
子どもの本だより No.38 2002.1.22

ご挨拶が大変遅れてしまいましたが、新年おめでとうございます。年の始めは干支にちなんだ絵本二冊から出発したいと思います。今年もたくさんの本との出会いが皆様に幸福を運んできてくれることを願っています。それから、感想を寄せて下さる方々、本当にありがとうございます。とても嬉しく勇気づけられています。
今年もどうぞよろしくお願い致します。(吉田 真澄)
はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし
ジョン・バーニンガム さく じんぐうてるお やく 童話館(1200円)
バーニンガムによる初期の作品が好きです。
深く濃厚な筆をもって描かれる風格ある建てものや動物たちと、見とれてしまう程効果的にあしらわれる、よはくの美しさ。そして、その完成された世界に大胆不敵に加わってゆく、あざやかな色また色。この作家がもちいる朱色や黄、そしてだいだい色がかった紅色は、もう先から私をとりこにしてはなさないのです。
そんな彼の傑出した色彩感覚(と私は感じています)は、この時代にあいついで発表されたどの作品でも(『ボルカ』『バラライカねずみのトラブロフ』『ずどんといっぱつ』)いかん無く発揮されています。もちろん、この『ハンバート』でだって……。たとえば、それは黄金(こがね)色に輝く月や飼葉の艶やかな黄。市長さんが身にまとうオレンジと活気にみちた街を彩るサーモンピンク。深い緑を背景にグラスにそそがれたワインの赤もよく映えています。
さて、そのストーリーはというと、くず鉄あつめのファーキンさんの荷車を引く馬のハンバートが、ひょんなことからロンドン市長さんを運ぶ憧れの馬車を引くことになるという、いたってシンプルなものです。私は、気高くも実直に生きるファーキンさんその人に心惹かれます。朴訥に生きる人特有のやさしさがハンバートを包みこみ、そして、この本全体の余音ともなって胸に響いてきたからです。
どんな流行にも動じることのない、素朴であるが故の麗しさは、この時代に描かれたバーニンガムの作品群を、温かな光をもって照らし出します。“頼もしい”ということは、私にとってある種特別なものなのですが(なぜなら自分がうわついているからです)、それがこれらの絵本を末長く愛していきたい理由なのかもしれません。
カウボーイのスモールさん
ロイス・レンスキー ぶん・え わたなべしげお やく 福音館書店(800円)
長い間、彼は私のあこがれの人でした。
誠実で前向き。常に冷静沈着で仕事熱心な彼――スモールさんがこの本の主人公です。彼が主人公を務めるシリーズは全部で8作。(現在手に入らないものもあります。)パイロット、機関士、農場主と職業は変わっても、一貫しているのが彼の勤勉さで、それはウォージントン描くところの「くまさん」シリーズ(『せきたんやのくまさん』など)にも匹敵するほどです。さらには、誇りをもって働くことの美しさと、そこから養われる適度な自信が、物語に華を添えています。この絵本でも、愛馬カクタスの世話に始まり、牛の群れを駆り集め、子牛に縄をかけては焼印をつけるスモールさんの真摯な姿が実に生き生きと語られているのです。あばれ馬からふり落とされてしたたかに腰を打った時だって「――とはいうものの(落馬したとはいうものの)スモールさんはりっぱなカウボーイです! カクタスがまっています」と見事な立ち直りを披露してくれます。
むろん絵はだんぜん魅力的です。ブルーナの描くうさこちゃんと同じくらい正確で、フランソワーズのまりーちゃんに引けをとらない程に愛敬に満ち満ちています。
この小さなヒーローにぴったりと自分を重ね合わせて、その健全なる世界を疑いもなく堪能できるのは、幼い子どもたちの特権といえるでしょう。私たち大人はせめてそれをエネルギー源とすることで、時に窮屈にも感じてしまう現実の世界を逞しく生きていきたいと思うのです。
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