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00778/00779 ぺんぎん 【読了報告】"GIANT BONES"
(12) 99/01/23 20:10

以前ご紹介した"THE INKEEPER'S SONG"と同じ世界を舞台とした短篇集で
す。とはいえ、前作を読まなくてもほとんど問題ありません。

Peter S. Beagle "GIANT BONES" (ROC, 1997/ 269p)

あらすじ
【The Last Song of Sirit Byar】大女で力持ちのあたしは、吟遊詩人シ
リット・バヤールのお供になって愉快に旅してきた。貧しい村の酔いどれど
もから女王様までが、あのじいさんの歌に聴きほれたものさ。そして六年目
にあの町へむかった。詩人が愛するひとを残していった町へ…
【The Magician of Karakosk】つつましく暮らしたいと願う男がいた。とこ
ろがその男、世界一の魔術師だったのが不幸の始まりだ。あの『黒の城』の
女王がとうとう噂を聞きつけて…
【The Tragical Historie of the Jiril's Players】今じゃ旅回りをしてい
るが、わしらはジリル公のお抱え一座として豪勢にやっていたもんだ。とこ
ろが聞いてくれ。家督を狙う四人の息子が、それぞれ何やら企んで芝居の台
詞を変えろと言ってきた。そして一人娘は駆け落ちの手伝いをしろというか
ら、さあ大変だ…
【Lal and Soukyan】若き頃冒険者として名を馳せ、いまはひっそりと余生
を送るラルのもとに、かつての仲間ソウキャンが訪ねてくる。彼はある幼子
の心を傷つけたことを悔いており、一緒に詫びに行こうというのだ。年老い
た二人は珍獣チャーファにまたがり、遠い町を目指す。ところが道すがら、
数人の男に追われる奴隷の少年を救ったことから、死者との闘いに巻き込ま
れるはめに…
【Choushi-wai's Story】さあお聞き。この語り部チャウシウェイが『タイ
=シャームと歌う魚』の話をしよう。――昔むかし、大きな国を治める王様
がいた。王様は結婚したくなかったが、世継ぎがないのでお妃さがしをする
ことになった。「賢い妃を」との仰せを受けて大臣が連れて来た娘とは…
【Giant Bones】坊や、父さんは仕事に行くんだから、いいかげんに寝てお
くれ。何を泣いてるんだ、お前がちびだって? 大丈夫、うちはのっぽの家
系だからね。わけを話してやろう。ご先祖のセルジムは、あるとき山に入
り、巨人につかまった。いや、こわくない。巨人は考えぶかくて優しい連中
だった。そして、まもなく滅びようとしていたんだ…

感想
「続編というものは書かないことにしている」本書の序の冒頭で作者ビーグ
ルはいう。ところが、前作"Inkeeper's Song"の世界は、作品の完結後も心
に生きつづけ、幾つもの物語を生み出した。そうして編まれたのが本書だと
いう。この短篇集は巧みなストーリーテラーとしてのビーグルの側面を鮮や
かに見せてくれる。
 "Lal and Soukyan"を除く五編がいわゆる枠物語になっているのは興味深
い。"The Last Song of Sirit Byar"は女主人公の口述記録、"The Magician
of Karakosk"は行きずりの旅人同士が夜のつれづれに語る物語、"The
Tragical Historie…"は劇団の座長が酒場で同業者にあかす身の上話、とい
うように。この形式は二つのことを思い出させる。一つは、井辻朱美氏の評
論『夢の仕掛け』の「物語は伝聞として語られることでかえってリアリティ
を持つ」という内容の一節。もう一つは、かつて不思議な物語を聞くことは
老若男女すべての楽しみであったということだ。とにかく、本書の魅力は物
語自体ばかりか、その生き生きとした語り口にもある。先に書いたあらすじ
紹介では、無理を承知でその味わいを再現しようと試みた。
 六編中特に気に入ったものをあげると、まず"Choushi-wai's Story"。さ
すがラルの弟子である本職の語り部によるものだからか流麗で、おとぎ話ら
しい楽しさがある。そして最後の"Giant Bones"は、なんともいえない深い
読後感を残す。読んだ者はここでもまた、ビーグルならではの独特の雰囲気
に包まれて本を閉じることになる。


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