OUT OF THE SILENT PLANET by C. S. Lewis
Scribner Paperback Fiction $6.95 p160
( ISBN: 0684823802 )
(『沈黙の惑星を離れて』奇想天外社 絶版,
『マラカンドラ』ちくま文庫)
[あらすじ]
ケンブリッジの言語学者Ransomは、休暇でイギリスの田舎を徒歩旅行
中、たまたま1軒の家に立ち寄る。この家にいた2人の男、Westonと
Devineの策略で、宇宙船に乗せられ、惑星マラカンドラに連れて行かれ
る。(実は、Devineはパブリックスクール時代の、Ransomの宿敵だっ
た。)Ransomは、2人が自分をマラカンドラ人への捧げ物にするつもり
らしいと気付き、到着後、隙を見て逃げ出す。
Ransomはアシカのような知的生命体(hross族)に出遭い、しばらくそ
の村で生活してマラカンドラ語を学ぶ。やがてRansomは、惑星の守護精
霊ともいうべき存在Oyarsaから、聖地Meldilornへと召喚される。時を同
じくして、hross族の友人Hyoiが、Ransomを追って来たWestonとDevineに
殺害されるという事件が起こる。Ransomは単身、聖地へと旅立つ。
Ransomは、マラカンドラ人たちとの交流や、Oyarsaとの対話を通し
て、少しずつ、マラカンドラのこと、そして地球のことを知るようにな
る。マラカンドラには、3種類の知的生命体がいるが、どの種族が優位
ということはなく、平和に暮している。hross族はアシカに似ていて、漁
と採集の生活を送り、詩を作るのが得意。sorn族は、地球人から見ると
巨人で、抽象的な概念を扱うのを好む知的な種族。pfifltriggi族はカエ
ルに似ていて、鉱山を掘り、物を作ることを生業としている。そして、
マラカンドラは実は火星だった。地球はここでは、サルカンドラ(沈黙
の惑星)と呼ばれていた…。
[感想]
ナルニアのC・S・ルイスの書いたSFである。SFと言っていいと
思う。マラカンドラに行く方法も、「たんすの向うはマラカンドラ」と
いうのではなく、宇宙船で数十日の旅をしているし、巻頭にH.G.
ウェルズへのオマージュとも言える作者の言葉があるので。しかも、あ
えて分類するなら「哲学SF」(プラス「言語学SF」)である。
惑星マラカンドラの風景が詩的に美しいが、ここでルイスが書きた
かったのはそれだけではなく、外から見た地球人なのだろうと思う。
Ransomが、異星の3種類の知的生命体と交流したり、惑星の守護精霊
Oyarsaと対話したりする中で、人間(地球人)とはどんな存在かを見つ
める、というのがテーマなのだ。
例えばRansomが、マラカンドラに来ることになった経緯を、「悪い人
間に連れてこられた」と説明しようとする場面がある。ところが、マラ
カンドラ語には「悪い」という概念がなく、説明できない。仕方なく、
英語のbent(曲った)に当たるマラカンドラ語を用いる。それは、hross
族の作った詩が上手くないとき、pfifltriggi族の作品がよくないときに
使う言葉だ。(理想の姿、あるべき姿からはずれている、という意味
か?)だが、マラカンドラ人たちは、Oyarsaがいるのにhnau(知的生命体
を表すマラカンドラ語)がbentになることなどあり得ないと言う。このあ
たり、ルイスの善悪に対する考え方がよく表れていると思う。
私が大ウケしてしまったのは、Ransomがhross族のHyoiと初めて出遭う
場面(いわゆるファーストコンタクト)。ひょっとしたらこの生物に殺
されるかもしれない、と思いながらも、その生物の発する声を聞いたと
たんに、それが言語であるということを直感する。脳裏には、次々と
『マラカンドラ語入門』『コンサイス・マーシャン−イングリッシュ・
ディクショナリー』…という言葉が浮ぶ。学者さんには、生存本能と知
的探求心の強さは同じ程度らしい。
この作品は、ルイスの惑星3部作の第1巻で、第2巻Perelandraでは
金星が、第3巻That Hideous Strengthでは地球が舞台となる。地球が
「沈黙の惑星」になった理由は、第3巻で語られるらしい。
マルタの猫(CL-0080)
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