■翻訳家インタビュー ―― 上野元美さん
 今月は、はじめての訳書『テロリズム』がふたたび脚光を浴びている、上野元美さ んにお話をうかがいます。
《上野元美さん》1960年生まれ。三重県出身。静岡女子大学文学部卒。1999年に『テロリズム』(ブルース・ホフマン著/原書房)で翻訳家デビュー。その他の訳書に『細菌戦争の世紀』(トム・マンゴールド&ジェフ・ゴールドバーグ著/原書房)がある。二階堂黎人・森英俊共編によるアンソロジー『密室殺人コレクション』(原書房)では、ロバート・アーサーの短篇「ガラスの橋」を翻訳。


『テロリズム』
ブルース・ホフマン
©原書房
表紙の画像は、出版社の
許可を得て掲載しています。
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『密室殺人コレクション』
二階堂黎人・森英俊共編
©原書房
表紙の画像は、出版社の
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【Q】翻訳の道に進まれたきっかけをお聞かせください。
【A】もともと本が好きで、少女時代から外国文学に親しんでいましたが、最初から
翻訳家だけをめざしていたわけではありません。ひとりでできる仕事をしたいと思っ
ていて、その選択肢のひとつが翻訳でした。ある翻訳家のかたの下訳をしたりして経
験を積むうちに、原書房から『テロリズム』の仕事をいただくことができました。苦
労はいろいろしたのでしょうが、記憶に残っている苦労は英文に苦しめられたことく
らい。それはいまも変わりませんが。

【Q】『テロリズム』、『細菌戦争の世紀』と、硬い感じのノンフィクションを続け
て訳されていますが、こういったテーマに関心がおありだったのですか?
【A】軍事ものの下訳が多かった関係で、たまたまいただいた仕事なんですよ。自分
では単なる偶然と思っていましたが、ご質問をいただいてあらためて考えてみると、
学生時代から国際関係には興味があり、この方面の本をずいぶん読んでいました。冒
険ものに親しんでいたこともあり、楽しくやれた仕事です。

【Q】偶然とはいえ、2冊ともタイムリーな内容ですね。
【A】はじめての訳書『テロリズム』は、テロリズムの歴史をていねいにまとめたも
ので、いまなぜ宗教テロなのかという疑問に答えてくれます。また、『細菌戦争の世
紀』は、生物兵器に関する知識だけでなく、それを発展させ使用してきた国々の内情
などにも踏み込んだ内容になっています。いま大問題になっている炭疽菌についても、
くわしいことがわかります。見えない、聞こえないテロについて、警鐘を鳴らす書で
もあります。

【Q】アンソロジー『密室殺人コレクション』で、本格ミステリを訳されていますが。
【A】ある仕事を通じて知り合った編集者と、本格ミステリのことで話がはずんだの
がきっかけで、あの中の一編を訳すことになりました。

【Q】ミステリもそうとうお好きなんですね。
【A】ええ。海外のミステリ作家でいま好きなのは、ドロシー・L・セイヤーズ、エ
ドマンド・クリスピン、それにピーター・ラヴゼイです。ミステリの中でも、謎解き
以外のどうでもいいことが、あれやこれやと書かれているものが好きなんですよ。こ
の3人の小説はみな、そのどうでもいいドタバタの部分がおもしろくて。ほかには、
リンゼイ・デイヴィスやロバート・ファン・フーリックも好きです。時代や場所など
の舞台設定が気に入っています。

【Q】今後はどのような本を訳していきたいですか?
【A】いちばんやりたい分野は、冒険もの、軍事もの、国際情勢に関するものですが、
フィクション、ノンフィクションという枠にとらわれず、興味のあるジャンルには積
極的にチャレンジしていくつもりです。例をあげるなら、自然科学、スポーツ、歴史
関係などでしょうか。もちろんミステリや一般の小説にも興味がありますよ。英米版
の平家物語といった感じのスケールの大きな小説なんか、いいですね。とにかく、い
まはなんでもやってみたいんです。
                           
(取材・構成 山本さやか)
(2001年11月号)
 
■主な訳書紹介■

『最新鋭原潜シーウルフ奪還(上・下)』パトリック・ロビンソン著(二見書房)
『聖戦(ジハード)ネットワーク』ピーター・バーゲン著(小学館)
『細菌戦争の世紀』トム・マンゴールド(原書房)
『テロリズム―正義という名の邪悪な殺戮』ブルース・ホフマン(原書房)
『ビジネスに生かすゴルフ戦術論―偉大なチャンピオンたちに学ぶ』
  アンドリュー・ウッド著(主婦の友社)
『ワンダーズ・オブ・ナンバーズ・数の不思議―天才数学者グーゴル博士に挑む"超難問数学"』
  クリフォード・A・ピックオーバー著(主婦の友社)

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