"Hyperion" (John Keats)
解説
04148/04157 emu 【英詩】'Hyperion' by Keats
(12) 00/08/12 18:12 コメント数:1
'Hyperion' from "John Keats Selected Poetry" 1996 Oxford University
Press ISBN0-19-283275-1 P. 23
読書会で進行中の"Hyperion" by Dan Simmonsの下敷きとなったKeatsの詩、
'Hyperion'の全文要約です。
まず、
『新装版 ギリシャ神話』呉茂一 1994新潮社ISBN4-10-307103-6
から、この詩の背景となっている部分をまとめます。
・・・・・ギリシャ神話・・・・・・・
無限の世界、カオスの誕生に続きガイア(大地)が生まれ、ガイアは「天
空」ウーラノスを産み落とすと、彼と交わりティーターンの一族(巨人族、タ
イタン)を産んだ(Hyperion:ヒュペリーオーン、クロノスはこの一族)。し
かしウーラノスはガイアが産んだ百腕の怪物、ヘカトンケイレスを忌み嫌い、
大地の奥のタルタロスへと押し込んでしまう。これを恨んだガイアは息子クロ
ノスにウーラノスを倒すよう命じ、父を成敗したクロノスは天地の支配権を手
にする。
クロノスは姉妹のレイアーを娶るが、自分もまた子供に統治権を奪われるだ
ろうという予言を恐れ、産まれる子を次々と飲み込んでしまう。レイアーはこ
れを恨み、ゼウスを産むとすぐにニンフたちの手にゆだね、クロノスには産着
にくるだ石をかわりに渡し飲み込ませる。成人したゼウスはまずクロノスに吐
剤を飲ませ、兄弟神たちを全員吐き出させると共にティーターン族との戦いに
挑んだ。勝利をおさめたゼウスは、今度はティーターン族を大地の奥タルタロ
スに押し籠める。
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Keatsの物語はここからはじまります。Oxford版の注釈によると、この詩で描
かれている世界はほとんどがKeatsの想像力のたまもだそうです。また、王座を
失墜したSaturn(クロノス)はイタリアに逃げ落ち、そこでGolden Ageと呼ば
れる理想郷を築いた、と通常はされるそうですが、KeatsはGolden Ageをティー
ターン族の敗北の前の世としています。
あとヒュペリーオーンについてですが、『新装版 ギリシャ神話』によると
この名は「高きを行く者」という意味で、彼は息子とされる太陽神ヘーリオス
としばしば同一視される、とあり、実際Keatsの詩では彼は「太陽神」です。ま
たアポローンは正確には「光明神」で「太陽神」とは別の神なのだそうです
が、前五世紀以降の文学者によって同一視されたそうでこの詩でも彼は「太陽
神」ヒュペリーオーンのあとを継ぐことになるようです。
前節が長くなりましたが、ここからが本題、'Hyperion'全文の要約です。
・・・・・要約・・・・・
Book 1
ゼウスとの戦いに敗れたSaturn(クロノス)は暗い谷間でひとり、死んだよ
うに眠っていた。そこへThea(Heperionの妹であり妻)があらわれ、Saturnに
慰めの言葉をかけようとするがそれがいかに無意味かを悟り、'Saturn, sleep on!
while at thy feet I weep.'とSaturnの足元で嘆く。ようやくSaturnはう
つろな目を開き、天界の支配力を失ったおのが身を嘆じるが、自分にはまだ宇
宙を創世し直す力があるのではないか、と立ち上がる。その言葉に希望を見い
だしたTheaは、兄弟のTitan族を力づけてくれるよう、彼らのもとへSaturnを案
内する。
一方、天界を追われたTitan族のなかでただ一人Hyperionだけは以前とかわら
ず太陽の運行を司っていた。その日も何事もなく夜をむかえるが、日に日に忍
び寄る禍々しい気配に、"Saturn is fallen, am I too to tall?" と、おのれ
の身を憂う。だが自分の力にはJove(Jupitor, Zeus)も畏れおののくはずで、い
ずれはSaturnを王座に戻すこともできようと意気込む。しかしその夜、それま
では日輪が駆け抜けたあとも闇夜のなか輝くような軌道を描いていた「天空の
道」が光を失う。悄然とするHyperionに父Coelus(ウラノス)は天空から言葉
をかけ、神としての力を失った自分にかわり地上へ降り、Saturnを見つけだす
よう命じる。Hyperionは天界での役目を父Coelusにゆだね、地上を目指し闇の
中へと身を投じた。
Book2
追放されたTitan族の者の中には磔にされた者や、あてもなく地上をさまよう
者もあったが、多くは光すら入り込まない岩穴に集まっていた。そこへ訪れた
Saturnは打ちひしがれた面々に、Titan族こそがはじめに産まれいでた神々
であ り、このように地上に身をうずくめる存在であるはずがないと言う。だが
Oceanus(大洋神)は、よりすぐれたZeus兄弟にTitan族が負けたのは自然の理
であり、"'tis the eternal law that first in beauty should be first in
might:"と説く。彼は若きNeptune(Poseidon)の姿を見たときその善美な姿に海
の主神の座をわたす覚悟をした、と告げる。
みなが静まり返る中、Oceanusの娘Clymeneは父の話を継ぐようにおずおずと
話しだす。彼女がひとり海辺にたたずみ哀調を帯びた調べを口ずさんでいる
と、風にのって美しい黄金の調べがきこえてきたのだと彼女は語った。そして
"Apollo! young Apollo!"と呼ぶ声もきいたと言う。
Enceladus(エンケラドス:Titan族の中でもっとも力が強く凶暴)は巨大な
体を起こし、こんな腑抜けた話をきいているのは雷で打たれるより苦痛だと大
声をあげ、平穏な時代は終わり激しい戦いの時代が始まったのだとTitan族を鼓
舞する。そこへ神々しい光に包まれたHyperionがあらわれる。みながその光か
ら顔を隠す中、Enceladus, Iapetus, Creus, Phorcus(順にイアペトス、クレ
イオス、ポルキュス)の四人が立ち上がりHyperionのもとへ歩みでるとSaturn
の名を大呼しはじめる。Hyperionもそれに応えSaturnの名を唱え、Titan族全員
による連呼がはじまった。
Book3
その頃デロス島では星明かりのもと、若きApolloが頬を涙でぬらしながら、
さざめく波音に耳を傾けていた。するとどこからともなくMnemosyne(ムネーモ
シュネー)が姿をあらわす。MnemosyneはApolloが幼いころからずっと密かに見
守っていたこと、彼のために自分の兄弟であるTitan族を見限ったことを伝える
と、Apolloの涙の理由をたずねる。するとApolloはこの島以外の世界があるの
ではないか、と女神に問いつめる。Mnemosyneは答えないが、彼女の無言の表情
から神々の全歴史がApolloの頭に流れ込み、Apolloは自分が神と化しつつある
ことを知る。
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自分なりに読みこんだつもりですが、手持ちのOxford版が簡単な注釈しか
ついてないものなので細かいところで読み違えているかもしれません。この詩
にお詳しい方、訳本をお持ちの方、コメントをいただければ幸いです。
・・・・・感想・・・・・
詩で23ページはさすがに長いし、文体もかなり難しいものでした。読むのに
四苦八苦しましたが、この詩の壮大なテーマと宇宙観、それとDan Simmonsが創
作意欲をかきたてられた理由は多少なりとも理解できたように思います。
・emu・
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