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子どもの本だより No.15 1999.9.12

ラッパを吹く男

  残暑厳しい中にもさわやかな風が感じられる季節になりました。今回はファンタジーの絵本と読み物を三冊ご紹介します。ひととき、現実を忘れて全く別の世界を楽しんでみてはいかがでしょう。


どんぐりぼうやのぼうけん
 エルサ・ベスコフ 作・絵 石井登志子 訳 童話館出版(本体1171円+税)

 ある秋の日、どんぐりぼうやのオッケとピレリルは、かしわの葉っぱに乗って飛行機ごっこをしていました。ところが、強い風に遠くまで運ばれて、落ちたところは洗たく屋の小人のおばあさんたちのところでした。洗たく物は滅茶苦茶になり、オッケとピレリルは洗たく物を届ける仕事をさせられることになってしまいます。一方、家では、お母さんが二人を心配して、りすのスバンス氏に探してもらうように頼むのですが――。きのこのおじいさん、トロル、マロニエの子どもたちなど森の仲間たちが次々と登場して、秋の森を旅するような楽しい絵本です。


陸にあがった人魚のはなし
 ランダル・ジャレル 作 モーリス・センダック 絵 出口保夫 訳 評論社 (本体1600円+税)

 ひとりぼっちで丸太小屋に住む狩人は、ある冬の日の夕暮れ、海辺の岩かげで人魚と出会います。”動物と同じくらい気長に”狩人は少しずつ少しずつ人魚との距離を縮め、ついには一緒に暮らすようになるのでした――。美しい詩のような言葉が紡ぎ出す狩人と人魚の生活は次々に家族が増えるごとに、特別でない自然なものになってゆきます。それにしても、物語全体に漂うこの不思議さをどう表現したらよいでしょうか?人魚も狩人も動物たちも、いっさい排除し、海辺の穏やかな風景だけを淡々と、けれどため息がもれる程美しく描いたセンダックの絵も、幻想的な魅力を一層ひきたてています。


竜の子ラッキーと音楽師
ローズマリ・サトクリフ 文 エマ・チチェスター・クラーク 絵 猪熊葉子 訳 岩波書店 (本体1748円+税)

 よく晴れた春のある日、一人の旅の音楽師が海辺を歩いていて、バラ色の斑点のあるクリーム色の卵をみつけました。その卵はちょうどかえるところでした。音楽師が子守歌を聞かせてやると、やがて卵の中から竜の子が出てきました。――こんな風に竜の子ラッキーと音楽師は出会いました。そして、ラッキーは音楽師を親のように慕い、音楽師も心からラッキーを愛し、二人はとても幸せに三年間を過ごしました。ところが四年目のある秋の日、ラッキーが旅の見せ物師に盗まれてしまいます。音楽師は深い悲しみを胸に国中を歩き回り、そしてとうとう王様の宮殿の中でおりに入れられたラッキーをみつけたのでした――。心から愛するものがいることが、どれだけ人間にとって大切であるかということが、私たち読む者の胸に印象深く残る美しい絵本です。



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