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内容紹介とコメント・感想
・フーダニット翻訳倶楽部の会員投票により決定された、2000年の新刊翻訳書ベスト10作品です。(投票規定はこちらです)
・「内容紹介」は、すべてフーダニット翻訳倶楽部のメンバーが執筆したものです。一部、日刊メールマガジン「海外読物案内」で配信されたものを転載しています。 ・「投票者コメント」は、投票時のコメントを掲載したものです。 ・「投票者以外の感想」は、投票結果発表後に該当作を読んだ会員の感想です。 |
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闇よ、我が手を取りたまえ |
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パトリック・ケンジーの父親は、勇敢な消防士としてボストンで地元の尊敬を集めた人物だったが、家では妻や息子を殴りつける暴君だった。近所には同じようにすさんだ家庭が多く、家に居場所のない子供たちは、お互いの中に救いを求めて固い絆で結ばれていた。成長したパトリックは、その頃からの親友のひとり、アンジーと探偵事務所を経営している。最近調査を依頼してきた女性は、息子の命をおびやかすような手紙をアイリッシュ・マフィアから受け取っていた。依頼人の息子を監視しているうちに市内で残虐な殺人事件が起こり、二十年前に起こった犯罪へとさかのぼった捜査は、やがて思いもよらない事実を掘り返すことになった。
犯罪捜査の原動力となるのは、犯行そのものや犯人に対する憎悪と、被害者の無念を晴らしたいという気持ちだろう。しかし、悪を滅ぼそうとする崇高な行為は、凄惨な犯行現場や凶悪な犯人像を直視せざるをえないという、まっとうな人間の神経をすり減らすような現実を伴っている。捜査の過程でこの世の闇を覗き込んでしまった人間には、その後どんな生きかたが残されているのだろうか。 『スコッチに涙を託して』に続いてレヘインの描く、現代のハード・ボイルド。 (ビー) (日刊「海外読物案内」2000年10月23日 第7号)
● テーマの重さよりも、現代の私立探偵像の典型として。
■ 投票者以外の感想 ■ ● 面白かったです。面白かったので、前後作がさらに気になってます。
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夜が終わる場所 |
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タマラという名の少女が失踪した。現場には、少女が乗っていた自転車が残されていた。マックスの脳裏に、七年前の事件がよみがえる。マックスの親友で、同僚の警察官であるバンクの娘ジェイミーが、大事にしていたソフトボールのバットを残したまま失踪し、事件は今も未解決のままだった。そしてタマラの自転車から、ジェイミーのバットについていたのと同じ指紋が採取された。二つの事件は何らかの形でつながっているようだ。捜査が進まない中、マックスの娘ナオミが戻ってこないと妻のペギーから連絡が入る。ナオミとタマラは以前からの知り合いだった。
物語は主人公ともいえるバンクの娘が失踪した七年前の事件と、現在起こっている事件が交互に語られている。またその合い間に、語り手のマックスとバンクの生い立ちから現在にいたるまでの様子が、丹念に描かれている。読者は最初いぶかしがるかもしれないが、これが大切な伏線になっていることは言うまでもない。事件の真相が明らかになった時、納得がいくことだろう。だが、事件は終っても解決されない謎が残る。そして、この謎は永久にとけることはない。 (うさぎ堂) ■ 投票者コメント ■ ● 過去と現在が交錯する構成は苦手、でも物語に流れている雰囲気がよかった。
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わが心臓の痛み |
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心筋症を患ってFBI捜査官を退職したテリー・マッケイレブは、最近やっと心臓移植手術を受けることができた。人口比一パーセント以下というめずらしい血液型だったために、ドナーが現れるまで二年待ったあげくの手術だった。退院した彼のもとに、コンビニで妹を殺した犯人を探してほしいと言って女性が現れる。その女性から、殺された妹が自分の心臓のドナーだったことを知らされたマッケイレブは、術後の体調をおして調査を開始した。無差別強盗殺人と思われた犯行の影に、徐々に犯人の動機が見え始め、やがて驚くべき真相が明らかになる。
自分が生きるためには、誰かが死ななければならない。移植を待つものにとって、この現実はいわれのない罪悪感の原因になるのかもしれない。亡くなったの人の死を無駄にしないという、ドナーの立場からしか考えたことがなかったわたしは、臓器移植のもうひとつの側面に気づかされた。事件を追う探偵役と被害者が、臓器の受容者と提供者という設定も他に類を見ないが、動機や真犯人が解明していく過程は意外性とスピード感にあふれ、本書の大きな魅力となっている。 一九九九年のアンソニー賞、マカヴィティ賞、フランス推理小説大賞の三賞に輝いた文句なしの傑作。 (ビー) (日刊「海外読物案内」2000年10月30日 第12号)
● 現実にはあり得ない動機と手段だが、小説世界では可。
■ 投票者以外の感想 ■ ● とにかく読ませる作品だった。ありふれた強盗殺人と思われた事件がほんの小さな手がかりから180度様相を変え、ストーリーが一気に加速し始める。そして驚愕の事実。果たして前半の展開からこの結末を予想できた読者はいるんだろうか、そう思えるくらい意外性に富んでいる。また、ストーリー運びのみごとさだけではなく、主人公マッケイレブの心の揺れ動くさま、依頼人のグラシエラとのやりとりのシーンなども丁寧で読ませる。 ● 本筋は重い内容だし、事件の真相もかなり衝撃的なものでした。しかし本筋とは関係ない部分では楽しかったし、読後感もさわやかだったのが救い。でも一番はらはらしたのは、主人公の体調でした。また主人公の隣人が、日本の推理小説を読んでいたのにはびっくりしました。 |
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氷の闇を越えて |
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ミシガン州の小さな町に暮らす元警官のアレックスは、誘われるままに探偵の仕事を始めた。ある夜、友人に呼び出されて駆けつけたモーテルで、一面の血と男の死体を発見する。友人たちの頼みで身辺警護をするアレックスの元に不審な電話がかかり、続けて第二の殺人がおきる。やがて浮かび上がった犯人は、かつてアレックス自身に瀕死の重傷を負わせ、同僚の警官を射殺した男だった。
悲劇を経験した探偵が登場する作品はこれまでにも多々あったが、本書の主人公アレックスの痛手はとりわけ生々しい。けっして癒えることのない傷を身体に負っているせいだ。都会を離れて少しずつ忘れかけていた血の記憶が、突然の殺人事件によってよみがえる。事件の犯人だけでなく、おのれの心のうちにひそむ恐怖という闇とも対峙せざるを得ない。アレックスはやがて、その双方との闘いを強いられることになる。 大きな謎を中心に据えたストーリー展開で、最後の最後まで緊張が途切れない。加えて、舞台となっているスペリオル湖周辺の描写が印象的だ。狩猟区の林、その中に建つキャビン、深い湖に浮かぶボート。どの風景からも冬間近の厳しい寒気がこちらに伝わってくる。デビュー作とは思えぬ風格をたたえた、シリーズ第一作。 (DRACO) (日刊「海外読物案内」2000年9月14日 第2号)
● リー・チャイルドとともに今年最高の収穫です。長さの関係でこっちが上。
■ 投票者以外の感想 ■ ● 「わたしの心臓のそばには銃弾がある」読み初めていきなりのこの一文で、一気に物語に引き込まれてしまった! 過去の事件でトラウマを抱えた主人公が、ある事件をきっかけに恐怖心と戦い事件を解決しようとする姿は、こちらにも胸が痛くなるような苦しみが伝わってきます。そしてラストのどんでんがえし。これには意表をつかれましたが、あとにさわやかな読後感が漂うのは、正統派探偵小説を読んだ満足感から? ぜひ次作も読んでみたいと思わせる逸品。 |
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悪魔の涙 |
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1999年の大晦日。朝のラッシュアワーで混雑するワシントンの地下鉄駅で、男が銃を乱射した。現場は混乱をきわめ、多数の死傷者が出た。ほどなくして、市長のもとに脅迫状が届く。市が2000万ドル払わなければ、午後4時から4時間おきに〈ディガー〉による無差別殺人が繰り返されるとある。FBIは、元捜査官で文書検査の第一人者であるパーカー・キンケイドに、唯一の手がかり、手書きの脅迫状の分析を依頼する。
(日刊「海外読物案内」2000年11月6日 第17号)
● 一ヶ所の瑕瑾を除けば、絶対に『コフィン・ダンサー』より上。
■ 投票者以外の感想 ■ ● 二転三転していく事件に目が離せなくて、一気に読んでしまった作品。また筆跡鑑定という職業にも興味を持ちました。主人公の養育権問題も、うまく本筋にからみあって面白かったです。 |
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キリング・フロアー |
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最近のミステリは幼児期のトラウマや悩みごとなど、弱さが一種の売り物になっている人間ばかりが登場する、そんな思いを抱いているむきに朗報である。故郷は軍隊だという元憲兵のリーチャーにそうした弱さはいっさいない。
(日刊「海外読物案内」2000年9月13日 第1号)
● 苦手な上・下二巻本だけれど、それを意識させないほど物語にひきこまれてしまいました。
■ 投票者以外の感想 ■ ● アンソニー賞最優秀処女長編賞と、帯に書かれている。著者は英国人で、アメリカを舞台に書きたかったということだと聞いている。あれやこれやでたいへん興味を持っていたのですが、なぜか今日まで読んでいませんでした。そして読み始めて数時間、上下巻を一気に読んでしまいました。
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子供の眼 |
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テリは夫リッチーとの結婚生活を終わりにしようとしていた。が、まともに働くことをきらい、弁護士事務所で働く妻の稼ぎをあてにするリッチーは、テリから金をせびりとろうと、なりふりかまわず、あらゆる手段を講じてきた。攻撃の矛先はテリ自身だけでなく、彼女の上司でもあり新しい恋人でもあるクリス・パジェット、さらにはクリスの息子のカーロにまで向けられる。そんな緊迫した状況の中、リッチーが死んだ。銃をくわえ、自ら引き金を引いたように見えるが、検察はこれを他殺と断定。容疑者としてクリスを逮捕、起訴する。弁護側は自殺の線で押し通そうとするが、陪審員の心情は日々揺れ動き、そして……
(日刊「海外読物案内」2000年11月20日 第24号)
● リーガル・サスペンスの食わず嫌い王だったわたしを生まれ変わらせたパタースン様、どうもありがとう。この本を読んでるあいだ、毎晩寝不足で目が赤くなっちゃった。次作がすでに楽しみ。
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バッド・チリ |
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おなじみ、ストレートの白人ハップとゲイの黒人レナードの過激コンビによる、シリーズ3作目が登場した。遠方での仕事を終え、自宅のあるテキサス州ラボードの町に帰ってきたハップ。だが、一息つくまもなく、狂犬病のリスに噛まれて入院することに。いっぽう、恋人ラウルに出て行かれて落ち込んでいるレナードは、ラウルの新しい相手を殺害した容疑者として、警察に追われるはめに。そこでハップは病院を抜け出し、親友の容疑を晴らそうと奔走する。しだいに明らかになる、背筋も凍るような真相とは……。
(日刊「海外読物案内」2000年11月13日 第21号)
● この作家、かなりの職人。下品さの奥の純情がいい。
■ 投票者以外の感想 ■ ● はじめて手に取ったこのシリーズ、ストレートに楽しめた。主人公のハップとレナードは(ちょっと口が悪いけど)固い信頼で結ばれていて、理不尽な事件に真っ向から挑んでいく姿勢(多少荒っぽいけれど)に胸がすく。それにいちずな恋愛もある(相手が少々パワフルだけど)。なんとも個性的な面々の活躍がテキサスの広大な自然と熱気の中で繰り広げられる。眉をしかめて考え込んで読む本ばかりがミステリじゃない。こんな痛快なのもいいじゃないか。でも読了後は言葉遣いに要注意かも? |
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Mr.クイン |
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おれの名はクイン。職業は「犯罪プランナー」だ。裏組織のボスから依頼されて犯罪の計画を立てる。人殺しも誘拐も、べつに憎くてやっているわけじゃない、みんなビジネスの一環だ。ただし、おれ自身は決して表に出たりしない。自分の手は汚さずに計画を完璧に成功させる。使うのは頭だけ、だから尻尾もつかまれない。
■ 投票者コメント ■ ● 小気味よいくらいの悪人ぶりに、自分の人間性を疑うことも。二作目が勝負か。
■ 投票者以外の感想 ■ ● とにかくどこまでも淡々と犯罪のプランニングをするクイン。殺しも愛情や憎しみがドロドロからみあうとエグいものになっていきますが、ここまでそういった感情がなくビジネスライクにやられると、単なる普通の仕事の結果にすぎず、殺しであることすら気にならなくなってしまいます。死体を処理する手段が思いがけず牧歌的だったのがけっこう新鮮でした。 ● 読み始めたときは、なんとなくルブランのバーネット探偵社みたいなのかな、と軽く考えていたんですが、はるかに極悪でした。ジム・バーネットは悪人でもヒーローじみた格好いいところがあって大好きだったのですが(だってルパンだもん)、クインは別格でした。ビジネスライクに謀殺してるかと思えば、プライベートではやりたい放題。自分のことが一番好きな根っからの悪魔っ子。身勝手な言い分にはほとほと呆れました。
● クインという男の2手先、3手先を読む緻密さ、細心さといったら、まともな職業についていたらさぞかし成功するだろうにと思ってしまう。そう、詐欺も殺人もクインにとってはローリスク・ハイリターンをモットーとするビジネスの一環。こんなやつ、現実にいたら絶対関わり合いになりたくないぞと思いつつ、達者な口車に読んでるこちらが乗せられてしまう。危ない、危ない。だけどこれほど頭の切れる男が女関係だけはだらしなく、かみさんに脳天をぶん殴られて愚痴っているのがやたらおかしい。 |
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生への帰還 |
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ある夏の暑い日、ワシントンDCでピザ・ショップが襲撃された。犯人たちは従業員4人を射殺し、駆けつけたパトロール警官を撃ち、さらには車で逃走するさい、5歳の少年を撥ねて殺してしまう。いっぽう、犯人のひとりも警官との銃撃戦の中で命を落とす。
■ 投票者コメント ■ ● うーん、なぜかペレケーノスの評価はいつも低いっすね>「このミス」(怒)ワシントン・サーガの完結編と謳われていますが、独立した作品としてじゅうぶん楽しめます。
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