■インタビュー ―― 宮内もと子さん
 今月はハヤカワ文庫より昨年12月に『成り上がりの掟』を出された宮内もと子さん にお話をうかがいます。
《宮内もと子さん》 1961年山口県生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒。初めての訳書は、『リユニオンズ――死者との再会』(レイモンド・ムーディ、ポール・ペリー/同朋舎出版)。その他の訳書に『パリに眠れ』(シャーロット・カーター/ミステリアス・プレス)、『シャドウ・ファイル/潜む』(ケイ・フーパー/ハヤカワ文庫NV)など。


『成り上がりの掟』
スティーヴ・モンロー
©早川書房
表紙の画像は、出版社の
許可を得て掲載しています。
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『シャドウ・ファイル/潜む』
ケイ・フーパー
©早川書房
表紙の画像は、出版社の
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――翻訳に携わるようになったきっかけをお聞かせください。
「大学卒業後、特許事務所に数年勤めて退職したあと、語学学校や翻訳学校で日本語
教授法や翻訳など、“ことば”に関わる分野の勉強をいくつか並行して進めました。
どれも刺激的でおもしろかったし、相互に参考になるところがありましたが、いちば
ん性に合っていると感じたのが翻訳で、気がついたらそれにのめりこんでいました。
近所に買い物に出かけたときに、しっくりこない訳語のことをあれこれ考えはじめて、
気がついたら寄るはずの店の前を通り過ぎていた、ということがありましたね」

――翻訳修業時代とデビューのきっかけはどのようなものでしたか?
「翻訳学校で学んでいたときに、数人の先生のもとで下訳をさせていただきました。
作品のタイプも違えば、先生方の加筆のしかたもさまざまで、そうした下訳経験がい
ちばんの勉強になったような気がします。調べもののしかたなども実践で身につけて
いきました。インターネットが使えるいまは夢のようですが、当時は飛び込みで銃砲
店に話を聞きにいったり、参考にした本の著者に手紙を書いたりと、できることを必
死でやっていました。上級クラスで勉強しつつ、実務系の小さな翻訳の仕事などを学
校の紹介でやっているうちに、担当の先生に認めていただき、出版社への紹介を受け
たのがデビューのきっかけです」

――ミステリで、お好きな作家や分野がありますか?
「いまいちばん好きなのはキャロル・オコンネル。独特な人物造形と幻想的な作風に
ひかれます。フィクション全般についていえば、スプラッタではなく人の心理の描き
方でしみじみ怖いと思わせるような物語が好きです。亡くなった作家ですが、シャー
リイ・ジャクスンなど。ところでガイ・バートという英国の若手作家の『体験のあと』
という作品が集英社から出ていまして、それが映画化にあたって、アーティストハウ
スから『穴』というタイトルで今春刊行されることになりました。これは私が訳のお
手伝いをさせていだいたのですが、不穏な空気を充満させておいて最後にあっといわ
せる手口と、深読みしたくなる凝った作りで読ませる作品です。今後はチャンスがあ
れば、このようなホラー系の話や奇妙な味の話をやってみたいと思っています」

――昨年末に出た『成り上がりの掟』はボクシング界やら賭け屋やらが舞台でした。
用語やスラングでのご苦労があったのではないかと思いますが。
「ボクシングは書籍資料や用語集のサイトが結構あるのでまだいいのですが、ギャン
ブル、というか違法賭博の方は大変でした。ハンデのつけ方や電話での賭けの受け付
けなどは、システムがわからないと話にならないけれど、その手の“まじめな”解説
書があるとは思えない……日本でいえば野球賭博が近いだろうとあたりをつけ、それ
を題材にした小説をあさって、同様のシステムを描いたものを見つけたときには小躍
りしました。安部譲二さんのエッセイなどもありがたく参考にさせてもらい、その筋
の(?)語彙収集に努めました」

――次の訳書のご予定は?
「前作は男たちの友情と闘いを描いた明るいクライムノベルでしたが、今度はうって
かわって、娘を癌で亡くした女性の手記になります("Hannah's Gift" アーティスト
ハウスから秋ごろ刊行予定)。ただのお涙頂戴の話ではなく、ユーモアや明るさを交
えながら、つらい体験から得たことを飾らない文章で綴ったチャーミングな本です」

―― "Hannah's  Gift" と『穴』、本屋さんで手にするのを楽しみにしています。
(取材・構成 小佐田愛子)
(2002年2月号)
 
■主な訳書紹介■

『リユニオンズ――死者との再会』レイモンド・ムーディ著(同朋社出版)
『成り上がりの掟』スティーヴ・モンロー著(ハヤカワ文庫NV)
『シャドウ・ファイル/潜む』ケイ・フーパー著(ハヤカワ文庫NV)

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