Wuthering Heights Emily Bronte Penguin Classics ISBN 0-14-043418-6
「わたしはヒースクリフなの。あの人はいつもわたしの魂の中にいる、いつだって!」
激しい気性の令嬢キャサリンと孤児ヒースクリフの恋。
嵐が丘屋敷に拾われてきた孤児ヒースクリフは、屋敷の令嬢キャサリンときょうだいのように育つ。だが、キャサリンは、スラッシュ・クロス邸の令息エドガーとの結婚を決める。逆上したヒースクリフは失踪。数年後、復讐の鬼と化して、キャサリンの前に表れたヒースクリフは、エドガーの妹イザベルと駆け落ちする。ヒースクリフと夫エドガーとの間で錯乱したキャサリンは、女の子を出産したその日に亡くなる。そして、ヒースクリフの復讐の手は、次の世代へとのばされる。
スラッシュ・クロス邸に下宿したロックウッドを相手に家政婦ネリーが語るこの物語は、恋愛小説の原点とされている。だが、この作品は、本当の意味で恋愛小説と呼べるのだろうか。
ヒースクリフとキャサリンとの間にあるのは、恋愛というより強烈な一体感である。確かに、一体感も恋愛の要素の一つではある。だけど、それがすべてではない。ときめきや不安やちょっとした心のはずみといった、恋愛における大事な要素がほとんど感じられない。
一体感、それは深い喜びをもたらすのと同時に、身体を引き裂かれるような痛みをも感じさせる。そして、それは人間の本質にも深くかかわっている。それゆえ、魂の片割れを求める叫びが、今も人の心を打つのかもしれない。
この作品を読んでいて一番印象的だったのは、錯乱したキャサリンが、ベッドの上で羽根枕を引きちぎり、雪のように羽根が舞う中で、嵐が丘の自分の部屋を恋しがる場面だった。
この作品がさまざまな毀誉褒貶を受けながらも、長く愛されてきた理由の一つに、キャサリンの存在がある。常識的な考えに染まることなく、心の赴くままに奔放に愛し、行動するキャサリン。ある意味で、永遠の子どもともいえるキャサリンに惹かれるのはなぜだろうか。
キャサリンを通して、自分の内に永遠の子ども――インナー・チャイルドとも言えるだろう――が存在することに気づく。そして、この作品を読むことによって、みずからの内なる永遠の子どもがいきいきと羽ばたくのを感じる。
ヒースクリフは、憎しみという感情に操られた人形だったのかもしれない。人形つかいから解き放たれたヒースクリフの魂は、ヒースの野で、再びキャサリンと、子どものころのように思うがままに駆け回っているのではないか。
復讐劇は陰湿で残酷である。だが、読後は、浄化されたように感じが残る。カタルシスというのだろうか。
嵐が丘をあとにする若い二人の後ろ姿に、将来への希望や変わりない愛情といったものを託したいような、そんな気がする。
CL-0128 如 月
日時:05/05 2003 20:27:58
mail:
Copyright (c) 1999-2004 Cliff PB Club All rights reserved.