよさをうかがわせていた。アルレットは本当は何者なのか。 殺害計画が本当なら、殺されるのは誰なのか。警察でアルレットが口にした、オスカ ルという名の男は何者なのか。死んだ若い女の痛々しい姿に心を打たれたメグレは、 事件に関わる人々の過去にその根を探っていく。 「運命の修繕人」とは、メグレ警視の生みの親シムノン自身の言葉である。警察官で ありながら、正義感をふりかざすのでなく、犯罪者の心を知りたいという強い好奇心 から事件を解決しようとするメグレの捜査法は、当時の英米の探偵たちのそれとはひ と味ちがう。娼婦や踊り子、出稼ぎ労働者、それに貧しさから罪を犯した者たちに同 情を寄せ、深く理解しながら解決を導きだしてゆくのだ。真実をおおいかくす謎は人 の心にあり、その謎がとけたときに見えてくるのは、人生のほろ苦さとでもいおうか。 そのさじ加減がシムノンは実にうまい。  この作品に限らず、シムノンの小説を読むと、スケッチのようなさりげなさで的確 に描かれたパリの街や人々のくらしが印象に残る。雨の歩道に映る赤いネオンや、磨 き上げられた台所の床のワックスのにおい。セーヌ河をゆく曳船の汽笛、日曜の朝の ばら色の太陽。パリへ行ったことがなくても、少し昔のパリがなつかしいような不思 議な心持ちにさせられる、名人の技である。 『モンマルトルのメグレ』ジョルジュ・シムノン/矢野浩三郎訳/河出文庫 "MAIGRET AU PICRATT'S" Georges Simenon                                 (水島和美) ◇アマゾン・ジャパンへ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309461964/bookswhodunit-22 ◇bk1へ http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-bkswhod00154&bibid=00030864 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ■速報 ―― MWA賞、アガサ賞受賞作発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●MWA賞受賞作発表  アメリカ探偵作家クラブ主催による第57回MWA賞の各部門受賞作が発表された。 主要4部門の受賞作は以下のとおり。 ▼最優秀長篇賞  "WINTER AND NIGHT"   S・J・ローザン  ニューヨークの探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ8作目。今回初めて その存在が明らかになるビルの姉には15歳になる息子がいる。彼はスリで警察に捕ま り助けを求めてくるが、ビルに保護される前に姿を消してしまう。行方を追ううちに、 ビルは甥の住むニュージャージーの小さな町での邪悪な事件に巻き込まれていく。 ▼最優秀処女長篇賞  "THE BLUE EDGE OF MIDNIGHT"   Jonathon King  本誌先月号(2003年4月号)のレビューを参照。 ▼最優秀ペイパーバック賞  "OUT OF SIGHT"   T・J・マグレガー  野心的な科学者ジョージとエクアドル人シャーマンのルイスは人間や物体を透明に する技術を生み出したが、最初の人体実験の失敗が大騒動へと発展していく。なにや ら怪しげな発明だがキャラクターには説得力がある、ハラハラドキドキの追跡劇。 ▼最優秀短篇賞  "Mexican Gatsby"   Raymond Steiber(EQMM/March)  その他の部門については以下のサイトで。  http://www.mysterywriters.org/index.htm ●アガサ賞受賞作発表  マリス・ドメスティック主催によるアガサ賞のほうも、受賞作が発表された。主要 部門の結果は以下のとおり。 ▼最優秀長篇賞  "YOU'VE GOT MURDER"   ドナ・アンドリューズ  メグ・ラングスロー・シリーズが好評のアンドリューズが新たに生み出した探偵は、 優れた調査プログラムである人工知能人格トゥーリング・ホッパー。自分のプログラ マーの謎の失踪に犯罪のにおいを感じた彼女は調査を始めるが……。 ▼最優秀処女長篇賞  "IN THE BLEAK MIDWINTER"   Julia Spencer-Fleming  ニューヨーク北部地方の小さな町で、教会の玄関に赤ん坊が置き去りにされ、若い 母親が惨殺されるという事件が起こった。この教会の司祭は女性として初めて任命さ れてやってきたクレア。もと空軍ヘリのパイロットという経歴をもつ彼女は、強い責 任感と勇気をもって事件に立ち向かう。著者自身も空軍基地で生まれ育ち、現在はメ イン州で築180年の農家に住んでいるという。 ▼最優秀短篇賞  "The Dog That Didn't Bark"   マーガレット・マロン(EQMM/December)  "Too Many Cooks"        マーシャ・タリー(Much Ado About Murder)  その他の部門については以下のサイトで。  http://www.malicedomestic.org/2002agatharelease.htm                                (花田美也子) ============================================================================  MWA賞最優秀処女長編賞受賞作予想結果とプレゼント当選者発表 ============================================================================  応募総数は4通で、内訳は "OPEN AND SHUT" に3票、『ジェットスター緊急飛行』 に1票でした。ご応募くださったみなさま、誠にありがとうございました。  受賞作は速報でご報告のとおり "THE BLUE EDGE OF MIDNIGHT" に決まったため、 残念ながら正解者はゼロ。プレゼント当選者はなしという結果となりました。したが って、プレゼントは次回に持ち越しとさせていただきます。次回の詳細は未定ですが、 より多くのかたに参加していただけるものにしたいと考えております。どうぞご期待 ください。  また、メルマガにお寄せいただいたご意見・ご希望に、特集〈ミステリと街シリー ズ〉英国編のリクエストがありました。只今ちょうど「ジョージアン・ロンドン」の 企画があがっています。新刊翻訳書の紹介を増やして欲しいというご要望にもお応え できるよう検討中です。これからも楽しんでいただける紙面づくりを目指していきま すので、よろしくおねがいします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■編集後記■  英米のものとは一味も二味も違うフランス・ミステリ。いつもと違う世界を味わっ てみたいかたは、ぜひお試し下さい。来月号の特集は冒険小説です。「冒険小説って 男の人の読み物じゃないの?」という女性にもお薦めの作品をセレクトします。お楽 しみに。                               (ま) ********************************************************************  海外ミステリ通信 第21号 2003年5月号  発 行:フーダニット翻訳倶楽部  発行人:うさぎ堂 (フーダニット翻訳倶楽部 会長)  編集人:松本依子  企 画:板村英樹、大越博子、影谷 陽、かげやまみほ、片山奈緒美、      唐澤涼子、小佐田愛子、清野 泉、中西和美、花田美也子、      水島和美、三角和代、山田亜樹子、山本さやか  協 力:出版翻訳ネットワーク      小野仙内  本メルマガへのご意見・ご感想:  whodmag@office-ono.com  http://www.litrans.net/whodunit/bbs/wdlight01/light.cgi  フーダニット翻訳倶楽部の連絡先: whodunit@mba.nifty.ne.jp  http://www.litrans.net/whodunit/  配信申し込み・解除/バックナンバー:  http://www.litrans.net/whodunit/mag/  ■無断複製・転載を固く禁じます。(C) 2003 Whodunit Honyaku Club ********************************************************************